MACKIE. ProFX12v3+ レビュー:USB-CオーディオI/O機能も備えたコンパクトな12ch多機能ミキサー

MACKIE. ProFX12v3+ レビュー:USB-CオーディオI/O機能も備えたコンパクトな12ch多機能ミキサー

 MACKIE.からアナログミキサーProFXシリーズの最新モデルが登場(4〜5月ごろに発売予定)。今回は、ProFX6v3+/ProFX10v3+/ProFX12v3+の3種類の中から最もチャンネル数の多いProFX12v3+をレビューしていこう。

ゲーム配信に向いたループバックモードなど3タイプの録音モードを搭載

 サイズは幅が330mm、高さが102mm、奥行きが376mm、重さは3.6kgとコンパクトだ。次にインプットをチェック。ch1/2は、マイク/ライン入力(XLR/TRSフォーンコンボ)でHi-Zボタンも備えるので、ギターなどの楽器の直接入力が可能。ch3〜9/10にはマイク入力(XLR)があり、加えてch5/6〜9/10は、ライン入力L/R(TRSフォーン)に対応する。ch11/12はステレオミニ端子。Bluetoothでの接続も可能で、BGMなどが簡単に受けられる仕様だ。そのほか、100Hzのローカットスイッチ、48Vファンタム電源(全マイク入力に一括供給)、パン、ルーティングスイッチ、PFLスイッチも搭載。

 アウトプットは、メインアウトにはXLR端子とTRSフォーン端子を装備。そのほか、モニターセンド、エフェクトセンド、ヘッドホン出力、フットスイッチジャック(以上TRSフォーン)、コントロールルーム・アウト、サブアウト(以上フォーン)が備わっている。

 アウトプット端子の下部には、12種類のプリセットエフェクトを備えた内蔵のエフェクター、GigFX+がレイアウト。詳しくは後述するが、パネル下部のPRESS TO SELECTボタンとリターンボタンのシンプルな操作子で、細かい音作りが簡単に行える。

 また、ProFX12v3+はMac/WindowsにUSB-Cで接続することで、最高24ビット/192kHz対応のオーディオインターフェースとしても使用できる。オーディオインターフェースとして使用する際の録音モードは3タイプを用意。エフェクトを含むミックスをコンピューターに送出でき、ライブの録音に適したスタンダードモード。コンピューターからの音源をミックスでき、ゲーム配信などに向いたループバックモード。エフェクトをバイパスしたch1〜2の録音ができ、いわゆる普通のレコーディングスタイルと言えるインターフェースモード。以上3タイプを用途に応じて使い分けることができる。

リア・パネル。左からACインレット、電源スイッチ、コンピューターと接続してオーディオI/O機能を使用するためのUSB-C端子が並ぶ

リア・パネル。左からACインレット、電源スイッチ、コンピューターと接続してオーディオI/O機能を使用するためのUSB-C端子が並ぶ

 続いて、同梱のライセンスをチェック。トラック数に制限のないDAWソフトTRACKTION Waveform OEMに加えて、16種類のエフェクトプラグインが任意のDAWで使用できるDAW ESSENTIALS COLLECTIONが用意されている。チェックに用いたのはデモ機なのでダウンロードはしていないものの、ホームページで確認してみたところ、プラグインの見た目がモダンで、EQも直感的に使用できそう。リバーブ/ディレイもパラメーターが大きく見えていて使用感が良さそうである。

 ここまで主な機能面を見てきたが、アップデートされてはいるものの、今までのMACKIE.のミキサーを踏襲している機能性なのが良い。MACKIE.のミキサーを使ったことがある人ならば箱から出して、すぐにでも使いこなせるだろう。MACKIE.製品の必要な機能だけが備わっているシンプルなところが好きだし、それこそがさまざまな場面で使用されている理由だと感じる。使用感が変わらないということは、MACKIE.製品が故障したとしても、現代のモノを購入すれば、“あのときのあの機能が欲しかったのに……”ということが起こりにくいので、ユーザーも安心できるだろう。

音量を上げてもクリアな低域 繊細な音作りが可能なGigFX+

 実際に使用してみて最初に良いと思ったのは、フェーダーのぬるっとした重めの感触。丁寧なフェードアウトをする場合や、ミキシングの際にフェーダーの操作感と音の印象が連動しているのを感じることができて良い。ミュートスイッチもしっかり“押した感”があって好印象。入出力端子は、フロントパネルにまとまっているため、卓の向こう側をのぞき込んで接続する必要がない。差し間違えもしにくいし、間違えていたとしてもすぐに気づくことができる。

 まず、マイクを入力して音質をチェックした。スタンドに立てるタイプの手持ちのPA用パワードスピーカーでテスト。3バンドEQを使用しなくともスッキリしていて、クリアなサウンド。ローカットも固定ではあるが、100Hzと程良い値だ。ch1〜4に搭載されたワンノブコンプも使いやすい。EQのQ幅も狭すぎずちょうど良い。自分の感覚ではあるが、PAでは音量を上げていくと、エッジが効いて低域もブーミーになっていくので、こういったスッキリとした音質は、非常に扱いやすい音だと感じる。マイクの場合、レンジの広いコンデンサーよりも、程良い周波数特性のダイナミックの方が扱いやすくて選ばれる場面が多いのと同じような感覚である。

 内蔵のエフェクター、GigFX+は使いやすいシンプルなパラメーターとプリセットが備わっている。このサイズのコンパクトミキサーで、エフェクトのパラメーターがここまで細かく調整可能なのはうれしいポイント。特にハイカット/ローパスフィルター/ハイパスフィルターの3項目を備えたリバーブは、この3項目を調整するだけで大きく印象を変えられるので、現場で役立ちそう。ちなみにエフェクトは、ユーザープリセットの保存が可能だ。

 続いて、USB-CでAPPLE MacBook Airに接続。ドライバーを入れることもなく、24ビット/192kHz、2イン/4アウトのオーディオインターフェースとして簡単に使用することができた。PA用の機能が備わっているため、レコーディングのモニター環境作りもしやすい。ブレンドノブを使用すれば、コンピューターで再生した音と、ch1〜11/12のインプットのブレンド具合を調整して、ヘッドホン/コントロールルーム・アウトへ送ることができる。

 ProFX12v3+は、分かりやすいシンプルな機能と扱いやすい音質/操作性の両方が備わっている。バンドの練習や、デモ作りも素早くできるし、音楽以外にもポッドキャスト配信の録音などにも対応していて、便利な家電製品より簡単な操作でどんな人でもサクッと使いやすいミキサーである。

 

岡直人
【Profile】フリーランスとして活動するサウンドエンジニア。君島大空、Tempalay、中村佳穂、KID FRESINOなどのライブPAを手掛けるほか、舞台の音響や舞台音楽の制作もこなす。

 

 

 

MACKIE. ProFX12v3+

オープンプライス

(市場予想価格:62,480円前後)

MACKIE. ProFX12v3+

SPECIFICATIONS
▪入力端子:モノラル(XLR/TRSフォーンコンボ×2、XLR×5、TRSフォーン×2)、ステレオ(TRSフォーン×3、ステレオミニ)、インサート端子(フォーン×4) ▪出力端子:メインアウト(XLR、TRSフォーン)、サブアウト(フォーン×2)、モニターセンド(TRSフォーン)、エフェクトセンド(TRSフォーン)、コントロールルーム・アウト×2(フォーン)、ヘッドホンアウト(TRSフォーン) ▪外形寸法:330(W)×102(H)×376(D)mm ▪重量:3.6kg

製品情報

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