MACKIE.は、アメリカを拠点とする1988年創業の音響機器メーカー。コンパクト・ミキサーをはじめとするレコーディング機器や、コンサートで使用する業務用音響機器で高いシェアとブランド力を誇っています。今回レビューするCR3.5BTは、音楽制作時のニアフィールド・モニターとしての用途に加え、普段のリスニングやホーム・パーティ、ちょっとしたDJイベントなどに便利なBluetooth接続にも対応するアクティブ・スピーカーです。本稿では、試用してみた際の操作性や使用感、音質などをお伝えします。
3種のライン入力やヘッドホン出力を装備 MACKIE.アイコンを押してBlutoothペアリング
CR3.5BTは、MACKIE.のスタジオ・モニターのラインナップで最もコンパクトなモニター・スピーカー。サイズは140(W)×206(H)×180(D)mm、重量は3.7kg(ペア)と取り回しに優れたサイズ感ながら、奥行きがあるので設置する際にしっかり安定します。このサイズの筐体に3.5インチのウーファーと1インチのツィーターを搭載し、周波数特性は60Hz~20kHz。同社の製品の特徴でもある、黒と緑のスタイリッシュなデザインです。
本機は片側がパワード、もう片側がパッシブという仕様で(リンクには付属のケーブルを使用)、パワード側のフロント・パネルにはVOLUMEノブ、ヘッドホン出力(ステレオ・ミニ)、出音のトーンを調節するTONE CONTROLノブを装備しています。また、パワード側のリア・パネルには入力端子がまとまっており、TRSフォーン、RCAピン、ステレオ・ミニと種類が豊富なので、さまざまな入力ソースや用途に対応することができるでしょう。リア・パネルにはほかに、パワード側の設置位置(L/R)を設定するPOWERED SPEAKER POSITION SELECTスイッチや、後述するLOCATIONスイッチなどが実装されています。
また先述した通り、CR3.5BTはBluetooth機器との接続にも対応しており、手軽にモニター・クオリティのサウンドでリスニングを楽しむことができます。フロント・パネルにあるMACKIE.アイコン(ランニング・マン)のボタンを押すことで、簡単にBluetooth機器とペアリングさせることが可能です。一般的に、Bluetooth接続対応のスピーカーはペアリング用のスイッチがリア・パネルに付いていることが多いので、この仕様はかなり好印象です。
誇張のないナチュラルなサウンドをしっかり再生 設置位置によって特性を切り替えられるLOCATION
それでは、実際にサウンドを聴いていきましょう。今回は、本機をTRSフォーンでモニター・セレクターにつなぎ、オーディオ・インターフェース経由でDAWの音源やストリーミング音源を再生しました。音源としては、アコースティック系やKポップ、筆者自身の楽曲などを幅広く試しています。
音源を鳴らしてみると、この価格帯とは思えない、とても自然で原音に忠実なサウンドが再生されました。筆者がリファレンスにしている音源も、普段の印象から大きく変わらずに聴くことができます。レンジ感としては“このサイズならでは”といった印象ですが、逆に言えば音が散らずに、気持ち良くリスニングできます。
低域は無理に作り出そうという誇張もなく、ナチュラルでまとまった出音ですが、それでいてピッチが聴き取れるような、輪郭がハッキリしたサウンド。ベースの音もしっかり再生されているように感じました。高域も同じくしっかり出ていますが、音が軽すぎるような印象はありません。
TONE CONTROLつまみを右の方向に回していくと、低域と高域がブーストされて、ややドンシャリめのサウンドに変化。ノブを回し切るとその効果が分かりやすい心地良い音になります。パーティやイベントなどの広めの会場でBGMを鳴らす際に適している印象で、音源のバランスが破綻することもないので安心して使用可能です。左に回すと、フラットになりました。制作などで細かい音を聴き取りたいときは左に回し切るのがよいでしょう。筆者としては、ノブをセンター・ポジションに設定したときの出音が一番気持ち良かったです。
さらに、BOOKSHELF/DESKTOPの2つのモードを切り替えるLOCATIONスイッチを試してみます。これは本機を設置するシチュエーションによって、特性を変えられる機能。BOOKSHELFモードにした際、音が少し広がるような印象を受けました。広々とした空間や、少しスピーカーから離れた位置でリラックスしてリスニングを楽しみたいときに適したチューニングのイメージです。もう一方のDESKTOPモードは至近距離にスピーカーを設置したモニタリングに適していると感じました。
ここまでCR3.5BTを試してみた結論として、音楽制作もリスニングも同じスピーカーで楽しみたい方や、デスクトップ以外でもモニター・サウンドを聴きたい方にとてもお薦めできるスピーカーだと感じました。テレビにつないだり、ゲームをプレイするときなどに活用するのもかなり良さそうです。また、制作やリスニングの環境が手狭な場合、無理に大きなスピーカーを用意するとその性能を持て余しかねません。そういった環境では、コンパクト・サイズのCR3.5BTで鳴らし切るほうが気持ち良くモニタリング/リスニングできるでしょう。定位が分かりやすく、解像度も高いので、初めてのニアフィールド・モニターの導入としても最適です。
Park
【Profile】ベーシスト、音楽プロデューサーとしてクレイジーケンバンドをはじめとしたアーティストの音楽制作に携わる一方、gurasanparkとしてのソロ活動で海外公演なども行っている。
MACKIE. CR3.5BT
オープン・プライス
(市場予想価格:18,150円前後)/ペア

SPECIFICATIONS
▪周波数特性:60Hz〜20kHz(@10dB) ▪最大音圧レベル:100dB ▪クロスオーバー周波数:3.0kHz ▪外形寸法:140(W)×206(H)×180(D)mm ▪重量:3.7kg/ペア