半拍ずらしでリズムを操る!DJ IZOHが2枚使いテクニックを解説|ターンテーブリストへの道

ターンテーブリストへの道 by DJ IZOH

「半拍ずらし」テクニック解説

左右の同曲を半拍ずらして再生する技

 前回の連載から2枚使いの解説をスタートしました。今回もビート・ジャグリングに行く前段階のテクニックである“半拍ずらし”を説明していきます。

 この半拍ずらしという手法はかなり古くから存在する基本的な2枚使いの技術ですが、主に操作するターンテーブルは片方だけとなり、もう片方は曲を流すだけなので初心者の方も挑戦しやすいテクニックです。

①ループのときと同様、左右のデッキ(ターンテーブル)に同じ曲(レコード)を用意し、どちらか片方を再生します。

 ❶片方だけ再生 

①両側に同じ曲をセットしたら、片方だけ再生。ここでは右のターンテーブルを再生する場合で解説する

①両側に同じ曲をセットしたら、片方だけ再生。ここでは右のターンテーブルを再生する場合で解説する

②次に、もう片方のターンテーブルでドラムの1拍目のキック、もしくは2拍目のスネアを用意して待機します。

 ❷もう一方を待機 

②左タンテでドラムの一拍目を待機させている様子。右のミキサー写真のように、曲頭で待機させよう。なお、右写真のミキサー内の波形は下から上に向かって進む

②左タンテでドラムの一拍目を待機させている様子。右のミキサー写真のように、曲頭で待機させよう。なお、右写真のミキサー内の波形は下から上に向かって進む

③再生している曲のドラムをよく聴き、1拍目(キック)または2拍目(スネア)より半拍早いタイミングで待機しているドラムをリリース。同時に、クロスフェーダーをオープンにして聴かせます。

 ❸半拍ずらして再生 

③再生中の曲よりも半拍早いタイミングで左の曲をリリースし、クロスフェーダーをオープンに。右で再生中のドラムの間に半拍早いキックまたはスネアを入れる

③再生中の曲よりも半拍早いタイミングで左の曲をリリースし、クロスフェーダーをオープンに。右で再生中のドラムの間に半拍早いキックまたはスネアを入れる

④その後すぐ、フェーダーを再生していたターンテーブル側へ戻します。このとき、半拍早くリリースしたレコードは戻さずそのままにすることで、先に再生させたドラムと半拍ずれた状態で曲が進行することになります。

クロスフェーダーは必ず戻す

 その後はクロスフェーダーだけを使い、基本は先に再生しているビートが表、ずらしたビートが裏になるように半拍のタイミングで左右にフェーダーを振りましょう。こうすることで、キックやスネアの鳴る回数を増やしてリズムを変化させることができるのです。

 ❹クロスフェーダーを振る

④半拍のタイミングでクロスフェーダーを左右に振り、元の曲のドラムからキックやスネアの鳴る回数を増やす

④半拍のタイミングでクロスフェーダーを左右に振り、元の曲のドラムからキックやスネアの鳴る回数を増やす

 ここで重要なのは、クロスフェーダーを操作した後は先に再生しているターンテーブル側にフェーダーを必ず戻すということ。半拍ずらしたほうにフェーダーを振ったままにしてはいけません。半拍ずらしはハイハットの部分でもできるので、動画をよく見てフェーダーを動かすタイミングを覚えてください。

 動画でチェック 

いざ挑戦!「半拍ずらし」実践のヒント

半拍以外の拍ずらしのレパートリー

 オールドスクールの頃から広く使われてきた半拍ずらしですが、現代では1拍や1/4拍でずらす手法もあります。1拍ずらしの場合、フェーダーを左右に動かすタイミングは1拍のタイミング、1/4拍ずらしの場合は1/4拍のタイミングでフェーダーを動かすようにしてください。

 1/4拍ずらし 

1/4拍ずらしの場合の波形表示。60〜70BPM程度の遅めの曲で試してみよう

1/4拍ずらしの場合の波形表示。60〜70BPM程度の遅めの曲で試してみよう

 1拍ずらし 

1拍ずらしの場合の波形。160BPM以上などの速い曲の場合に挑戦してみよう

1拍ずらしの場合の波形。160BPM以上などの速い曲の場合に挑戦してみよう

 また、使用している曲のBPMやリズム・パターンによっては半拍より1/4拍ずらしのほうが聴こえが良くなったり、逆に1拍の方が気持ち良かったりすることがあります。

 例えば、BPMが60~70台くらいの遅い曲の場合、半拍ずらしではあまりかっこ良くなりません。このときは1/4拍ずらしにしましょう。逆に160BPM以上などの速い曲の場合は半拍ずらしでもかっこ良いですが、1拍ずらしもかなり気持ち良くなります。

 120BPM以上で1/4拍ずらしは難易度が高いので初心者にはお勧めできません。超上級者は、遅い曲限定ですが1/8拍ずらしなんかも使いこなします。

さらなる応用テクニック

●各拍のずらしを作るときのリリース前にスクラッチを入れる

 リリース前に待機中のドラムをベイビー、スタブ、チャープなど自分の好みのスクラッチ・パターンでかっこ良くリリースしてください。

●フェーダーを左右に振る際、表と裏を逆にする

 この手法を使うとまた別のリズムを作ることができます。動画を参照してください。

●先に再生している曲より遅れてずらす

 リリース時に再生している曲より遅らせてずらすことでまた違ったリズムに聴こえます。使っているDJがあまりいないスキルです。

 再生中の曲より遅らせる 

リリース時に再生している曲より遅らせてずらすことでまた違ったリズムで聴かせることができる

リリース時に再生している曲より遅らせてずらすことでまた違ったリズムで聴かせることができる

●一連のずらし技を終えた最後に、バック・スピンやストップ・ボタン、縦フェーダーの手動ディレイで終わる

 ずらしているほうのビートを自分の好きな終わり方でフィニッシュしてみましょう。

 これらのずらし技術で特に重要なのはループのときと同様、リズム・キープです。奇麗なずらしができてこそ、気持ち良く首が振れる新しいリズムになります。クラブ・プレイでも使いやすい技術なので、たくさん練習して現場でぜひ使ってみてください。さらなる応用方法は、また次回紹介しようと思います。

 

 今月のまとめ 

半拍ずらしを使うとビートに変化を付ける
曲のテンポに合わせてずらす拍を変えてみよう

 

 動画でチェック 

今回紹介したテクニックを、DJ IZOHの実践動画でチェック!

【DJ IZOH Profile】ヒップホップ・スタイルにこだわるターンテーブリスト。世界大会入賞歴多数。2012年世界最大のDJバトル『DMC World Final 2012』優勝。第28代世界チャンピオンに輝く。DJスクール講師、プロ・バスケット・チーム“群馬クレインサンダーズ”アリーナDJとしても活躍中。

関連記事