ICON P1-Nano レビュー:最大3種類のDAWを瞬時に切り替えて作業できるコントロール・サーフェス

ICON P1-Nano レビュー:最大3種類のDAWを瞬時に切り替えて作業できるコントロール・サーフェス

 今回レビューさせていただくのは、高性能なDAWフィジカル・フェーダーで有名なICONが新たに発表したDAWコントローラー、P1-Nano。私は昔からICONの製品を愛用しているので、過去の製品からどれだけ進化したのか、とても楽しみです。それではじっくり見ていきましょう。

任意のコマンドを設定可能 便利な16面のタッチ・ディスプレイ

 まずは外観から。高級感のあるマットな仕上がりのブラックの筐体に、各パネル/ディスプレイの精彩ないでたち、そして自照式ボタン類や各ノブの整然とした配置。作業中のテンションを上げてくれそうな見た目のかっこよさと、優れた操作性を兼ね備えた仕上がりです。フィジカル・コントローラーは、制作スタジオの真ん中に鎮座することが多いので、P1-Nanoのようなやる気が出る見栄えは、とてもありがたいです。

 トップ・パネル最上部には、拡張ディスプレイ・ユニットのD5(オープン・プライス:市場予想価格18,700円前後)の脚部を収納するための2つのソケットが用意されています。

各チャンネルのパラメーターなどを表示可能な拡張ディスプレイ・ユニットD5を取り付けた様子

各チャンネルのパラメーターなどを表示可能な拡張ディスプレイ・ユニットD5を取り付けた様子

 その下には、パンニングなどを調整できる回転&プッシュ機能付きデュアル機能エンコーダー・ノブ8基を搭載。左端の解像度12ビットのモーター・フェーダーで、各パラメーターを調整可能です。フェーダー右横には、選択したチャンネルの情報が常に表示される便利なオンボード・ディスプレイに加え、タイム・コードを表示する12セグメントのLEDディスプレイを搭載。

 そのほか、DAWセレクター・ボタンやファンクション・ボタン、16面のタッチ・ディスプレイ、トランスポート・ボタン、ズーム・ボタン、ジョグ・ホイールなど、DAW操作に関するさまざまな操作子が簡潔に配置されており、直感的な操作が可能となっています。フェーダーやノブは、とてもスムーズで快適な動作。ボタン類はやや硬めで、押し間違うことがないような作りとなっていて安心です。

 さて、これらの操作子の中でも、同社の従来の製品と大きく違うのが、16面のタッチ・ディスプレイでしょう。各パネルを軽くタッチすることで、DAWの機能や、キーボード・ショートカット、あるいはMIDIコントロールなどを自在に行えます。しかも、パネルごとに5つの異なるコマンドを設定可能で、左側の“U①/U②”ボタンで各コマンドを即座に切り替えることができます。

ショートカット・キーを登録できる便利なHOTKEY機能

 この16面のタッチ・ディスプレイには、各種DAWに合わせたプリセットが用意されていて、それぞれのDAWの機能を考慮した設定が施されています。Mac/Windows用のアプリケーション“iMap”をインストールすることでそれぞれの設定が可能となり、iMap上での設定が即座にP1-Nanoに反映されます。

Mac/Windows用の専用アプリiMap。操作するDAWの選択や、それぞれのDAW操作に関するコマンドのアサイン(FUNCTION)、コンピューター側のキー操作の登録(HOTKEY)、MIDIコントロールの設定/調整(MIDI)など、iMap上でP1-Nanoの各設定を簡単に行うことができ、その設定は即座にP1-Nano側に反映される

Mac/Windows用の専用アプリiMap。操作するDAWの選択や、それぞれのDAW操作に関するコマンドのアサイン(FUNCTION)、コンピューター側のキー操作の登録(HOTKEY)、MIDIコントロールの設定/調整(MIDI)など、iMap上でP1-Nanoの各設定を簡単に行うことができ、その設定は即座にP1-Nano側に反映される

 iMapを起動すると、P1-NanoをCG化した画像が表示され、カスタマイズしたい部分をクリックすることで、右側のメニューに各コマンドが表示される仕組みです。DAWの機能をアサインするFUNCTION、コンピューター側のショートカット・キーを登録できるHOTKEY、MIDIコントロールとしての機能を持つMIDIの3種類が用意されています。個人的に今回一番アピールしたい部分がHOTKEYなのですが、これはDAWが起動していない状態でも機能するため、今回製品をお借りしていた期間は常時P1-Nanoでコンピューターを操作してしまったくらい、とても便利でした。

 コンピューターとの接続は、USB 3.0 Type-C。コントロール・プロトコルはMACKIE. Mackie Control/HUIをサポートしています。対応DAWは、ABLETON Live、APPLE Logic Pro、AVID Pro Tools、BITWIG Bitwig Studio、IMAGE-LINE FL Studio、MOTU Digital Performer、PRESONUS Studio One、STEINBERG Cubase/Nuendoなど、ほとんどのDAWをカバーしていると言っても過言ではないでしょう。

リア・パネル。左から電源スイッチ、5V DC電源端子、フット・スイッチ用端子(TSフォーン)×2、コンピューター接続用のUSBポート(Type-C)、拡張ユニットD5接続用のUSBポート(Type-C)、ケンジントン・ロックを備えている

リア・パネル。左から電源スイッチ、5V DC電源端子、フット・スイッチ用端子(TSフォーン)×2、コンピューター接続用のUSBポート(Type-C)、拡張ユニットD5接続用のUSBポート(Type-C)、ケンジントン・ロックを備えている

 また、16パネルのタッチ・ディスプレイの右上にあるDAWセレクター・ボタンを使うことで、なんと瞬時に3種類のDAWを切り替えて作業することが可能。私のようにPro Tools、Live、Cubaseなどを切り替えて使うユーザーにはすごく便利で、それぞれにアサインするコマンドをカスタマイズして登録することも、もちろんできます。

 今回は、Logic Pro 10.7.9、Cubase12、Live 11.3.10、Pro Tools 2023.6の4つのDAWでチェックしました。画像付きの簡潔な日本語マニュアルがあるので、各セッティングは問題なく行うことができるでしょう。基本的には、Pro Tools以外はMackie Controlプロトコルで設定を行います。どのDAWの場合もトランスポート操作、オートメーションの切り替え、DAW上でトラックを選んだときのP1-Nano側での同期など、とてもスムーズな操作性で、すごく便利でした。

 コスト・パフォーマンスはもちろんのこと、高級感のあるルックス、そして16パネルのタッチ・ディスプレイをはじめとした各機能の利便性がどれも最高です。今回、僕のスタジオのほかの機材をずらして鎮座させていましたが、あまりにも使い込みすぎて“帰りたくないよー”とP1-Nano君が言っているように思えるほどでした。買い換えようかな、と真剣に思っています。

 

Nagie
【Profile】レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍している。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。

 

 

 

ICON P1-Nano

オープン・プライス

(市場予想価格:30,800円前後)

ICON P1-Nano

SPECIFICATIONS
▪接続:USB 3.0 ▪外形寸法:213(W)×60(H)×196(D)mm ▪重量:896g

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15 以降
▪Windows:Windows 10 以降
▪共通:クラス・コンプライアント対応
▪対応DAW:INTERNET Ability、ABLETON Live、ADOBE Audition、APPLE Logic Pro、BITWIG Bitwig Studio、CAKEWALK Sonar、COCKOS Reaper、IMAGE-LINE FL Studio、MAGIX Samplitude、MOTU Digital Performer、PRESONUS Studio One、REASON STUDIOS Reason、STEINBERG Cubase/Nuendo、AVID Pro Tools、HARRISON AUDIO CONSOLES Mixbus 32C、TRACKTION Waveform、UNIVERSAL AUDIO Luna

製品情報

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