DEVIOUS MACHINES Texture レビュー:サウンド・デザインの可能性を秘めたクリエイティブ・プラグイン

DEVIOUS MACHINES Texture レビュー:サウンド・デザインの可能性を秘めたクリエイティブ・プラグイン

 今回レビューするのは、DEVIOUS MACHINES Texture。入力された信号の音量を検出し、ダイナミクスに応じてさまざまなサンプルをレイヤーしたり、異なる音に置き換えたりすることができるプラグイン・エフェクトです。一言で表すならば、高機能サンプル・レイヤー/リプレーサーと言えるでしょう。ミックス的なアプローチだけでなく、サウンド・デザインの可能性を秘めたクリエイティブ・ツールです。

リミッター/エンベロープ/フィルターを内蔵しレイヤーするサンプルの音色を加工

 まずTextureを立ち上げると、レイヤーとしてホワイト・ノイズのサンプルが読み込まれ、画面上部にある“DYNAMICS”タブが開きます。トラックを再生すると入力されたオーディオの波形が灰色で画面表示されるので、オレンジ色のライン“LIMIT”と紫色のライン“GATE”を用いてレイヤーするサンプルのダイナミクスを決めましょう。LIMITではサンプルの最大音量を、GATEでは入力信号がどのレベルを超えたときにサンプルを発音させるのかを設定できます。

 

 これらは画面下部にあるENVELOPEセクションのGATEノブとLIMITノブと連動しており、どちらからでも調整できますが、こちらではGATEの真上にある“L/Rリンク”やLIMITの真上にある“MAKEUP”という機能も搭載しています。L/Rリンクでは入力信号をL/Rで独立して検出するかどうか、MAKEUPではレイヤーするサンプルを常に最大音量で鳴らすかどうかを設定できるため、便利です。

 

 そのほか、ENVELOPEセクションではレイヤーするサンプルのエンベロープを調整します。アタック/ホールド/ディケイで発音の速さや減衰具合を調整する際は、サンプルの波形が青い線で入力信号の波形に重なるように描かれるため、視覚的/直感的な操作が行えるでしょう。

 

 画面左下にある“FILTER”セクションでは、レイヤーするサンプルに対してフィルターを施すことが可能です。さらにこの右隣にある“SIDECHAIN”セクションでは、入力信号と全く同じ検出用のパラレル信号にフィルターをかけ、その信号における任意の周波数帯域のみをTextureが検出するように設定できます。例えば、ドラムのキックは高域にアタック成分、低域にサステイン成分を含みますが、低域部分にだけTextureのエフェクトが反応するようにしたいときなどに役立つでしょう。

プリセット・サンプルは300種類以上。オリジナルのサンプルもインポート可能

 画面左上にあるテクスチャー・プリセットには、300種類以上のレイヤー・サンプルを用意。“Hihats”“Percussion”といった打楽器音の補強を想定したカテゴリーのほか、“Chords”“Orchestral”といったコードから、“SFX - Water”“Synth FX1”といった効果音まで幅広く用意されており、Textureが単なるサンプル・レイヤーとしてではなく、サウンド・デザイン面にも力を入れていることが分かります。サンプルによってさまざまなパラメーターが備わっているため、ピッチや音色などをさらに追い込むことが可能です。

 

 ここまでざっとメインのパラメーターを見てきましたが、実際使用してみると、サンプル・レイヤー/リプレーサーとしての基本機能がしっかり備わっており、スピーディに作業できると感じました。もちろんレイヤーするサンプルは、プリセットからだけでなくオリジナルのサンプルもインポート可能です。特にオリジナル・サンプルにおいては、“SAMPLE”タブで4つの再生モード、Trigger/Loop/Random/Granularを選択できます。TriggerモードにはさらにAudio TriggerとRepeatという2種類のスタイルがあり、Audio Triggerでは任意のスレッショルド値を超えたときに発音、Repeatでは指定した間隔で発音が可能です。

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インポートしたサンプルは、SAMPLEタブにてTrigger/Loop/Random/Granularの4種類の再生モードを選択できる。またTriggerモードには、Audio Trigg erとRepeatという2種類のスタイルがありサンプルの発音における細かな設定が行える

 Loopでは指定した範囲をループさせることができ、ループ開始点と終了点をクロスフェードすることもできます。さらにはランダム再生機能のRandomや、グラニュラー・サウンドが生成されるGranularも予想外のサウンドを生み出すのに効果的だと感じました。

 

 まだまだTextureにはユニークな機能が備わっています。“MODULATION”タブでは、LFOとエンベロープ・モジュレーションをレイヤー・サンプルのピッチやトーンに施すことができ、よりオリジナルなサウンド・メイクが行えます。

 

 ほかにも“TEXTURE_EQ”や“ORIGINAL_EQ”タブが用意されており、レイヤー・サンプルと入力信号のそれぞれにおいてEQすることが可能です。これらのおかげで、サウンド・デザインの質をより高められると感じます。例えば、クラブ・ミュージックを作るときは環境音を背景としてよく重ねたりしますが、Textureを使ってリズミカルなパーカッションに混ぜてみると、またひと味違ったインパクトのある演出が行えるでしょう。またこういった手法は、ポップさを足してくれる要素になると思います。

 

 すべてのパラメーターはオートメーションに対応しているため、イメージを簡単に再現できるのも魅力の一つ。例を挙げるならば、シンセ・アルペジオに対してノイズ・サンプルをレイヤーし、さらにそのノイズのディケイをオートメーションしていくと、まるでアナログ・シンセのように有機的なサウンドにすることができます。Textureは、“どこか平坦に感じる”や“何かが足りないけれど、これ以上空間は埋めたくない”といったときなどにも重宝するでしょう。現状で存在しているフレーズに合ったレイヤーを、オーガニックかつリズミカルに、しかも手軽に足すことができてしまいます。使い方は無限大なので、音楽ジャンルを問わず、多岐にわたって活躍するプラグインではないでしょうか。

 

Atsushi Asada
【Profile】AmPm「Best Part Of us」などのプロデュースで注目を集める。現在は音楽キャリアを軌道修正し“自分を感動させる音楽”の創造に専念。今年10月にアルバム『Voyage of Life』を発表した。

 

DEVIOUS MACHINES Texture

12,375円(価格は為替相場によって変動)

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REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.12/10.13/10.14/10.15、AAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション(64ビットのみ)
▪Windows:Windows 8/10、AAX/VST対応のホスト・アプリケーション(32/64ビット、AAXは64ビットのみ)

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