「BLACK LION AUDIO Revolution 2×2」レビュー :気鋭のブティック・メーカーによるオーディオI/O

気鋭のブティック・メーカーによるオーディオI/O「BLACK LION AUDIO Revolution 2×2」レビュー

 シカゴのBLACK LION AUDIOは録音機材のモディフィケーション会社としてスタートし、身近な民生機からプロ・ユース機材まで幅広くモディファイを行ってきた。並行してオリジナル製品も開発しており、中でもワード・クロック・ジェネレーターのMicro Clock MKⅢはプロにおける評価が高い。現在は、アナログからデジタルまでそのラインナップはかなり充実している。それらの実績が今回初のオーディオ・インターフェースとなるRevolution 2×2の開発につながっているという経緯だ。

適度にワイド・レンジながらソリッド。各楽器のバランスが良い再生音

 最初にRevolution 2×2の魅力を強調しておくと、モディファイ技術によって磨き出されるその独自の音色。一般的なオーディオ・インターフェースで重視される機能やスペックよりも、アーティストとの試行錯誤によって音楽的な音色を最重要視した結果だ。このことを念頭に各機能を見ていこう。

 

 Revolution 2×2は2イン/2アウト、最高24ビット/192kHzのUSB Type-C接続のモデル。ハーフラック・サイズで重さ1.4kg(実測値)、各ツマミは金属製でしっかりとした高級感がある。USBクラス・コンプライアントに対応しているので、Macではドライバーをインストールすることなくケーブルをつなぐだけで使用可能。2本付属のUSBケーブルは1.2m(実測値)で、絡みにくい編み込みケーブルとなっており、ノイズ対策のためのフェライト・コアも付いている。

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リア・パネル。左からモニター・アウトL/R(TRSフォーン)、S/P DIFコアキシャル入出力、USB Type-C端子を搭載する

 まずAPPLE iMacに接続し、ヘッドフォンでリファレンスCDを聴いてみた(24ビットを選択)。音色は適度にワイド・レンジながらソリッド。低域にスピード感があり、それでいてベースもちゃんと聴こえる。特に今っぽい低域が多めのヘッドフォンでも、より見通し良く聴こえるのが印象的だ。高域がかっちりしている割にシャキシャキとはせず、前に出るサウンド。さらにモニター・アウトをパワード・スピーカーにつないでみると、こちらも聴きやすい音だった。ヘッドフォン端子と同じく楽器のバランスが整っている。モニター・アウトのダイナミック・レンジは106dBでやや物足りないが、このタイプの構造上、モニター・ミキサーを通った後の値なのでそこは考慮したい。

 

 さらにWindows 10を搭載したノート・パソコンにドライバー(ver 5.0)をインストールして本機を接続してみた。Windows環境では多くの他社製品と同じくカスタムTHESYCONドライバーとして供給される。こちらも同様にしっかりした大変聴きやすいサウンドで再生できた。このデバイス・コントロールのアプリと同時にインストールされるミキサー・アプリにはSimpleとAdvancedの2つのモードが用意されており、ここでループバック機能も使用できる。 

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Windows環境でダウンロードできるミキサー・アプリ画面。こちらはAdvancedモードで、より自由度の高いルーティングが可能となる

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Windows環境でダウンロードできるミキサー・アプリを使えば、ループバックのボリュームをコントロールすることもできる

声のおいしい帯域をしっかり録音。バス・パワー駆動でも十分な音量感

 今度は録音側をチェックしよう。2つのマイクプリのゲイン幅は55dB。規定レベルの記載はないが下限が−60dBuより下に設定されているようで、SHURE SM57でしゃべりを拾っても十分にレベルは稼げる。リボン・マイクではゲインがフルになってしまうがダイナミック・レンジは116dBあり、S/Nが良いので問題にならないだろう。その音色は声のおいしい帯域をしっかり拾いながらも、ワイド・レンジ過ぎず前に出てくる音だ。無駄な低域を拾わないのでコンデンサー・マイクでもレベルがそろって扱いやすい。コンボ・ジャックのライン・インはダイナミック・レンジが126dB。こちらもマイクプリと同傾向の音の印象。INSTスイッチを押すと1MΩとなり、パッシブのエレキギターでもダイレクト・ボックスと遜色(そんしょく)の無い高域が得られた。ギターにもぴったりの音色である。

 

 DIRECTノブは左に回すと演奏中の遅延の無いインプット音、右に回すとコンピューターからのプレイバック音が大きくなる構造で、録音中に頻繁に調整するツマミである。インプットのモニター定位をセンターにしたければMONOスイッチを押そう。ここで注意したいのは中央のLEDメーターはコンピューターからのプレイバック信号だけを表示しており、この信号のみがS/P DIFアウトから出力されるという点。ここからマスター・レコーダーへデジタルでつなげばモニター・ミキサーを通らないので高品質が保てるというわけだ。逆に外部機器からS/P DIF入力につなぐ場合、INPUT SELECTスイッチを押すとアナログ信号がS/P DIFに切り替わる。この際クロックが本機マスターのままで非同期のサンプル・レート変換が使われるという点にも気を付けよう。Macro MMC Clockingと呼ばれる独自の技術が使われているそうだ。

 

 電源はバス・パワー駆動専用。消費電力の記載が見当たらなかったので、簡易USBテスターで測定してみると5.04Vで0.28A。48Vをオンにしてコンデンサー・マイク2本使用時には0.38Aとなった。48V使用時でもヘッドフォンの音は変わらず元気良く鳴ってくれる。470Ωのヘッドフォンでもワイド・レンジにドライブできてかなり相性が良かった。

 

 繰り返すとRevolution 2×2の最大の魅力はその音色にある。皆さんも店頭でそのソリッドな音色を確認していただきたい。その際はヘッドフォンでのチェックをお薦めしておく。

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バンドル・ソフトウェアとしてPRESONUS Studio One Artistのほか、IZOTOPE Elements Suite、BRAINWORX Bx_Digital、LINDELL 6X-500が付属する

 

原口宏
【Profile】ムーンライダーズ、細野晴臣、忌野清志郎などを手がけてきたフリーランス・エンジニア。最近作は『moonriders special live カメラ=万年筆』、細野晴臣『あめりか』のミックス/マスタリング。

 

BLACK LION AUDIO Revolution 2×2

オープン・プライス

(市場予想価格:49,500円前後)

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SPECIFICATIONS
▪ビット/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪入力インピーダンス:3kΩ(マイク)、14kΩ(ライン)、1MΩ以上(INST) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪ひずみ率:0.00098%(マイク・イン)、0.0022%(ライン・イン)、0.00114%(INSTイン)、0.002%(ライン・アウト) ▪ダイナミック・レンジ:116dB(マイク・イン)、126dB(ライン・イン)、103dB(INSTイン)、106dB(ライン・アウト) ▪外形寸法:223(W)×44(H)×175(D)mm(実測値) ▪重量:1.4kg(実測値) ▪付属品:USB Type-Cケーブル、USB Type-C to Type-Aケーブル

REQUIREMENTS
▪Mac:Core Audio対応のUSB Type-C接続 ▪Windows:USB Type-C接続

製品情報

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