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「EXPRESSIVE E Noisy」フィジカル・モデリングと減算方式シンセシスを搭載するソフト・シンセ

フィジカル・モデリングと減算方式シンセシスを搭載するソフト・シンセ「EXPRESSIVE E Noisy」

フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはフランスに拠点を置く気鋭のブランド、EXPRESSIVE Eからリリースされたソフト・シンセのNoisyだ。Mac/Windows対応で、AU/VSTプラグインとして動作する。それでは、具体的に見ていこう。

分かりやすい画面レイアウト〜2つのモジュール・エディター画面を装備

 ユニークなフォルムと操作方法のMIDIコントローラーTouché/Touché SE(写真①)により、一躍注目の的となったブランドのEXPRESSIVE E。筆者も2019年1月号のサンレコで製品レビューをして以来すっかりファンとなり、常に同社の新製品には注目してきた。最近では、ストリングスに特化したフィジカル・モデリングのソフト音源Archéを手に入れたばかりだ。

写真① 写真右手に見えるのは、ソフト音源のパラメーターを圧力で制御するMIDIコントローラーのEXPRESSIVE E Touché SE。上下左右の押し込みを基本に、触れる、こする、たたく、といった手の動作をソフト音源の各パラメーターにアサインしてコントロールすることができる。同左手に見えるのは、Noisyのパッケージ。「Webサイトやパッケージにもデザインのこだわりを感じるところに好感を持つ」と筆者は語っている

写真① 写真右手に見えるのは、ソフト音源のパラメーターを圧力で制御するMIDIコントローラーのEXPRESSIVE E Touché SE。上下左右の押し込みを基本に、触れる、こする、たたく、といった手の動作をソフト音源の各パラメーターにアサインしてコントロールすることができる。同左手に見えるのは、Noisyのパッケージ。「Webサイトやパッケージにもデザインのこだわりを感じるところに好感を持つ」と筆者は語っている

 今回レビューするNoizyは、フィジカル・モデリングと減算方式シンセシスを取り入れたハイブリッド型のソフト・シンセ。Noisyを立ち上げるとまず目に飛び込んでくるのは、カラフルかつ分かりやすい画面レイアウトだ(メイン画像)。これだけで期待値が上がり、ワクワクする。

 筆者がEXPRESSIVE Eに好感を持つ理由の一つとして、製品のみならずWebサイトやパッケージにもデザインのこだわりを感じるところだ。もちろんソフトウェアのデザイン性も、画面を長時間見続けるクリエイターにとっては重要な要素の一つである。何よりNoisyは、何の機能がどこにあるのかがパッと見て想像できるレイアウトとなっているのでありがたい。

 画面構成についてだが、最上段ではプリセットのロード/セーブ、ピッチ・ベンド幅やモード、グライド、テンポの設定などが行える。上から2段目にはナビゲーション・バーを装備(画面①②)。Noisyはレイヤー1/レイヤー2/エフェクト・ページという3画面で構成されており、このナビゲーション・バー上にある“1”“2”“FX”といった部分をクリックすることによって、各画面へ切り替えることができる。

画面① 画面の上から2段目にあるナビゲーション・バーのレイヤー1に関するセクション。プリセットの選択やオクターブの調整などの機能を備えている。また左端にある数字部分をクリックすることによって、選択した数字のレイヤー編集画面へ切り替えることができる

画面① 画面の上から2段目にあるナビゲーション・バーのレイヤー1に関するセクション。プリセットの選択やオクターブの調整などの機能を備えている。また左端にある数字部分をクリックすることによって、選択した数字のレイヤー編集画面へ切り替えることができる

画面② ナビゲーション・バーの右側部分。画面をエフェクト・ページへ切り替えることができるFXボタンや、マスター・エフェクトのバイパスボタン、マスター・ゲイン・ノブを搭載している

画面② ナビゲーション・バーの右側部分。画面をエフェクト・ページへ切り替えることができるFXボタンや、マスター・エフェクトのバイパスボタン、マスター・ゲイン・ノブを搭載している

 このナビゲーション・バーでは、レイヤー1/レイヤー2におけるプリセットの読み込みやオリジナル・プリセットのロード/セーブ、オクターブ調整、ミュート/ソロやゲインの設定、エフェクトのバイパス・オン/オフ、マスター・ゲインの調整が行える。

 ナビゲーション・バーの下部はモジュール・エディターと呼ばれ、各モジュールにアクセスできる。モジュールは信号のダイナミクスを担うNOISE、これを元にピッチ感のあるサウンドを生成するRESONATOR、2つのノート間におけるピッチ推移時間を設定するGLIDE、ピッチを揺らすVIBRATO、加算合成のアプローチでコード演奏を可能にするHARMONIZER、RESONATORのボリューム/パンとNOISEのボリュームを調整するMIXER、ローパス・フィルターのLOWPASS FILTER、ゲインとソフト・クリッパーを備えるLAYER OUTPUTなどが用意されている。

4種類のノイズを搭載するNOISEレゾネーターは最大6つまで組み合わせ可能

 Noisyの名の通り、コアな部分をつかさどるのはNOISEモジュールだ(画面③)。Velvet Noise/Pink Noise/White Noise/Blue Noiseという周波数特性の違う4種類のノイズを選択でき、ここからすべての音作りを開始する。

画面③ Noisyのシンセ・エンジンの中心となるNOISEモジュール。信号のダイナミクス部分を担っている。画面左下にあるプルダウン・メニューからVelvet Noise/Pink Noise/White Noise/Blue Noiseという4種類のノイズを選択可能だ。また画面右上にあるExp amtノブでは、任意のパラメーターにかけるエクスプレッションの度合いをコントロールできる

画面③ Noisyのシンセ・エンジンの中心となるNOISEモジュール。信号のダイナミクス部分を担っている。画面左下にあるプルダウン・メニューからVelvet Noise/Pink Noise/White Noise/Blue Noiseという4種類のノイズを選択可能だ。また画面右上にあるExp amtノブでは、任意のパラメーターにかけるエクスプレッションの度合いをコントロールできる

 もう一つ、サウンドを色付ける重要な要素としてRESONATORモジュールがある(画面④)。レイヤー1/レイヤー2には黄、赤、緑といった3つのRESONATORモジュールがそれぞれ配置されており、2つのレイヤーを合わせれば、最大6つのRESONATORモジュールを組み合わせた多次元的なサウンドを作り出すことができる。

画面④ NOISEモジュールの後段に配置されるRESONATORモジュール。画面中央には2つのモジュレーション・パネルを内蔵し、XY軸における○の位置によって、モジュレーションの挙動が変化する仕組みとなっている

画面④ NOISEモジュールの後段に配置されるRESONATORモジュール。画面中央には2つのモジュレーション・パネルを内蔵し、XY軸における○の位置によって、モジュレーションの挙動が変化する仕組みとなっている

 RESONATORモジュールの画面右端では、スライダーを用いてOsc. ResoとComb. Resoで生成されたサウンドのブレンド量をシームレスに切り替えられるようになっている。つまりレゾナント・オシレーターによる減算方式シンセシスと、コム・フィルターによるフィジカル・モデリング・シンセシスをスムーズにミックスできるのだ。

 そしてこの切り替えをマウス操作よりも滑らかに、かつ有機的に実現してくれるコントローラーが同社のTouchéやTouché SEだ。これらが持つ直感的な操作でフィジカルな変化を加え、まるでアコースティック楽器を演奏しているかのような感覚にさせてくれる。

 エフェクト・ページも見てみよう(画面⑤)。このページはレイヤー1/レイヤー2の後段に位置し、EXPRESSIVE CONTROLS、2つのエフェクト・スロット、ステレオ・ディレイとプレート・リバーブを備えている。2つのエフェクト・スロットには、トレモロやローパス/ハイパス・フィルター、ディストーションなどを格納可能だ。

画面⑤ エフェクト・ページ。上から同ページ内のパラメーターをアサインできるEXPRESSIVE CONTROLS、2つのエフェクト・スロット、ステレオ・ディレイとプレート・リバーブを備えている。エフェクト・スロットは、トレモロやローパス/ハイパス・フィルター、ディストーション、リング・モジュレーション、フェイザー、コーラスなど11種類ものエフェクトを内蔵

画面⑤ エフェクト・ページ。上から同ページ内のパラメーターをアサインできるEXPRESSIVE CONTROLS、2つのエフェクト・スロット、ステレオ・ディレイとプレート・リバーブを備えている。エフェクト・スロットは、トレモロやローパス/ハイパス・フィルター、ディストーション、リング・モジュレーション、フェイザー、コーラスなど11種類ものエフェクトを内蔵

 EXPRESSIVE CONTROLSは2つのノブを搭載しており、これらにはエフェクト・ページ内のパラメーターをアサインできるため、MIDIコントローラーやDAWのオートメーションとリアルタイムに連携/操作することができる。このように、エフェクト・ページではレイヤー1/レイヤー2で生成したサウンドをより多様なものにすることができるだろう。

Touchéシリーズと併用することにより最大限に引き出されるNoisyの個性

 Noisyの音質については、とても素直な印象だ。そう感じたのは、やはり減算方式による部分が大きいのだろうか。高域は電子音たる伸びの良さがある。RESONATORモジュールでComb. Reso寄りにしたときは、“弦の揺れ”のような、ほかのソフト・シンセではあまり感じたことのない音表現を感じた。またシンセ・ベース系のサウンドでは、従来のアナログ・シンセに近い“張りのある音”がした。

 カテゴリーごとに用意されている多数のプリセットも使用してみた。特に筆者のお気に入りだったのは、プラック・シンセやベース系のシンセ・サウンド。音の立ち上がりが心地良く、ベロシティやモジュレーション・ホイールをいじっただけでは簡単に作れないようなサウンドが印象的だった。

 Noisyは、単体のソフト・シンセとして申し分のないクオリティだが、やはりその真骨頂はTouchéやTouché SEと併用したときだ。これらのモジュレーション・コントロールによってNoisyの持つ個性を最大限に引き出すことができる。また、直感的なアプローチで新たなサウンドを発見することもできるかもしれない。

 Noisyはこれまでの単調なサウンドに大きな変化をもたらし、楽曲全体のクオリティ向上にも一役買ってくれることだろう。単なるソフト・シンセではなく、まるで楽器を演奏しているかような感覚にしてくれるのがNoisyの魅力だ。すべてのクリエイターからサウンド・デザイナーまで幅広く使用していただきたい。

 

EXPRESSIVE E Noisy

beatcloud価格:20,711円

 Requirements 
■Mac:macOS 10.12以降(64ビット)、AU/VST対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 10以降(64ビット)、VST対応のホスト・アプリケーション
■共通項目:INTEL Core I5またはAMD Ryzen 5以上のCPU、4GB以上のRAM

 

杉本佳一

【Profile】サウンド・アーティスト/コンポーザー。FourColor、FilFla、Vegpher、Minamoなど、さまざまな名義/ユニットで活躍。広告音楽や舞台、映画などのサウンドトラック制作も行っている。

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