AUSTRIAN AUDIO MiCreator Studio レビュー:本体でのヘッドホンモニターや外部入力にも対応するUSBマイクシステム

AUSTRIAN AUDIO MiCreator Studio レビュー:本体でのヘッドホンモニターや外部入力にも対応するUSBマイクシステム

 MiCreator Studioは、パソコンやスマートフォン、タブレットにUSB接続して使うマイクシステムです。MacまたはWindowsのパソコン、Apple iPhone、iPad、Androidデバイス(エンドデバイスと呼びます)に対応し、USB-Cでつないでプラグ&プレイ可能。自宅や外出先で録音するミュージシャン、ポッドキャスト制作者などに向けた一台です。

クリアかつ癖のない音質のマイク 別売マイクをつないでステレオマイキングも可

 MiCreator Studioの本体マイクは単一指向性で、大音量ソースにも耐える最大SPL 130dBの設計。ヘッドは角度を柔軟に調整できます。筐体は耐久性重視の金属製。オーディオI/O機能を搭載し、本体のヘッドホン端子(out端子)から入力音やエンドデバイスのプレイバックをモニターできます。またアディショナル端子(in/out端子)を使えば、別売りのマイクMiCreator Satelliteを併用したステレオマイキングやその他の外部入力の録音も可能です。

背面中央には、ヘッドホン用のout端子(下/3.5mmTRSフォーン)と外部入力および2台目のヘッドホンの接続が可能なin/out端子(上/3.5mmTRRSフォーン)を装備。上部にはin/out端子の入力ゲインスイッチがあり、下部にはエンドデバイスと接続するためのUSB-C端子をレイアウト

背面中央には、ヘッドホン用のout端子(下/3.5mmTRSフォーン)と外部入力および2台目のヘッドホンの接続が可能なin/out端子(上/3.5mmTRRSフォーン)を装備。上部にはin/out端子の入力ゲインスイッチがあり、下部にはエンドデバイスと接続するためのUSB-C端子をレイアウト

 MiCreator Studioは、エンドデバイスに“ステレオ音声デバイス”として認識されます。したがって、本体マイクでボーカルのみを録るような場合も、本体マイク+アディショナル端子で2系統のソースを録る場合も、常にステレオで録音されます。後者では本体マイクの音声がLch、アディショナル端子の音声がRchに送られる仕組みです。

 今回は自宅のMacに接続し、Apple Logic Proで録音。アコースティックギターやボーカルのマイク録り、エレキギターのライン録音を試してみました。まずは前面の本体マイク用ゲインスイッチをhighに設定。lowの設定より20dB増幅されます。次にアコギの12フレット辺りを狙って録音。その後、アディショナル端子に先述のMiCreator Satelliteをつなぎステレオマイキングも試します。MiCreator Satelliteは3.5mmTRRSフォーン端子を用いてMiCreator Studioにアナログ接続します。MiCreator Studioと同じ音響特性なので、ステレオマイキングが成立します。

別売りのマイク、MiCreator Satellite(オープンプライス:MUSIC EcoSystems販売価格15,400円)。MiCreator Studioと同一の音響特性を持つマイクのほか、MiCreator Studioなどと接続するためのlink出力端子(3.5mmTRRSフォーン)、ヘッドホンをつなぐout端子(3.5mmTRSフォーン)を備える。MiCreatorシリーズには、ピンマイクのMiCreator Y-Lav(オープンプライス:MUSIC EcoSystems販売価格7,920円)も用意されている

別売りのマイク、MiCreator Satellite(オープンプライス:MUSIC EcoSystems販売価格15,400円)。MiCreator Studioと同一の音響特性を持つマイクのほか、MiCreator Studioなどと接続するためのlink出力端子(3.5mmTRRSフォーン)、ヘッドホンをつなぐout端子(3.5mmTRSフォーン)を備える。MiCreatorシリーズには、ピンマイクのMiCreator Y-Lav(オープンプライス:MUSIC EcoSystems販売価格7,920円)も用意されている

 録り音の印象は、さすがAUSTRIAN AUDIOと言うべき非常にクリアな音質。周波数アナライザーで見ると低域から高域まで満遍なく入っており、変な癖を全く感じません。低域が過度に収音される、あるいは高域に不快なピークが生じるようなことがないのです。また、普段使っている20万円相当のコンデンサーマイクを比較用として立てて聴き比べてみたところ、劣っている印象が全くなかったので驚きです。

 録音時には、MiCreator Studio本体にヘッドホンを接続してモニターしました。ヘッドホン端子の音質も、録り音と同様にとてもクリア&ナチュラルで、録音モニターとして一切ストレスがありません。また、マイクに入った音がエンドデバイスを経由せず、本体のアナログ回路からヘッドホン端子に返ってくる仕様なので、モニター音にレイテンシーが生じません。Logic Proの低レイテンシー設定をオンにする必要がありませんでした。

エレキギターやキーボードを直接つなげられる ギターのライン録音もナチュラルな音質

 続いては、本体マイクでボーカル、アディショナル端子のMiCreator Satelliteでアコギを録るという弾き語りスタイルでチェック。ボーカルの録り音もアコギと同じく非常にクリアで、歌の細かいニュアンスや強弱のつけ方まで忠実に収めています。少し気をつけないといけないのは入力レベルです。MiCreator Studio本体で設定できるのはlow(0dB)とhigh(+20dB)の2段階なので、特にボーカルは事前に注意しておく必要があるでしょう。筆者の場合は、ボーカルでもアコギでもhighがちょうど良かったのですが、声を張る箇所でマイクに近づきすぎると音が割れる危険性を感じました。ただし、併用するパソコンやアプリの方で入力ゲインを細かく調整できるため、歌い方に合わせた“自分なりの設定”をあらかじめ決めておくと良いかもしれません。

 ヘッドホン端子の音量は、本体前面のvol/balノブで調整できます。ノブを押してインジケーターを赤く点灯させると、本体マイクとアディショナル端子のモニターバランスが調整可能になります。これが弾き語り録音の際に、非常に便利だと感じました。また先述の通り、ヘッドの角度を柔軟に変えられるのも特筆すべき点。マイクスタンドに取り付けて、スペースを考慮しつつ設置してからヘッドの角度で微調整を加えるような、かゆいところに手が届くマイキングも可能です。

 最後に、エレキギターをアディショナル端子に直接つないで録ってみます。接続には、エレキギターやキーボードに対応した付属の楽器用ケーブルを使用。端子の上にある入力ゲインスイッチをlowに設定し、本体マイクのゲインスイッチをmuteに切り替えます。エレキギターのライン入力は、そのままでは往々にしてハイが強くなりがちというイメージですが、MiCreator Studioでは非常にナチュラルで嫌なハイを感じません。録音後にアンプモデリングなどをかける際、気になる帯域を前段のEQで削っておくような処理が要らず、理想の音に近づけるための手順が少なくて済みそうです。

 総評としては、価格に対して、特に本体マイクの録り音がすごく良い。ギターやキーボードで弾き語りする方は、MiCreator Studio+MiCreator Satelliteさえあれば自宅でも外でも、簡単にハイクオリティな録音が行えるのでお勧めです。そして非常にコンパクトなので、MiCreator Satelliteと一緒に持ち歩いても、ほかの録音機材&マイクを運搬するより荷物量が少なくて済むのもうれしいポイントです。

 

シンリズム
【Profile】シンガーソングライター/マルチプレイヤー。アナログEP『心理の森』でデビューし、2022年には3rdアルバム『Musica Popular Japonesa』を発表した。秦基博やKIRINJIのサポートでも活躍。

 

 

 

AUSTRIAN AUDIO MiCreator Studio

オープン・プライス

(MUSIC EcoSystems販売価格:29,700円)

AUSTRIAN AUDIO MiCreator Studio

SPECIFICATIONS
▪カプセル:エレクトレットコンデンサー ▪指向性:単一指向 ▪感度:−35dBFS/Pa(ゲインlow)、−15dBFS/Pa(ゲインhigh) ▪等価雑音レベル:22dB SPL(A-weighted、ゲインhigh) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(マイク)、10Hz〜20kHz(in/out端子) ▪ヘッドホン出力:45mW(負荷32Ω) ▪ビット/サンプルレート:最高24ビット/48kHz ▪外形寸法:60(W)×155(H)×37(D)mm ▪重量:370g

製品情報

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