高谷史郎(ダムタイプ)による新作パフォーマンス『tangent』鋭意制作中!【第42回】realize〜細井美裕の思考と創発の記録

2024年の表現活動はロームシアター京都で幕開け 高谷史郎と筆者の出会いを振り返る

 窓際が寒くて……。窓に吸音材を貼り付けたらとても暖かき部屋となりました。吸音材が季語なら冬か……。

 さて、今年はこれまでになかった表現活動がすでに幾つか始まっています。2024年ひとつめの発表は、現在絶賛制作中の高谷史郎(ダムタイプ)さんによる新作パフォーマンス『tangent』です。2月9〜12日、ロームシアター京都サウスホールにて計4回公演。私は……きっと驚かれるかと思うので、何をしているかはここでは曖昧にしておきます。

 高谷さんと最初にお会いしたのは、清宮陵一さん率いる『隅田川怒涛』(2021年)という芸術祭で、私は、高谷さんが坂本龍一さんと制作された『water state 1』の(芸術祭側の)現場仕切りを任せてもらっていたときでした。その後は私が京都で小さな小さな展示をしたときに見にきていただいたり、ヴェネチア・ビエンナーレでダムタイプが展示されていたのを見に行ったり……。今回の作品については、高谷さんから昨年7月にメッセージがあり、それからほぼ毎月のペースで京都に通っています。この連載が公開されているころには本番までの計3週間、追い込んでいることと思います。実際の会場であるサウスホールと、サウスホールが空いていないときはノースホールを使用して、音響、照明、舞台機構、映像、などなど検証を進めていきます。もちろんコンセプトについても適宜話し合います。

舞台上からの景色。これは1月前半のクリエーションの最終日撤収中の様子

舞台上からの景色。これは1月前半のクリエーションの最終日撤収中の様子

カーペットは奇麗に巻かないと長期保存でシワがついてしまうため、私と高谷さんで巻いたものはやり直しをくらう。勉強になります

カーペットは奇麗に巻かないと長期保存でシワがついてしまうため、私と高谷さんで巻いたものはやり直しをくらう。勉強になります

『tangent』の制作を支える今回のプロジェクトメンバーを紹介!

 作品の詳細は劇場でご覧いただきたいので、ここでは今回のプロジェクトメンバーを紹介します。その人がどんな人であるかが、直接的でないにしても作品に影響を与えるはず。高谷さんとマネージメントの高谷桜子さんに加え、このメンバーで構成されています。

濱哲史さん:今回は音響。と言っても、PAだけでなくプログラムで音を作ったり動かしたりする。YCAMで音響セクションにいた。坂本さん/ダムタイプ作品にも参加し、音も作るけど映像も作る。好きな食べ物はギー。

濱さんがXLRのケーブルを作っている。“ハンダは付けていればいつか付くよ”という迷言を残していた

濱さんがXLRのケーブルを作っている。“ハンダは付けていればいつか付くよ”という迷言を残していた

古舘健さん:今回は映像と、舞台機構と一部照明の制御。濱さんと同じく坂本さん/ダムタイプ作品に参加、第22回文化庁メディア芸術祭で大賞受賞など個人活動、ライブイベントの主催も。気づくとだいたい裸足で作業している。

お分かりいただけるだろうか……。古舘さんは気づいたら裸足になっている

お分かりいただけるだろうか……。古舘さんは気づいたら裸足になっている

白石晃一さん:公演内容に関わるので明言しないが、今回はモノを動かしたり……ほかにも端的には説明できない作業を担当。京都芸術大学の先生。ほかのメンバーは客席側に作業机を構えるが、白石さんはハードウェア作業のため隙間風吹く荷解きのシャッター前で作業。暗くて寒いので以降お仕置き部屋と呼ばれた。

細井お気に入りの写真。皆にお仕置き部屋と呼ばれた寒くて暗い場所に集まる様子。部室か?

細井お気に入りの写真。皆にお仕置き部屋と呼ばれた寒くて暗い場所に集まる様子。部室か?

南琢也さん:高谷さんやダムタイプの作品のデザイナーでもあり音も作る。『DUMB TYPE | 2022: remix』前半の音は南さん制作。ふらっと現れて、考えすぎて麻痺してきたタイミングで客観的なコメントをくれる妖精のような存在です。

みんななんでもできる。いつもふざけてるけど実は尊敬しています。これは舞台上で大きな作業があったので、舞台横にあったお仕置き部屋から廊下に移動したときの様子

みんななんでもできる。いつもふざけてるけど実は尊敬しています。これは舞台上で大きな作業があったので、舞台横にあったお仕置き部屋から廊下に移動したときの様子

吉本有輝子さん:照明の通称“ラリー”さん。維新派やダムタイプ作品、今年の3〜4月に再演がある坂本龍一+高谷史郎『TIME』にも参加。細井は真昼の『何もない空間』という作品でラリーさんのことを知る。舞台上での人の見え方、在り方についてラリーさんと一番会話したかもしれない。

ラリーさんに教えてもらいゼラ(カラーフィルター)を抜き、選別、レンズを戻す。照明スタッフの方、いつもありがとうございます!!!!!

ラリーさんに教えてもらいゼラ(カラーフィルター)を抜き、選別、レンズを戻す。照明スタッフの方、いつもありがとうございます!!!!!

作業スペースはいつも客席中央に設置。ここでみんな横並びで作業する。ラリーさんと古舘さんが連携して照明を制御するシーンの仕込み中

作業スペースはいつも客席中央に設置。ここでみんな横並びで作業する。ラリーさんと古舘さんが連携して照明を制御するシーンの仕込み中

大鹿展明さん:舞台監督。坂本さん/ダムタイプ作品にも参加。あの作品もこの作品も、大鹿さんが舞台監督だったの!?というくらい過去私が見に行っていた舞台に関わっていた。ダムタイプ『2020』の冒頭の振り子の照明を振り落としたのは大鹿さんだそうだ!

 濱さん、古舘さん、白石さん、細井の座談記事が、ロームシアター京都のWebメディア『SPIN-OFFhttps://rohmtheatrekyoto.jp/spin-off/』に公開されるのでぜひご覧ください。それでは、劇場でお待ちしています。


 公演情報 

高谷史郎(ダムタイプ)新作パフォーマンス『tangent』

  • 会場:ロームシアター京都サウスホール
  • 開催日時:2024年2月9日(金)~ 2月12日(月)
    2月9日(金)19:00開演
    2月10日(土)19:00開演
    2月11日(日・祝)14:00開演
    2月12日(月・休)14:00開演

総合ディレクション:高谷史郎
プロジェクトメンバー:濱哲史、古舘健、白石晃一、細井美裕、南琢也
照明:吉本有輝子
舞台監督:大鹿展明
マネジメント:高谷桜子


 News!〜テレビ出演情報 

  • 放送局:BSフジ
  • 番組名:『アートフルワールド』
  • 放送内容:『坂本龍一トリビュート展』@NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
    出演:細井美裕、濱哲史、他
  • 放送日時:
    前編:1月20日(土)13:30〜13:55
    *再放送:2月3日(土)13:30〜13:55
    後編:1月27日(土)13:30〜13:55
    *再放送:2月10日(土)13:30〜13:55


今月のひとこと:1月27日(土)京都のBnA Alter Museumで古舘さんと濱さんとゆるゆるDJします。入場料は全額、能登半島地震災害義援金として寄付します。

 

細井美裕

細井美裕
【Profile】1993年生まれ、慶應義塾大学卒業。マルチチャンネル音響を用いた空間そのものを意識させるサウンド・インスタレーションや、舞台公演、自身の声の多重録音を特徴とした作品制作を行う。これまでにNTT ICC無響室、YCAM、札幌SCARTS、東京芸術劇場コンサートホール、愛知県芸術劇場、国際音響学会AES、羽田空港などで作品を発表してきた。

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