「AUSTRIAN AUDIO HI-X55/HI-X50」製品レビュー:マイクで知られるウィーンのメーカーが手掛けたモニター・ヘッドフォン

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 AUSTRIAN AUDIOはAKGのウィーン拠点がクローズした後に、元AKGの技術スタッフが中心となって創業したマイクのメーカー。大手メーカーがコスト・ダウンのため生産国を移していく中で、メイド・イン・オーストリアにこだわって製造する姿勢には好感が持てます。先日、同社のマイクを試したところ、奇をてらわないストレートな音質で、次世代のスタンダードになるポテンシャルを秘めていると感じました。そして今回、モニター・ヘッドフォンを新しく手掛けたとあって、いやがおうにも期待が高まります。

低反発パッドにより長時間使用にも耐える
中低域の密度が濃く帯域間のつながりが良好

 AUSTRIAN AUDIOのヘッドフォンは、オーバーイア・タイプのHI-X55とオンイア・タイプのHI-X50。耳を覆うか、耳に乗るかの形状の違いで、2モデルが用意されています。両機種共に44mm径 “Hi-X”ドライバー搭載の密閉型で、周波数特性は5Hz~28kHzと広く、インピーダンスは25Ω、感度は118dBspl/Vとなっており、スマートフォンなどに接続しても十分な音量を出せる仕様です。

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HI-X55は、イアパッドで耳を覆うオーバーイア・タイプの機種

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イアパッドを耳に乗せるようにして装着するオンイア・タイプのHI-X50

 ケーブルは着脱式で、半回転させて本体にねじ込むタイプ。3mのケーブルが付属していますが、オプションで1.2mのものも用意されています。端子形状はステレオ・ミニで、ステレオ・フォーンへの変換アダプターを同梱。ハウジング/イア・パッドの部分は回転させて折りたたむことが可能なため、片耳でモニターしたり、コンパクトに持ち運ぶことができます。HI-X55は外形寸法170(W)×200(H)×85(D)mm/重量305g、HI-X50は170(W)×190(H)×70(D)mm/285gで、キャリング・ポーチも付属しています。

 

 実際に試していきましょう。ファースト・インプレッションは、低反発素材のイア・パッドの触り心地が良いこと。ヘッド・バンドの頭に当たる部分にも同じ素材が使われています。この部分からヘッドフォンの重量が頭頂部にかかってくるため、硬い素材で、なおかつ滑り止めのためにデコボコしていたりすると、長時間作業でストレスを感じることも多いです。しかしHI-X55/HI-X50は柔らかい装着感なので、丸一日かけていても違和感はありませんでした。また可動部のきしみなども無く、ウィスパー・ボーカルのような小音量ソースでも、録音中のノイズを気にせず安心してレコーディングできると感じます。

 

 次は音質について。筆者は普段、ヘッドフォンでモニターする際にSONY MDR-CD900STかAKG K240 Studioを使っています。今回の2機種は新発売のモダンなヘッドフォンなので、普段使っている従来のモデルよりも低音がよく出るのではないかと予測していました。ところが音を聴いてみると、先入観に反して従来機と変わらないか、むしろ少なく聴こえるくらいです。が、しばらく聴き続けてみたところ、これは決して低音が少ないのではなく、中低域の密度が濃く存在感があるために、試聴後すぐに他社製のヘッドフォンに替えるとドンシャリに感じてしまうからだと分かりました。

 

 HI-X55/HI-X50では、特にアコースティック・ギターの低音やウッド・ベースのヌルっとしたところが気持ち良く再生され、かつ変に強調されてブーミーになったりせず至極ナチュラルです。中低域がこういう感じで再生されて、生楽器の周波数帯域がつながり良くカバーされているのは新しい音だと感じました。その中低域については、自宅環境や小規模スタジオなどでモニター・スピーカーを鳴らしたときに、部屋の反射などで不正確に聴こえがちな部分です。HI-X55/HI-X50はそこがきちんと再生できているので、チェックのために持っていても便利かもしれません。

 

空気感が強く生音が心地良く聴こえるHI-X55
HI-X50は低域が強くタイトなサウンド

 全体の音の質感については、比較対象にした2つのモデルの方がパリッとして聴こえ、HI-X55/HI-X50の方がサラッとした印象です。例えば前者がダイナミック・マイクのような音だとすれば、それに少しコンデンサー・マイクのようなきめ細やかさが加わったような雰囲気。そして高域に変な派手さが無いので、聴き疲れしないと思います。

 

 今回の2機種は同じドライバーを搭載していますが、音質には結構な違いを感じました。HI-X55は左右の広がりや空気感が強く、生音が心地良く聴こえます。定位やリバーブの調整もしやすいと思いました。一方、HI-X50は低音がやや強めで、タイトな音像。ノイズやトラブルを探す用途にも使えるでしょう。どちらでも問題なくミックスできますが、しいて言えば生楽器を扱うならHI-X55、打ち込みやクラブ系の音楽ならHI-X50を使った方が作業しやすいかもしれません。

 

 また、頭が小さく、いわゆる定番機がフィットしない方にはHI-X50をお薦めします。筆者も頭が小さい方なのですが、ホールド感の薄い状態でかけていると低音が正確にモニターできず困ります。このサイズ感でモニター用に使えるオンイア・ヘッドフォンは少ないので、HI-X50が最有力候補となるのではないでしょうか。

 

 同社のマイクを試したときにも思いましたが、AUSTRIAN AUDIOの製品はどれも癖が無くナチュラルな音で、ちゃんと使えるものをきちんと作るという当たり前のことを、職人の魂で提供しようという静かな熱さを感じます。こうしたブランドが現代に登場するのはうれしいですね。その製品からは、一言で表現すると“丁寧な音”がするのです。

 

中村公輔

【Profile】neinaの一員としてドイツMille Plateauxなどから作品を発表。以降KangarooPawとしてソロ活動を行い、近年は折坂悠太、宇宙ネコ子、かねこきわのらのエンジニアリングで知られる。

 

AUSTRIAN AUDIO HI-X55/HI-X50

オープン・プライス

(市場予想価格/HI-X55:36,000円前後、HI-X50:30,000円前後)

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SPECIFICATIONS
●共通
▪形式:密閉型 ▪ドライバー径:44mm ▪周波数特性:5Hz〜28kHz ▪感度:118dBspl/V ▪インピーダンス:25Ω ▪全高調波ひずみ率:0.1%以下@1kHz ▪付属品:着脱式ケーブル(3m)、変換アダプター(ステレオ・ミニからフォーン)、キャリング・ケース

●HI-X55
▪外形寸法:170(W)×200(H)×85(D)mm ▪重量:305g(ケーブルを除く)

●HI-X50
▪外形寸法:170(W)×190(H)×70(D)mm ▪重量:285g(ケーブルを除く)

 

AUSTRIAN AUDIO HI-X55/HI-X50 製品情報

www.mi7.co.jp

 

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