Device 18 [2d.wave~]を活用したループ・シフター by カール・ストーン

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING '74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 18 [2d.wave~]を活用したループ・シフター by カール・ストーン

S&R Screenshot ▲パッチ外観(プレゼンテーション・モード)

patch ▲パッチ内部(パッチング・モード)

ファイルをダウンロードする→CS Max Patch

さまざまな表情のループを生成

ハロー! お久しぶりです。またサンレコの誌面に戻って来られてうれしいよ。今回は、僕のお気に入りのMSPオブジェクトの1つである[2d.wave~]を使ったループ・シフター的なMaxパッチを紹介したい。

[2d.wave~]は[wave~]とかなり似ている部分を持ちつつ、興味深いヒネリが施されている。[wave~]のようにバッファーのポインターを動かすためのシグナルとしての使用も可能だが、[2d.wave~]にはaxis(軸)が付加されている。このaxisを使用すると、バッファーの設定レンジを任意の複数の列に分割できるんだ。分割した後は異なるシグナルが作業中の列を指定してくれる。この機能によって、バッファーの再生ルーティンをもっと複雑にすることが可能になるんだ。

私のパッチではバッファーの最初から最後まで1つの[phasor~]を使って読み込むようにしていて、[phasor~]のフリケンシーがバッファーの読み込みスピードを決める。サンプルの長さにもよるが、再生レートの調節が必要になることもある。ピッチやスピードの変更無しで再生する場合は、サンプルが長ければ長いほど速いレートが必要となるんだ。2番目の[phasor~]は、音の出る列を決めるときに使う。両方のケースで私は[phasor~]を使うのだが、ほかの波形、例えば[cycle~]を使ってみても面白いことになるだろうし、ランダムにしてみるという手もあるだろう。自分なりのやり方でこのパッチをモディファイしてみても面白いと思う。

このパッチはライブ演奏、リミックスなど、さまざまな使い方が可能だ。最初に“Load Demo Sample”ボタンや“Load Your Own Sample”ボタンをクリックしてバッファーにオーディオ・ファイルを取り込み、中央にあるスピーカーのアイコンのボタンをクリックしてオーディオを鳴らす。その後、インターフェース左上にLEDメーターのように並んだプリセット・ボタンをクリックする。問題が生じなければこれで音が出てくるはずだ。また、サンプルの長さによりけりだが、再生レートを調節しなければならない場合もある。この際、プリセットの切り替えはゆっくりと行うことをお勧めする。ちゃんと聴いてほしいんだ。そうするとループが繰り返されるたびに微妙な違いが現れていることに気付くはずだ。私はこれが気に入っている!

パラメーター調整で特に面白いのが、“Y phase”と“# of rows(列の数)”だ。バッファーにロードするオーディオ・ファイルはループ状のものがベスト。ループのグルーブが4/4拍子の場合、分割する列の数は2の倍数(2、4、8、16など)であれば、結果はかなりダンサブルなものとなる。試してみると、プリセット1〜9がまさにこれに当てはまることに気付くだろう。分割した列の数が2の倍数でない場合、つまりプリセットで言えば10から先の場合、出来上がるフレーズはかなりトリッピーなポリリズムとなる。プリセットを試していろいろと遊んでみてほしい!

ループの“ズレ”を楽しむ

このパッチはL/Rで異なる繰り返しを行い、同じバッファーを使ってステレオ・アウトプットにアサインされている。プリセットを使うだけでなく、さまざまなパラメーターを個別に変えることも可能だ。パラメーターの変更でL/Rのシンクに問題が生じることがあるが、それはそれで面白い結果につながると思う。シンクし直したいときは“sync here”ボタンをクリックしてほしい。

ふと気付くと、私はかなり[2d.wave~]に魅力を感じているようで、よく使っている。私のCD『AI-Noor』収録の「Jitlada」という曲では、このパッチの働きをその耳で確かめられるよ。また「Fujiken」のライブ演奏でも[2d.wave~]の振る舞いを聴くことができる。

最後まで読んでくれてありがとう。読者の皆さんがこのパッチを使って演奏を楽しんでくれることを願っているよ。  

カール・ストーン

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【Profile】カリフォルニア芸術大学でモートン・サボトニック、ジェームズ・テニーに師事し、1972年から電子アコースティック音楽の作曲を開始。現在はカリフォルニアと日本を拠点に活躍しており、大友良英、高橋悠治など共演も多数。作曲や演奏活動のほか、中京大学工学部メディア工学科の教授も務め、レクチャーにも精力的に取り組んでいる。 Photo:Loretta Ayeroff

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