ニュー・アルバム『REFLECTION』をリリースしたtofubeats。「REFLECTION feat.中村佳穂」をはじめ、縁のあるアーティストが多数参加する4年ぶりのアルバムは、ボサノバやジャングルなどのエッセンスも取り入れた聴きどころ満載の一枚だ。インタビュー後編では、tofubeatsの事務所兼プライベート・スタジオのHIHATTで『REFLECTION』の制作/ミックス環境を深堀りしていこう。
Text:Kanako Iida Photo:Hiroki Obara
インタビュー前編はこちら:
WaveLabが全体のハイファイさにつながった
ー先ほどミックス・ダウンのやり方や考え方が変わったとお聞きしましたが、具体的にはどのように変わりましたか?
tofubeats コンプの動作原理や使い分けをもう少し体系的にできるようにしようと思って、テンプレだったミックス・ダウンのやり方を見直したんです。アタックやリリースの制御や細かいところの整理などをしっかりやろうと。当たり前のことですけど、一歩進めたかなとは思ったりしますね。「SOMEBODY TORE MY P」は『TBEP』でも収録しましたが、今の自分の好みに近付けられるようにミックスを変えています。
ーアルバム全体を通して一音一音が繊細だと感じました。
tofubeats ありがとうございます。このスタジオを作って四六時中スピーカーで作業できる環境になったのも大きいかもしれません。全体像をスピーカーでつかんで細かいところをヘッドフォンで直せるので、作業スピードが上がったしテンションも下がらないし。モニター・スピーカーはFOCAL Solo6 BEとEVE AUDIO SC203です。モニター・ヘッドフォンとしてFOCAL Clear MG Proを買ったのも大きかったですね。ヘッドフォンでこんなに良い音のものがあるんだと感動しました。あと自分でも普段からいろいろなワイアレス・イアフォンをリスニング用に使うので、移動中はAPPLE Air Pods Proでもモニタリングして、そういう環境で聴いても良い感じか確認しました。
ーボーカル録りのマイクやマイクプリは何を?
tofubeats 自分の声はそこまでハイファイで録っても仕方ないし、声量も大きいので、マイクはNEUMANN TLM 102を一番使いました。マイクプリはほぼRUPERT NEVE DESIGNS Shelford Channelで、一部SSL VHD PreかPre+です。もともとSSLっぽい音が好きでそれに耳が慣れていたんですけど、あるときから急にShelford Channelが良い感じだと思い始めて。
ーハードウェア・インストゥルメントも多く所有されていますね。
tofubeats 「Solitaire」では、ELEKTRON Octatrack MKⅡにステムを入れてシーケンスを走らせながらフリーズ・ディレイなどのエフェクトをかけたものを録って、原曲の2ミックスとクロス・フェーダーで出し入れしています。「Mirror」でもボーカルが変なディレイになるところを作ったり、Octatrack MKⅡはオーディオ・エフェクターみたいな感じで結構使いました。
ーハードウェアを使うことでモチベーションの変化は?
tofubeats あります。ELEKTRON Digitaktでアイディアを出したものをLiveのDrum Rackで組むとか、頭の体操みたいに使うことも多いです。DAWだと何もしなかったら白紙のままですけど、ハードウェアは走らせると曲っぽいのが出来上がっていくので、それが良さかなと思います。
ーミックスではどのようなハードウェアをお使いですか?
tofubeats 今回使ったのは、サミング・ミキサーのNEVE 8816とアナログ・プロセッサーのSSL Fusionです。8816は昔ミックスで悩んだときに最後通したらバシッと決まった、という成功体験があって。今回は「恋とミサイル」が“最後は8816に通そう”と決めて作った曲で、相性バッチリでしたね。「CITY2CITY」はFusionにドラム・バスを通しました。Fusionはコンピューターを使う人向けの現代のアウトボードだなって思います。ハイハットにハイパスのコンプをかけたり、ボーカル・チェインで嫌なところを取ってサチュレーションをかけるような処理が1台でできるのが魅力です。
ーミックス含め、一人で何でもこなしていますね。
tofubeats ミックスまで自分でやるのが当たり前と言われて育ったので、マスタリング直前までは毎回自分でやっています。ただ、マスタリングは人にお願いしたくて、いつもお願いしているエンジニアの得能(直也)さんに依頼しました。今回はSTEINBERG WaveLabでマスタリングしたらしく、それが全体のハイファイさにつながっていますね。『REFLECTION』のミックスのテイストと相性が良かったみたいです。
ーご自身では作品を通した仕上がりをどう感じますか?
tofubeats 自分的にも制作的な意味でも楽しんで作った一枚になりました。良い意味で平坦というか、そんなにダイナミックではなく聴きやすい感じになった気もします。とは言えギミックもいろいろなところに入っているので、いっぱい聴いてそういう部分を見つけてもらえたらうれしいです。
インタビュー前編では、 最新アルバム『REFLECTION』の制作経緯をはじめ、収録曲「PEAK TIME」と「REFLECTION feat.中村佳穂」のトラック・メイク術を詳しく聞きました。
Release
『REFLECTION』
tofubeats
ワーナーミュージック・ジャパン:WPCL-13374(初回限定盤)、WPCL-13375(通常盤)
Musician:tofubeats(all、vo)、Neibiss(vo)、UG Noodle(vo)、Takashi Kusuda(cho、perc、Lap Steel Guitar)、Ecco(sax)、中村佳穂(vo)
Producer:tofubeats、Neibiss、UG Noodle、Kotetsu Shoichiro
Engineer:tofubeats、UG Noodle、Takashi Kusuda、松下雅和、奥田泰次
Studio:HIHATT HO、ヒョンの部屋、Lockport Building、Native Chamber、M-studio、MSR