斉藤和義 インタビュー【前編】YMO「BEHIND THE MASK」のカバー制作秘話を聞く

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「BEHIND THE MASK」のカバーは
なるべくYMOの雰囲気のままでやりたかった

「ずっと好きだった」「ウエディング・ソング」「やさしくなりたい」など多数のヒット曲で知られるシンガー・ソングライター斉藤和義。自身でほとんどのパートを演奏してダビングしていく手法でも定評ある斉藤だが、その多くはレコーディング・スタジオで制作されていた。ところが、このたびリリースされた『55 STONES』は、コロナ禍にあって、自宅やプライベート・スタジオで制作されたという。YMO 「BEHIND THE MASK」のカバーという幕開けにも驚いたが、詳しく聞いてみると、リズム・マシンやスマートフォン・アプリなどを駆使したという制作スタイルが明らかに。ミックスを担当したエンジニアの桑野貴充氏とともに、機材への愛情を交えてたっぷりと語ってもらった。

Interview:iori matsumoto Photo:Hiroki Obara
衣装協力:KAZUYUKI KUMAGAI/アタッチメント表参道(03-6804-5460)

ボコーダーはMicrokorg
YouTubeでコードの積みを見て再現しました

ー最新アルバム『55 STONES』、まず驚いたのは1曲目でのYMO「BEHIND THE MASK」のカバーでした。ほぼYMOのバージョンをなぞった形でしたね。

斉藤 YMOは好きでしたね。特に中学校に上がったくらいのころに『ソリッド・ステート・サバイバー』が出て。当時はみんな聴いていましたからね、『増殖 - X∞Multiplies』とか。特に初期の3〜4作はしょっちゅう聴いていました。

 

ー「BEHIND THE MASK」を取り上げたのは、今のコロナ禍で、みんながマスクしている状況を反映して?

斉藤 それもありましたね。“仮面の裏側”というタイトルも意味深だと思ったし、去年からの状況にピンと来た感じもあって。自粛の状況もあったので、自宅にちょっとしたスタジオというかブースがあって、大体そこで録りました。

 

ーリフはギターで、リードはスライド・ギターと、YMO版のシンセを楽器に置き換えた形ですが、ボーカルはオリジナルと同様ボコーダーで歌われているのが印象的でした。

斉藤 エリック・クラプトンやマイケル・ジャクソンのカバー・バージョンもあるじゃないですか? 最初はあっちかなと思ったけれど、英語詞で歌うのが無理だなと思ったし、なるべくYMOの雰囲気のままでやりたいなと。ボコーダーはKORG Microkorgです。ROLAND VP-03でも試していたんだけど、ちょうどそのときは自宅に置いていなかった。

 

BEHIND THE MASK

BEHIND THE MASK

  • 斉藤和義
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

 Vocoder 

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「BEHIND THE MASK」や「Lucky Cat Blues」で聴けるボコーダーは、KORG Microkorgを使用したもの。これまでもさまざまな楽曲で活用されてきたようで、プリセット番号や設定を記したテープが随所に張られている

 

ーボコーダーで、あの和声の厚みを出して歌うのは難しいのでは?と思いました。

斉藤 もともとYMOのシンセを楽器に差し替えてみようという発想のカバーだったので、ボーカルも地声で何パートも録ろうかなと思ったんです。でも、コードが全然分からなかった。それで、YouTubeでコードの積みをアップしている人がいて、楽譜が読めないなりにそれを見ながら一生懸命、どうやらここはこういうことかな?と。

 

ーボコーダー・ボイスですから、和声の重なり具合も聴き取りづらいですよね。

斉藤 そうなんですよ。“下にも居るな……?”と思いながら。教授(坂本龍一)、恐るべしですよ。

 

ー坂本さんご自身に直接教わることはしなかった?

斉藤 録った後に“カバーさせていただいていいですか?”とメールしました。“歌わないんだね”と言われて。

 

ー皆さん、てっきりクラプトン・バージョンでやられるのかと思ってしまうんですね……。

斉藤 結構インストもやっているんですけど、“ 斉藤和義の作品”としてはそういう印象はないんでしょうね。でも、サントラやMANISH BOYS(ドラマー中村達也とのユニット)も含め昔からやっていて。インストも好きだし、自分としては自然なんですけどね。

 

ーイントロで、コードの刻みの後ろに“ボワボワボワ〜”と鳴っているシンセまでちゃんと入っています。

斉藤  あれはシンセじゃなくてベースで、弦をすごくゆるめて、指でこすった音。最後にJiveで録ったんですよ。録った中で原曲のシンセに一番似ているところを選んで使いました。

桑野 結構時間がかかりましたね(笑)。いったんミックスができた後だったと思います。

斉藤  あの音が原曲に居るのは知っていて、そこまではやらなくてもいいかと思っていたけれど、やっぱり必要だと思って。有ると無いでは全然違いますよね。でもこの曲ではボコーダー以外でシンセは使っていないんです。

 

≫≫≫後編に続く

 

インタビュー後編(会員限定)では、最新アルバム『55 STONES』制作の裏側をたっぷりお届けします。

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Release

55 Stones

55 Stones

  • 斉藤和義
  • J-Pop
  • ¥2241

『55 STONES』
斉藤和義
SPEEDSTAR(初回限定盤:VIZL-1850、通常盤:VICL-65460、アナログ盤VIJL-60310)

  1. BEHIND THE MASK
  2. Boy
  3. Strange man
  4. 純風
  5. Lucky Cat Blues
  6. 魔法のオルゴール
  7. シグナル
  8. レインダンス
  9. 木枯らし1号
  10. 一緒なふたり
  11. 2020 DIARY
  12. ぐるぐる

<初回限定盤付属DVD>
スタジオ・ライブ&ミュージック・ビデオ収録

Musician:斉藤和義(vo、g、b、ds、k、syn、他)、平里修一(ds)、朝倉真司(ds)、山口寛雄(b)、真壁陽平(g)、藤井謙二(g)、崩場将夫(k)、愛太朗(sax)
Producer:斉藤和義
Engineer:桑野貴充、斉藤和義
Studio:Jive、ネコスタ、ホテルニュー世田谷、FREEDOM STUDIO INFINITY、Sound City Setagaya

 

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