MONDO GROSSO/大沢伸一 インタビュー【前編】〜坂本龍一から齋藤飛鳥(乃木坂46)まで多彩なゲストが集う『BIG WORLD』の制作背景

MONDO GROSSO/大沢伸一 インタビュー【前編】〜坂本龍一から齋藤飛鳥(乃木坂46)まで多彩なゲストが集う『BIG WORLD』の制作背景

2017年のアルバム『何度でも新しく生まれる』で14年振りに再始動し、さまざまなコラボレーションで話題を呼んだ大沢伸一のソロ・プロジェクト、MONDO GROSSO。彼が2月9日に8thアルバム『BIG WORLD』をリリースする。前作同様、さまざまなボーカリストが集うこのアルバムの音楽的な側面を、制作拠点となるスタジオTOMIGAYALOUNGEにて話を聞いた。

Text:Susumu Nakagawa Photo:AmonRyu

ベースがトニックを押さえるっていうのがあまり好きじゃない

タイトルを見てまず目に飛び込んできたのは、「IN THIS WORLD feat. 坂本龍一 [Vocal:満島ひかり]」です。

MONDO GROSSO 坂本さんにオファーしたところ、療養中なので自宅でできる範囲でならOKということでしたので、ピアノの録音データとMIDIデータをいただいて作業しました。曲の後半に登場するボーカルへのカウンター・メロディがとても気に入っています。自分は、中学生のころ彼に大きな影響を受けて音楽を始めただけに、とても感慨深い曲になりました。

 

ピアノのMIDIデータ部分に用いたソフト音源は?

MONDO GROSSO ABLETON Liveに付属するPack(サウンド・ライブラリー)のUpright Pianoを採用しました。ただ、自分でも覚えていないくらい複雑なトリートメントを施しているので、ちょっと特殊な音になっています。サステイン・ペダルを踏みっぱなしの設定にしたり、リリース成分だけに別エフェクトをかけたりして実験した結果、あの音に落ち着いたと言えますね。XLN AUDIO RC-20 Retro Colorをインサートして、ピッチを微妙に揺らしてもいます。

 

空間系エフェクトが深くかかったボーカル処理についても気になります。

MONDO GROSSO そうですね、ボーカルにはかなり深めに設定したリバーブを2段掛けするスタイルが、最近の自分のスタンダードです。一番難しかったのは、ピアノとボーカルの音量バランス。両者はユニゾンしているので“どちらが手前で奥か”みたいな部分で悩みましたが、最終的には自分が聴いて心地良いポイントで落ち着かせました。

 

ボーカルのEQ処理についてはいかがでしょう?

MONDO GROSSO どちらかというと、できるだけオーバーEQにしないように心掛けています。ローカットを入れてブライトに声を仕上げるのは近年の主流かもしれませんが、今回はそこまで気にしてやっていません。太い声は太く、細い声は細く、で良いような気もするのです。

 

ピアノとボーカル以外には、ストリングスやベース、ドラムなどがありますが、アレンジは全体的にかなりシンプルになっていますね。

MONDO GROSSO 空間を意識したアレンジです。ストリングスは、麻布にあるLAB recordersで収録しました。ストリングスのソフト音源を混ぜていますが、基本的には生音を前面に出すようなミックスにしています。ベースは“ワン・パターンのリフで行きたい”というイメージが最初からあったので、コード進行が変わってもリフはできるだけ変わらないように工夫しているんです。どんなコードが鳴っていてもベースがトニックを追って行っている以上は、それが基となるので、上に来る音も決定されてしまう。自分はそういうところからの解放をずっと目指しているんです。ベーシストですが、いわゆるベースがトニックを押さえるっていうのがあまり好きじゃないんですよ。

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MONDO GROSSOの制作拠点となるスタジオ、TOMIGAYALOUNGE。APPLE Mac Proをメイン・マシンとし、DAWはABLETON Liveを使用する。オーディオI/OはDante対応のFOCUSRITE RedNetで、メイン・デスク左手にはリズム・マシンのROLAND TR-808のほか、プリアンプのAMEK System 9098 EQ、コンプレッサーのTUBE-TECH CL 1BとEMPIRICAL LABS Distressor EL8、EQのKUSH AUDIO Clariphonicなど、複数のアウトボードを格納するラックを配置。この上にはPIONEER DJのCDJセットがスタンバイする。一方、デスク右手にはGIZM0X X0X-Proや、ROLAND TB-303 Devil Fishといったアナログ・シンセが置かれている

RXで抜き出したドラムをオケに混ぜると意外と奇麗になじんで聴こえる

「B.S.M.F [Vocal:どんぐりず]」では、カッティング・ギターとリズム隊のグルーブが“MONDO GROSSOサウンド”をほうふつさせます。

MONDO GROSSO ギターとベースは自分が弾いていますし、シンセとドラムも自分で打ち込んでいます。そういう意味では、1990年代のMONDO GROSSOサウンドを1人で再現しているとも言えますね。

 

ドラムは、打ち込みと生音のバランスが絶妙ですね。

MONDO GROSSO ドラムはサンプル素材のほか、NATIVE INSTRUMENTS Studio Drummerなどのドラム専用ソフト音源を3種類くらい使っています。ディスコっぽい音色のドラムをイメージしていますね。最近ドラム・フィル部分でよくやるのは、ある曲のドラムをIZOTOPE RXで抜き出して用いることです。音質はあまり良くはないのですが、オケに混ぜると奇麗になじんで聴こえるんですよ。皆はあまりやってないかもしれないけど意外と使えます。生ドラム感が出ているのは、こういった理由もあると思いますね。ファンキーなグルーブも含めて、この曲は大好きな曲の一つです。

 

 

インタビュー後編(会員限定)では、 引き続き『BIG WORLD』の収録曲を深掘りしつつ、最近導入したというハードウェアやスピーカーの魅力を語っていただきました。

Release

『BIG WORLD』
MONDO GROSSO
RZCB-87060(エイベックス)

Musician:大沢伸一(g、b、prog)、坂本龍一(p)、満島ひかり(vo)、ermhoi(vo)、どんぐりず(vo)、CHAI(vo、g、ds)、suis(vo)、齋藤飛鳥(vo)、中納良恵(vo)、田島貴男(vo)、PORIN(vo)、中島美嘉(vo)、RHYME(vo、prog)、石坂慶彦(p、k)、他
Producer:大沢伸一
Engineer:橋本まさし、今本修、他
Studio:Sound DALI、prime sound studio form、LAB recorders、他

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