Buffalo Daughter インタビュー【前編】〜セッションを元に制作した新作『We Are The Times』

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今年、結成28年目を迎えたBuffalo Daughter。約7年ぶり、8作目となるアルバム『We Are The Times』を9月にリリースした。シュガー吉永(写真左)のソリッドなギター、大野由美子(写真右)の分厚いシンセ・ベース、山本ムーグ(写真中央)の強烈なボーカルなどBuffalo Daughterらしさがありつつも、これまでに無い新たな音像となっているのを強く感じ取れる。そのサウンドの秘けつは一体何なのだろうか。メンバー3人と、今作のミックスを手掛けたZAK氏にリモートでインタビューを行った。

Text:Satoshi Torii Photo:Enno Kapitza / Kosuke Kawamura(メインカット)、Great The Kabukicho(※)

曲の原型が変わるほどに編集

前作『Konjac-tion』のリリース以来、約7年ぶりとなるアルバムです。制作はいつごろ始まったのでしょうか?

シュガー 前作から3、4年たった2017年にそろそろ何かを作ろうということで、月に1回必ず集まってセッションをしようと決めました。ただ、私たちだけでやっても刺激が無いので、その前にDOMMUNEで一緒にやってみて良い感触だった中原昌也君とセッションしようと。まずは実験的に始めてみようということですね。

 

セッションでの中原さんの印象はどうでしたか?

大野 彼はいつもモジュラー・シンセを使って演奏しているんですが、モジュラー・シンセって何が起こるか分からないところがあるじゃないですか。そういう面白さもあるんだけれど、中原くんから出てくる音は全部筋が通っているというか、音が美しいなと感じました。すごく楽しいセッションだったっていうのを覚えています。

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2017年4月、レコーディング初日に行われたセッション。写真右の中原昌也が操るのは、ラックにセットされたモジュラー・シンセ類やリズム・ボックスのKORG Rhythm 33など。写真左はサポート・ドラムの松下敦

セッションは毎回ZAKさんが録音していたのですか?

シュガー ZAKが居なかったときに葛西敏彦君が録ってくれたこともあります。エンジニアが誰も居なくて、セッションの動画だけ撮ったものを私が編集してYouTubeにアップしたこともありました。

ZAK st-roboのミーティング・ルームでも録音していたんじゃなかった?

シュガー それは次の年の夏。そのときに奥村建君が来たんですよ。ZAKは居なかったけれど奥村くんと大野と私の3人で、ボコーダーのEMS Vocoder System 2000を使ってダビングしたりしていました。

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(※)2017年5月、レコーディング2日目のシュガー吉永のエフェクター類。DIGITECH Whammy WH1、STRYMON Timeline、LINE 6 DL4など、さまざまなエフェクターがセッティングされている

奥村さんが今作では6曲、“コンピューター”なる担当パートでクレジットされています。アルバム制作において、どのような役割を担っていたのでしょうか?

大野 最初のセッションのころにはまだ参加していなくて、曲を仕上げていく段階で加わってくれました。彼はABLETON Liveを使っていて、楽器を演奏する人じゃないから、マニピュレーター的な役割でもありつつ、私たちがこういうのを入れたい、こういう音が欲しいって言うと次々に新しい音を提示してくれたんです。ちょっと煮詰まったときには彼の方から音色を提案してくれました。出てきたものを私が鍵盤で弾いてみて録音する、ってことが多かったかな。

シュガー セッションはインプロで、一日中録音を回しっぱなしにしています。後から聴いてどういうふうに発展していこうかを考えるんですけど、奥村くんは録音した素材からピックアップして編集していく作業の中で、ものすごく大きな役割を担ってくれています。コンピューター・マジックですらすらと音を出してくれたり、いろいろとやってくれました。

 

まさに “コンピューター”という役割なのですね。

シュガー 楽器を演奏するのは私たちだから、奥村くんは“いかに演奏せずに音楽にしていくかということをやりたい”って言っていました。私たちがセッションで弾いた素材を、形を変えて提示してくれたんです。それがまた私たちの刺激になってさらに違うフレーズを弾いたりして、曲を発展させました。今までずっと私たちだけで作っていたので、編集の過程で彼が居てくれたのはすごく大きかったと思います。

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2018年7月、st-roboのミーティング・ルームにて行われたダビングの模様。写真左が奥村建で、この時期からの参加となる。写真中央、大野由美子の前にあるNATIVE INSTRUMENTS Maschineは奥村が持参したものとのこと

奥村さんが打ち込みのトラックを作ることもあったのでしょうか?

大野 そこはそんなに頼っていたわけではないです。弾けるものは弾いちゃおうという考え方なので、打ち込みでやるっていう感覚があまり無いんですよ。弾くよりもコンピューターから出した方が格好良くなるときもあるので、打ち込みの部分もあります。でもほとんど手弾きが多いかな。

シュガー ほとんど手弾きです。手弾きしたものをいかに直すかっていう。直さないけどね(笑)。

 

機材を使いつつも、セッションの感覚は残っていると。

シュガー 最初のセッションで出来上がった曲からドラムのトラックだけを抜き出すとか、原型が変わってしまっている曲も多いです。例えば「Global Warming Kills Us All」は、足したり引いたりひっくり返したり、ものすごくいじっています。最初にできた曲は良いんだけど、もっと良くしたいっていう気持ちですね。曲の構成とか、そもそもの成り立ちまで考え直したこともありました。変わっていく過程がすごく重要だし、一番大変だったかなって思います。

 

奥村さんは事実上、今回の作品におけるメンバーとも言える存在なのかと思いました。

シュガー そうですね、やっぱり彼が居ないとこうはならなかったので。

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2018年8月、st-roboミーティング・ルームにてセッティングされたFARFISA C2とEARTHQUAKER DEVICES Pyramids。「Global Warming Kills Us All」で使用したが最終的に録音したものは採用しなかった。このようにレコーディングしたが使われなかった素材が膨大にあるとのことだ

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st-roboミーティング・ルームに用意されたエフェクト・ハードウェア。EMS Vocoder System 2000、ROLAND SDD-320、MXR Pitch Transposer。「Global Warming Kills Us All」のボコーダーはVocoder System 2000を使用したもの

 

 

インタビュー後編(会員限定)では、 山木秀夫とのセッションを振り返りつつ、今作での新しい試みやZAK氏のミックスについて話を伺いました。

国内リリース・ツアー『We Are The Times Tour』を開催!

 ニュー・アルバム『We Are The Times』リリース・ツアーとなる 『We Are The Times Tour』の開催が決定! 2022年1月28日(金)東京恵比寿LIQUIDROOMを皮切りに、全国5都市で行われる。

[日程]2022年1月28日(金)
[開場/開演]19:00/20:00
[料金]ADV. ¥4,500 + 1D
[会場]LIQUIDROOM
[一般発売]11月13日(土)10:00〜 e+/ぴあ/ローソン

そのほかの会場や詳細については、Buffalo Daughter official HPまで:

Release

『We Are The Times』
Buffalo Daughter
Buffalo Ranch/Musicmine:MMCD-20040

Musician:シュガー吉永(g、vo、syn)、大野由美子(b、vo、electronics)、山本ムーグ(turntable、vo)、松下敦(ds)、山木秀夫(ds)、中原昌也(noise)、奥村建(computer)、他
Producer:Buffalo Daughter
Engineer:ZAK、葛西敏彦、シュガー吉永
Studio:st-robo、Metal Base

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