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ラインアレイの特性を生かしたポータブルPAシステム=YAMAHA Stagepas 1K

第1回 近藤祥昭氏が語る製品の基本仕様

YAMAHAから8月に発売されたStagepas 1K(オープン・プライス:市場予想価格120,000円前後/1セット)。12インチ径サブウーファーと中〜高域再生用のラインアレイ・スピーカーにミキサーを組み合わせたポータブルPAシステムで、中小規模の音楽ライブから各種イベントでの拡声、音楽再生までさまざまなシーンに対応する。この連載ではStagepas 1Kの有用性に迫るべく、さまざまな切り口からチェックを行う。初回の今月は、サウンド・エンジニア近藤祥昭氏に製品の基本的な仕様を解説してもらおう。

▲Stagepas 1Kについて解説してくれた近藤祥昭氏。大友良英、カヒミ・カリィ、非常階段などを手掛けてきたサウンド・エンジニアだ ▲Stagepas 1Kについて解説してくれた近藤祥昭氏。大友良英、カヒミ・カリィ、非常階段などを手掛けてきたサウンド・エンジニアだ

Bluetooth対応の5chミキサー
埋もれた音を際立てられるワンノブEQ

まずは製品の構成を見ていく。音声入力部からたどると、内蔵のデジタル・ミキサーにはモノラル3系統+ステレオ1系統の入力端子がスタンバイ。モノラルの入力は、マイク/ライン・インが1つとマイク/ライン/Hi-Zインが2つというラインナップだ。ステレオの方はライン・インL/Rに加えBluetooth受信機を有するため、対応機器の音声をワイアレスで立ち上げることも可能。各インプットにはレベル・ノブ(出力音量)やワンノブEQが備えられ、モノラル入力は内蔵のSPXリバーブへのセンド・ノブも装備する。「ワンノブEQは中央に合わせるとフラットで、左に回せばローカット、右に回すと低域と高域が持ち上がったバタフライ・カーブになります」と近藤氏。

このバタフライ・カーブは、音響の専門知識を持たないユーザーのこともよく考えた設定だと思います。ありがちなのは、あるパートが埋もれているからと言って基音を上げると、ほかのパートが聴こえづらくなり、今度はその基音を上げて……とやっていった結果、トータルの中低域〜中高域が過剰になってしまうという状態。埋もれさせたくないなら、基音ではなく低域と倍音の成分を少し足すのが有効だったりします。このバタフライ・カーブも、そうやって使うものだと思うんです。かけると全体の音量(チャンネルのレベル)が上がるため、その分をレベル・ノブで下げるのはお忘れなく。マスターの“MODE”というツマミでも同様のイコライジングが行えますが、ブロック図によるとEQとマルチバンド・コンプを併せたエフェクトのようですね」

▲ミキサーのパネル。各チャンネルにレベル・ノブやワンノブEQがあり、ch1~3にはリバーブへのセンド・ノブ、ステレオ・チャンネルにはライン・イン(ステレオ・ミニ)やBluetoothペアリング・スイッチを備える。Bluetooth機器からの信号は、端子に入力された信号にミックスして出力可。マスターには用途に応じて音の特性を調整できるMODEノブなどがある ▲ミキサーのパネル。各チャンネルにレベル・ノブやワンノブEQがあり、ch1~3にはリバーブへのセンド・ノブ、ステレオ・チャンネルにはライン・イン(ステレオ・ミニ)やBluetoothペアリング・スイッチを備える。Bluetooth機器からの信号は、端子に入力された信号にミックスして出力可。マスターには用途に応じて音の特性を調整できるMODEノブなどがある

MODEツマミの上には、リバーブ・タイプ(ホール、プレート、ルーム、エコー)の選択とリバーブ・タイム(残響の長さ)の調整を一括して行えるノブが備わっている。
「左に回し切った状態がタイム最短のホール・リバーブで、右に回していくとタイムが長くなります。そのまま回し続ければプレートに切り替わり、タイムもまた短いところからの出発。ルームやエコーに切り替わる際も同様です。本機をステレオ・ペアで使用すると、左右の広がりを感じられやすいでしょう。また、ステレオならマイクを最大6本接続できるし、専用のアプリを使うことで定位の調整も可能です

▲音声入出力。ch1にマイク/ライン・イン、ch2と3にはマイク/ライン/Hi-Zイン(いずれもXLR/フォーン)が用意され、ステレオ・チャンネルにはライン・インL/R(フォーン)がスタンバイ。そのほかステレオ・ペアで使用する際に必要なリンク・インおよびアウト、モニター・アウト(いずれもXLR)などがある ▲音声入出力。ch1にマイク/ライン・イン、ch2と3にはマイク/ライン/Hi-Zイン(いずれもXLR/フォーン)が用意され、ステレオ・チャンネルにはライン・インL/R(フォーン)がスタンバイ。そのほかステレオ・ペアで使用する際に必要なリンク・インおよびアウト、モニター・アウト(いずれもXLR)などがある

会場後方まで大きな音を届けられ

天井などからの反射の抑制も可能

続いてはアウトプットの部分について尋ねてみよう。
「119dBという最大出力音圧などから、アコースティック・ライブを縦6間(約10.8m)×横4間(約7.2m)以内の空間で行うような現場に向くでしょう。ロック・バンドのライブにはより大きな音量が求められますが、歌とアコギにカホンを加えたような編成であれば十分な音量感を得られると思います。また、ジャズ・ライブで客席向けのPAと演奏者のモニターを兼ねる用途などにも良さそう。2台用意し、1台をアップライト・ベースのアンプとして使用すれば、ベーシストの耳の高さに中〜高域用のスピーカーを設置できるため、演奏のタッチまでモニターできると思います。また、その中〜高域用スピーカーはラインアレイと呼ばれるタイプなので、ハウリングの面でも有利でしょう

近藤氏はStagepas 1Kの中〜高域用スピーカーについて「ラインアレイの特性がきちんと出ています」と言う。
「1.5インチのユニットを縦に10基並べた設計で、その範囲の分の線状音源が生成されます。一般的なポイント・ソースのスピーカーに比べて距離による音量の減衰が小さく、理論上は10m離れた場所で20dBほど減衰するところを10dBくらいに抑えられる。つまり会場の後方にも、より大きな音量を届けられるんです。また垂直方向の指向角が30°と鋭いため、天井などからの反射が減ります。水平方向に関しては170°と広く、部屋の長辺側にステージを設置する会場ではエリア・カバーの面で有利です。クロスオーバー周波数が240Hzなので、それより上の帯域について、こうしたラインアレイの恩恵が生かされることになりますね」

近藤氏はStagepas 1KをセルフPA向け、つまりミュージシャンや音響専門でない店舗スタッフが自らPAするのに向いた製品と見ているが、ラインアレイの部分を拡張できれば活用の機会がさらに増えそうだと語る。
「現状はラインアレイが1セットにつき1台のみで、高さを稼ぐ際にはスペーサーを下にかます仕様ですが、その部分にもう1台ラインアレイをセットできれば、垂直方向のカバー・エリアを拡大できます。スピーカー手前に着座しているお客さんもカバーしやすくなるので、エクステンション用のラインアレイが発売されるとなお良いなと思いますね」

▲付属のケースに収納したところ。手前のポケットにラインアレイとスペーサー、中央にサブウーファーが入る。コンパクトなので運搬も容易! ▲付属のケースに収納したところ。手前のポケットにラインアレイとスペーサー、中央にサブウーファーが入る。コンパクトなので運搬も容易!
▲iOS/Android対応のリモート・コントロール用アプリStagepas Editor。アプリからの遠隔操作は、デバイスとStagepas 1KをBluetooth接続して行う。カフェ・ライブなどに使う場合、お店のスタッフがバー・カウンターからミキサーを調整するようなオペレートも実現できる ▲iOS/Android対応のリモート・コントロール用アプリStagepas Editor。アプリからの遠隔操作は、デバイスとStagepas 1KをBluetooth接続して行う。カフェ・ライブなどに使う場合、お店のスタッフがバー・カウンターからミキサーを調整するようなオペレートも実現できる