ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「アコースティック・コンディショナー」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回レビューするのは、部屋の音響を調整するアコースティック・コンディショナー、RWL-3(写真左)とWS-1(同右)だ。

第19回「アコースティック・コンディショナー」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説


ルーム・チューニング材には、大きく分けて吸音系と反射(拡散)系が存在します。それらを使った結果、吸音し過ぎてきゅうくつな音になったり、残響音が増え過ぎて定位があいまいになったという経験を持つ方は多いかと思います。

ACOUSTIC REVIVEのRWL-3WS-1は、理想的な吸音と拡散を実現する唯一のルーム・チューニング材です。RWL-3は拡散、WS-1は吸音を主な目的にしたものですが、共通するのは表面に天然シルクを用いていること。天然シルクはあらゆる繊維の中で唯一、糸の太さがランダムです。このため、表面のシルク生地だけでも抜群の拡散効果を発揮することが可能。また天然シルクは、一般的なルーム・チューニング材に使われる化学繊維のような固有の帯域の偏りや、ドライな音色/質感になることがなく、極めて自然で滑らかな音色と質感を実現。モニター・スピーカーはもちろん、録音ブースに使用すれば、これまで実現できなかった極めて質の高い楽器や声の収音が可能となります。

<Price>
RWL-3(写真左):88,000円/1台
▪外形寸法:665(W)×1,160(H)×90(D)mm
▪︎重量:2.6kg
▪︎付属品:自立用台座、壁かけ用金具
※高さなどの特注可
WS-1(写真右):15,800円/1枚
▪外形寸法:290(W)×32(H)×290(D)mm
▪︎重量:180g

Cross Review

Guitarist/Producer
鳥山雄司
TORI<Profile>ギタリスト。TBSテレビ番組『世界遺産』のテーマ曲「The Song of Life」など多数作曲。アレンジャー/プロデューサーとしては、葉加瀬太郎らを手掛ける。

設置位置などで音色が変化
楽器のレコーディングに活用

僕は、RWL-3とWS-1の両方をプライベート・スタジオで活用しています。まずRWL-3は、モニター・スピーカー用のチューニング材として使うというより、楽器をレコーディングする際の音色調整に使っているんです。例えばアコースティック・ギターを録る場合、ボディの横に立てたり、座った状態で背中の後ろに設置したりすると、音が明らかに変わります。ラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクでアコギを収めると、録り音の超低域が膨らみ過ぎてしまうことがありますよね。そうしたときにRWL-3を立てると、下の方がまとまってくれる印象です。低域に限らず高域がまとまる場合もあるし、変化の仕方はさまざまなので、いつもベストなポジションを探して設置していますね

葉加瀬太郎さんをプロデュースした際に、同じ部屋で彼のバイオリンと僕のギターを録音したことがあったんですが、そのときにも重宝しました。せーので録らなければならないものの、ミックスのことを考えると各楽器をある程度アイソレートしせねばならず、試しにRWL-3を立ててみたんですね。そしたら、どちらの楽器も非常にうまくまとまってくれて、扱いやすいサウンドが得られました。場合によっては音がこぢんまりしてしまうこともあるのですが、それも演奏の仕方や設置ポジションによりけり。得意なソースとしては、どちらかというと大音量のものよりは、アコースティックな楽器に向くと思いますね。

WS-1については、10枚くらい所有しています。この製品は、ある程度の枚数をそろえた方が、効果を発揮すると思います。使い方は、部屋の中で低音などがたまりやすいポイントに集中的に張るんです。効果はRWL-3とよく似ていて、音の暴れを抑えるイメージ。枚数や設置場所によって、音のニュアンスが変わってくると思います。

僕はルーム・チューニング・ツールとして、他社の吸音材なども使っているのですが、ACOUSTIC REVIVEの製品はもっと繊細なイメージ。また、一概に“こういう使い方が良い”と言えないところが魅力です。音楽が作りやすくなるので、レコーディングの良き相棒ですね。

Recording/Mixing Engineer
ニラジ・カジャンチ
NJ<Profile>エンジニアとしてNYやLAで活動し、ボーイズⅡメンやマイケル・ジャクソンなどに携わる。日本へ移住後は三浦大知や[Alexandros]、アニメ・ソングなども手掛ける。

デッドでもなくライブでもない
“リアルな音”が得られる

ACOUSTIC REVIVEのRWL-3アコースティック・コンディショナーは、よくある普通の音響パネルではありません。何人かの友人にオススメされたので、僕も自分のスタジオNK SOUND TOKYO “STUDIO GOLD”に導入してみました。

まずは見た目が良い! インテリアとしても最高だし、さわやかで癒されます。スタジオに設置しているだけで、気持ち良くなるんです。後から知ったのですが、表面にトルマリンを含むシルク素材を使っていたり、トルマリンの入った特殊発泡材によるマイナス・イオンの効果があるそうです。僕はそれを気持ち(心)で感じていました。

レコーディングの現場でも、いろいろと試しています。アコースティック・ベースとピアノの録音のときには、必ず使っているんです。音がより“リアル”に聴こえますし、部屋の中での反射をコントロールしてくれますので、マイク乗りがかなり良くなりました。僕はACOUSTIC REVIVEに頼んで、カスタムで大きなサイズ(高さ2m)のものを作ってもらいました! これを使用すると、例えば多くのバイオリニストの方が楽器の鳴りの違いを感じてくれます。

NK SOUND TOKYO にあるミックス・ルームの“STUDIO SILVER”では、モニター・スピーカーFOCAL SM9の裏にカスタム・サイズのRWL-3を2台置いています。サウンドがデッドになるわけでもないし、ライブになるわけでもなく、表面のシルク素材がちょうど良い“リアル感”を出してくれるので、よくその部屋でミックスを行っている外部のエンジニアの方も大喜び! 6畳しかない部屋なのに、全くそのサイズを感じさせない音になっています。10畳の部屋にも負けないと思います。ACOUSTIC REVIVEのおかげで、たくさんのアーティストの方々に喜んでもらえています。

RWL-3は、価格以上の効果があるので、試したことのない人にはぜひ使ってみてほしいと感じています。元の状態には絶対に戻れなくなるでしょう! あと、空気清浄機を購入するよりも、部屋の空気が奇麗になると思います。

<製品概要>
ACOUSTIC REVIVE RWL-3 (アコースティック・コンディショナー)
ACOUSTIC REVIVE WS-1 (アコースティック・コンディショナー)

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2018年10月号からの転載となります)