オノ セイゲン〜音のプロが使い始めたECLIPSE TDシリーズ

ECLIPSEでないと立体音響は作り出せない

タイムドメイン理論に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年に最初のモデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を獲得。その後モデル・チェンジやラインナップの拡充が続けられ、2014年に登場したTD-M1はアンプやDAコンバーターを内蔵することで、これまで以上に幅広い層から人気を博している。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロに語っていただくこのコーナー、今回登場していただくのはオノセイゲン氏だ。ECLIPSEのスピーカーが発売された当初から愛用しており、自身のスタジオ=サイデラ・マスタリングでは10.1chのサラウンド・システムをすべてTDシリーズで構築している。氏が現在力を入れているイマーシブ・オーディオ(没入型音響)にとって、TDシリーズがいかに不可欠なものなのかをたっぷりと語っていただいた。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号から編集・転載したものです。

スタジオ内にバーチャルな音響空間を構築

サイデラ・マスタリングは2000年に現在の場所へ移ったが、その際、マスタリングだけでなくレコーディングもできるよう設計に工夫を凝らしたという。

「レコーディングにとって大事なのは空間の容積なんです。ここは土地が狭いので横に広げることはできなかったから、地下を深く掘って上下方向に広げることにした……とてもお金がかかったんだけどね(笑)。そうやって高さを稼いで“上からの響き”が実現できるようにしたんです。響きがいい空間って教会やホールが代表格だけど、それは上からの響きがあるからなんです」

上からの上質な響きを得るため、オノ氏は高さを稼ぐだけでなく、さらにある仕掛けを施した。

「12面体スピーカーを天井から4本つるし、サンプリング・リバーブで生成したさまざまな場所の残響を再生できるようにしたんです。それによって、このスタジオ内に教会やホールなどの空間をバーチャル・リアリティ的に再現できる……つまりアーティストやエンジニアの望み通りの空間で録音することが可能になったわけです。大事なのはここで録音する際、演奏者にはヘッドフォンでなく耳で直接響きを感じてもらうこと。それがそのまま演奏に影響しますからね。先日もチェリストのジャキス・モレレンバウムが来たんですけど、弾き始めたらハマっちゃって40分間も演奏しっ放しでした(笑)」

正確な再生をするからスピーカーが消える!

ジャキス以外にも多くのアーティストがサイデラを訪れ、彼らが響きに酔いしれながら奏でるサウンドを、オノ氏は空間ごと収録し続けている。

「収録にあたっては“ここがその場であるように”録っています。天井からマイクを4本つって残響成分をとらえ、それに加え楽器にオンマイクを立てるやり方です」

このようにして収録した素材を、オノ氏は10.1chのマルチチャンネル作品として仕上げている。その際のモニターとして活躍しているのが、TDシリーズによるサラウンド・システムだ。

「10.1chというのは、5.1chサラウンドを基本に、フロントL/RとサラウンドL/Rそれぞれの上方に1本ずつスピーカーを足し、さらに“Voice of God”と呼ばれるリスナーの真上に1本用意するシステムです。音楽によってはサブウーファーや真上を使わなかったりするので、僕の考える立体音響にとって必須なのは下のレイヤーで5.0ch、上のレイヤーで4.0ch、計9.0chですね」

先に話のあったジャキス・モレレンバウムの録音をこのシステムで体験すると、“イマーシブ”という言葉の通り演奏者の居る空間に自分が放り込まれるようだ。

「スピーカーの存在が消えるでしょ? それが実現できるのはECLIPSEのスピーカーが波形を正確に再生しているから。ECLIPSEのスピーカーでなければ、こんな立体的な空間にはなりません」

フルレンジであるがゆえパワー不足を指摘されることもあるTDシリーズだが、10.1chのシステムでは体中を満たさんばかりの音量を再生してくれるのも驚きだ。

「1980年代にヒュー・パジャムがフィル・コリンズと作り上げたビッグなドラム・サウンドは、ルーム・マイクにコンプレッションをかけることによってできていましたよね。響きが大きい……ダイレクト音が相対的に小さいとビッグ・サウンドになるということなんです。それをステレオでなくマルチチャンネルでやれば音量感はもっと出る……“盛り上がるね!”となるんですよ」

海外では既にDOLBY ATMOSSやAuro-3Dによるマルチチャンネルの音楽作品が多くリリースされている。その制作時のモニターとして、また再生環境としてTDシリーズの存在価値はさらに高まっていくことだろう。

【PROFILE】作曲家/レコーディング&マスタリング・エンジニア/サイデラ・パラディソCEO。1978年にエンジニアとしてキャリアをスタートし、坂本龍一、ラウンジ・リザーズ、アート・リンゼイといったビッグ・ネームを多く手掛ける。一方で作曲家としても活躍しており、1988年リリースの『COMME des GARÇONS SEIGEN ONO Vol.1』『同Vol.2』はマスター・ピースとして知られている。

TD-M1

TD-M1_BK_LR_img_white_03 ■スピーカー・ユニット:グラスファイバー製8cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:70Hz~30kHz ■定格出力:20W(T.H.D 1%/片チャンネル駆動時) ■最大出力:25W(T.H.D 10%/片チャンネル駆動時) ■高調波ひずみ率:0.08%(1kHz/10W出力時) ■S/N:90dB以上 ■分離度:60dB以上 ■入力感度:950mVrms(20W出力時) ■入力インピーダンス:10kΩ ■消費電力:10W ■待機電力:2.7W(ネットワーク・スタンバイ時)、0.5W以下(完全スタンバイ時) ■外形寸法:155(W)×242(H)×219(D)mm ■重量:約5.3kg(ペア) ■価格:125,000円(ペア)

問合せ:富士通テン http://www.eclipse-td.com/

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