ビート・メイカー発掘インタビュー〜アズ・ワン【2】

「エレクトリック・ミュージックの中のジャズやソウルの要素を知らしめていきたい」(カーク・ディジョージオ/1998年インタビュー)

デトロイト・テクノに対するロンドンからの返答として、筋の通った活動を続けているアズ・ワン=カーク・ディジョージオ。ここでは1997年に当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったMO'WAXより『Planetary Folklore』をリリースした際のインタビューを再録する。さまざまな活動を続ける中で、2006年には『Planetary Folklore 2』を発表するなど本人にとっても思い入れが強いと思われる同作について、制作機材への言及も含めて語っている。


[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン1998年2月号のものです] 
Interpretation:Kayoko Takahashi


ジャズ/ソウルのテイストを含む、洗練されたエレクトリック・ミュージックを作り続けているアズ・ワンことカーク・ディジョージオ。ベルギーのR&SやイギリスのCLEAR、カール・クレイグの運営するPLANET Eなどから精力的にリリースを続けてきた彼が、MO'WAXよりニュー・アルバム『Planetary Folklore』を発表した。数々の生楽穏やボーカルを取り込み、これまで以上にリラックスしてジャズと対峙(たいじ)する彼の姿が見えてくるような極上のトラック集である。そのカ強く心地良いサウンド的制作遜程を聞くため、彼に電話インタビューを読みた。



昔のジャズの変拍子の伝統を自分なりに引き継いでいきたい



■何曲かで流れているオーボエ、ギター、サックスなどの生楽器はサンプリングしたものですか?


ディジョージオ いや。このレコードのために人が演奏した楽器で、それをサンプリングすることはなかった。ほかから取ったサンプルは使ったけどね。


■リズムも生っぽいですが、プログラミングにはドラムンベースの影響が感じられますね。


ディジョージオ 実際影響は受けているよ。3 年くらい前によく聴いていた。ロニ・サイズのジャジィなアルパムも良かったな。彼らにしかできないことをやって、着実に進歩しているよね。


■始まりと終わりが見えない複雑なビートがよく聴かれますが、これは意図して入れたものですか?


ディジョージオ 変拍子を試すのが好きなんだ。5/8とか7/8とか5/4とかね。ドラムンペースでさえ、その点では4/4にとどまっていて変化に乏しい。テクノのほとんどはそうだよね。僕はジャズ・ミュージシャンが1960年代によくやっていたような変拍子の伝統を、自分なりに引き継いでいきたいんだ。


■ルカ・サントリッチのボーカル曲「Away From All Of This」が入っていますが、ボーカルものとインストで作曲方法は変わりますか?


ディジョージオ いや、それはない。その曲はボーカルものにしようと早いうちから決めていて、それ用のアイディアを持って取りかかったけど、進め方は同じだ。できたボーカるは演奏に合わせるため、DIGIDESIGN Pro Toolsで細かいエディットはするけどね。

■随所に微妙で面白いパンニングが施されていますが、どうやって作業したのですか?


ディジョージオ 長年の実験のたまものだな。ときにはごく初期のジャズ・アルバムでやっていたように、すべてのサウンドを片方のチャンネルに固めてしまうこともある。とにかくミキシングの実験は徹底的にやった。当たり前のアルバムにはしたくなかったからね。



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アズ・ワン
『Planetary Folklore』

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