ここからは、『ジェミニ・ライツ』に収録されている「バッド・ハビット」のベース、ギター、ボーカルのミックスについてピックアップ。「バッド・ハビット」にはこれらのパートのほかに、ドラムとシンセが数トラックあるくらいだったとのことで、“ギター以外はすべてギターをサポートするためのもの”と語るポーグ氏は、どのような処理を行ったのか見ていこう。
Pick up Track|「バッド・ハビット」from『ジェミニ・ライツ』
Release
『ジェミニ・ライツ』
スティーヴ・レイシー
ソニー
Musician:スティーヴ・レイシー(vo、g、b、prog、他)、フーシー(vo)、ジョン・キャロル・カービー(org、syn)、イーライ・ライズ(p、k、syn)、カリーム・リギンス(ds)、クリスタル・トーレス(horns)、バレリー・レイシー(vo)、バリン・スポッツビル(vo)、ベイジ・ウェブ(vo)、エイジャ・レイシー(vo)
Producer:スティーヴ・レイシー、ダヒ、マット・マーシャンズ
Engineer:ニール・H・ポーグ、カール・ウィンゲイト
Studio:The HotPurplePettingZoo、The Village、他
Bass|FAIRCHILD 660で丸みのあるサウンドに
ベースには、サウンドに丸みを持たせる用途としてUNIVERSAL AUDIO FAIRCHILD 660を使用。その後段にWAVES SSL EV2 Channelを挿し、EQで3kHz辺りを若干持ち上げるなどの処理を行っている。
その次に挿したMcDSP CompressorBank CB101は、普段はあまり使用しないプラグインとのこと。使い慣れていないものをあえて活用するのもポーグ氏流だ。ベースの処理については「最近はベースをひたすらデカくすることが求められる。まったくヒップホップの時代だよ。みすぼらしいローエンドは絶対に許されないからね」と語る。
Guitar|ギターを“ドライブ”させてエッジさとクランチ感を演出
ギターに使用したWAVES INFECTED MUSHROOM PUSHERは、ポーグ氏お気に入りのプラグイン。ギターを “ドライブ”させるために使用しているそう。「BODYというパラメーターを使うと、サウンド全体の密度を高めてくれる。「バッド・ハビット」のギターでは、エッジ感を少し足すために使ったね。また、コンプのような役割のPUSHは、パンチを出すのに向いていて、ギター全体のクランチ感を増しているよ」とポーグ氏。
その後段に、WAVES SCHEPS 73を使いハイエンドを若干ブースト。主張が激しくなりすぎないように気をつけつつ、少しだけ輪郭を加え、コーラスのKilohearts Chorusを用いている。
平歌とサビのギターは、まとめてAUXトラックにも通している。UNIVERSAL AUDIO API 550Aで200Hz近辺のローをブーストし、Soundtoys Decapitatorでひずませている。
なお3~4トラックあったというシンセにも、INFECTED MUSHROOM PUSHERとAPI 550Aを使用したほか、moogシンセのトラックにはステレオイメージャーのPOLYVERSE INFECTED MUSHROOM WIDERも用いているそうだ。
Lead Vocal|ローファイな曲にはアナログモデリング・プラグインを合わせる
リードボーカルのトラックにはUNIVERSAL AUDIO FAIRCHILD 670をインサート。ポーグ氏いわく「アナログサウンドを求めたからね。かなりローファイな曲だから、その感じをキープしたかったんだ。こういう懐古的なフィーリングがクールなサウンドにつながるんだ」とのこと。
そして、UNIVERSAL AUDIO API 550Aで、200Hzをカットし、5kHzをブースト。
さらに少し明るさを抑えるため、WAVES SSL E-Channelのローパスフィルターを12kHz付近に設定している。
最後にSoundtoys MicroShiftで若干の広がりを加えている。
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