Yackle 〜Novel CoreやGOMESSなどラッパーへの楽曲提供も行うDJ/プロデューサー

Yackle 〜Novel CoreやGOMESSなどラッパーへの楽曲提供も行うDJ/プロデューサー

“あの音は何だったんだろう?”と思わせられるかどうか。それがヒットの明暗を分けるんです

今回登場するのは、関西を拠点に活動するDJ/プロデューサーのYackle。エレクトロニック/ベース・ミュージックを軸に、独自の世界観で音楽を表現しつづける気鋭プロデューサーだ。Novel CoreやGOMESSといったラッパーへの楽曲提供も行っている。これまでリリースしたアルバムには、DÉ DÉ MOUSEや4s4kiなどが客演する。今回、編集部はYackleがヒップホップ・アーティストのYOSHIKI EZAKIとシェアしているという東京の制作スペースに伺い、ビート・メイキングのこだわりを伺った。

【Profile】2000年生まれのDJ/プロデューサー/イベント・オーガナイザー。2015年から作曲活動を開始し、さまざまなアーティストやYouTuberへの楽曲提供を行う。自身がオーガナイザーを務めるイベントでは、中田ヤスタカや☆Taku Takahashiらが登場し、成功を収めた実績を持つ。

 Release 

『O.K. - EP』
ODOKe KAIWAI
(ODOKe Records)

HS8Sでクラブでの“箱鳴り”をイメージ

■スタジオ

 ここは自分が東京に滞在しているときに使用するスタジオで、広さは14畳くらい。開設してから約2年がたちます。マンションの1階と地下1階を借りていて、地下1階が制作スタジオです。ここではビート・メイキングからセッション、レコーディング、ミックス・チェックまでの作業を行っており、ボーカル・ブースも設置しています。普段はこのスタジオと奈良県の実家にあるスタジオを行き来していて、後者にはTASCAMのオーディオ・インターフェースのほか、モニター・スピーカーのKRK Rokit 5、MIDIキーボードのKORG MicroKeyなどを備えていますね。

Yackleがヒップ・ホップ・アーティストのYOSHIKI EZAKIとシェアしているという音楽制作スペース=WJMHスタジオ。地下1階にあり、ビート・メイキングからセッション、レコーディング、ミックス・チェックまで用途は幅広い。デスクの下には、サブウーファーYAMAHA HS8Sの姿が見える

Yackleがヒップ・ホップ・アーティストのYOSHIKI EZAKIとシェアしているという音楽制作スペース=WJMHスタジオ。地下1階にあり、ビート・メイキングからセッション、レコーディング、ミックス・チェックまで用途は幅広い。デスクの下には、サブウーファーYAMAHA HS8Sの姿が見える

オーディオ・インターフェースはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin X。主にボーカル録りに使用するという

オーディオ・インターフェースはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin X。主にボーカル録りに使用するという

スタジオ内に設置された0.5畳ほどのボーカル・ブース。マイク・スタンドにはAKG C414 XLIIをセットしている

スタジオ内に設置された0.5畳ほどのボーカル・ブース。マイク・スタンドにはAKG C414 XLIIをセットしている

■制作スタイル

 基本的には、APPLE MacBook Pro一台で音楽制作を完結できるようにしています。また、MIDIの打ち込みはコンピューターのキーボードで行うことが多く、MacBook Proの内蔵スピーカーでモニターすることもありますね。

アナログ・ミキサーのMACKIE. 402VLZ4

アナログ・ミキサーのMACKIE. 402VLZ4

■DAW

 DAWはABLETON Live。16歳のときから始めたので約7年間使っています。それまではAPPLE GarageBandをAPPLE iPhoneにインストールして使っていました。Liveに移行したのは、当時よく遊んでもらっていたSeihoさんから“周りのビート・メイカーはLiveユーザーが多いから、Liveにしておくと何かあったときに質問できて便利だし、早いうちから慣れておくと後々楽だよ”と言われたことがきっかけ。実際に使ってみると、Liveは直感的に操作しやすいなという印象でした。また、付属のインストゥルメントとエフェクトが充実しているので、購入したその日から制作が完結できてしまうところも魅力だと思います。付属ソフト・サンプラーのSimplerやSamplerは、特にお気に入りです。

デスクの左側には、MIDIキーボードのARTURIA KeyLab 49を設置している

デスクの左側には、MIDIキーボードのARTURIA KeyLab 49を設置している

■モニター・スピーカーとヘッドフォン

 このスタジオでは、YAMAHA HS5とサブウーファーのYAMAHA HS8Sをモニターとして使用しています。HS5はフラットかつ、中〜高域の解像度が高い印象です。主にボーカル処理をするときに活躍しています。また、HS8Sでローエンドのモニタリングもバッチリ。クラブでの“箱鳴り”をイメージしやすいです。ちなみにヘッドフォンはAUDIO-TECHNICA ATH-M50Xがファースト・チョイス。SONY MDR-7506もありますが、こちらはレコーディング時のモニター・ヘッドフォンとして使用しています。

モニターはYAMAHA HS5。Yackleは「ボーカル処理するときには、特に活躍するスピーカーです」と話す

モニターはYAMAHA HS5。Yackleは「ボーカル処理するときには、特に活躍するスピーカーです」と話す

スマホとイアフォンでの最終チェックは欠かせない

■ビート・メイキングの手順

 歌モノの楽曲を作る際は、コード進行⇒アレンジ⇒歌メロの順番が自分の定番です。歌モノでは、ボーカリストによってキーの設定が異なります。つまりキーによって使えるコードも変わってくるため、コード進行から考えるという順番になっているんです。一方、ラッパーへ提供するためのビートを作る際は、ドラム周りから作ることが多いです。これは、僕自身がドラムのアレンジに強くこだわるから。なので、プロセスとしては最初にドラムに取りかかるようにしています。

■Yackleが教える〜ビート・メイキング3つのこだわり

 ボーカルを邪魔しない程度に、耳に残るフレーズやサウンドを入れること。1曲聴き終わったときに“あの音は何だったんだろう?”と思わせたいんです。それができるかどうかが、ヒットの明暗を分けるとも考えています。例えばビートに金属音っぽいパーカッションを加えてみたり、ポップスの中にサイケ・トランスのセクションを取り入れてみたりなどです。2つ目は、可能な場合はドロップを入れること。僕はダンス・ミュージック出身なので、ポップスにもドロップを入れることがあります。ただ普通に入れるだけじゃなく、前後のセクションとの関連性を持たせるためにボーカルのカットアップをドロップに使うといったような工夫もしています。3つ目は、ジャンルレスにすること。UKガラージやトラップなど自分が好む音楽ジャンルを1曲に盛り込みたいんです。これは、リスナーを飽きさせないためのアイディアでもあります。

■音源/プラグイン・エフェクト

 ドラムには、Spliceのサンプル素材を用います。そのほかのパートには、Liveに付属するインストゥルメントをよく使っていますね。サード・パーティ製のプラグインとしては、XFER RECORDS Serumでシンセ・ベースを鳴らしたり、IZOTOPE Ozone 9のImagerでステレオ感を調整したりしています。マスターにもOzone 9を挿していて、まずは自動マスタリング機能のMaster Assistantを試し、その後で自分の好みに合わせて微調整するという流れです。

■ミックスの最終チェック

 近年はモニター・スピーカーだけでなく、iPhoneの内蔵スピーカーとAPPLE AirPodsでも絶対チェックするようにしています。今の学生はスピーカー自体を持っていない人が多いので、この作業は欠かせません。特にTikTokがはやってからは、より一層大事になったなと思います。

■アドバイス

 自分が音楽制作をスタートしたての頃は、理論的な観点から曲を作ることに固執しすぎる傾向がありましたが、実際には直感に従った作曲でも魅力的な音楽を十分に作れることが分かりました。なので皆さんも難しいことを考えすぎず、どんどん自分自身の音を探求し、それを反映させた楽曲をリリースしていくことをお勧めします!

Yackleを形成する3枚

「MORE! MORE! MORE!」
capsule
(Yamaha Music Communications)

 「小学生の頃、ヨーヨーの大会で初めて聴きました。ダンス・ミュージックを知るきっかけになったアルバムです。当時、1日1回はアルバムを通して聴いていました」

 

「MF10 - 10th ANNIVERSARY BEST」
m-flo
(エイベックス)

 「こちらもCAPSULEと同時期に知って、衝撃を受けた作品。さまざまな音楽ジャンルを取り入れるスタイルや、フィーチャリングという概念などを学びました」

 

「MSMSMSM」
ソフィー
(Numbers)

 「作曲を始めた頃に出会った曲で、とても影響を受けています。このエレクトロなテイストをポップスにどう落とし込むか、それを考えながら制作することもありますね」

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