
SHUREの歴史
SHUREは昨年90周年を迎えた歴史あるマイク/オーディオ機器メーカーである。独自の技術によって生まれたUnidyneカートリッジは、それまでのマイクの常識を覆した。Unidyneカートリッジは改良が重ねられ、マイクをスタンドに付けたまま使用するスタイルから、ボーカリストが手に持って歩き回りながら歌えるスタイルへと変えていった。特に1966年に誕生したSM58、SM57は、50年たった今でも音楽/放送業界において「ゴッパー」「ゴーナナ」と親しまれている。当時のテクノロジーの高さを証明しているといって良いだろう。


新たな50年、100年を見据えたダイナミック・マイクKSM8とは

KSM8の開発は、SM58というあまりにもスタンダードになりすぎたモデルの特性をより現代的に改良するために何ができるか考え、ゼロからスタートした。
そして、それは既存の技術を使ってどのように実現できるかを考えるのではなく、理想に近づけるためにはどのようなテクノロジーや生産技術が必要かを考えるという、今までとは逆の流れで開発を行った。そのため完成まで7、8年という歳月を費やしたが、SM58誕生50年という節目の年に発表することができて本当にうれしいと、プロダクト・マネージャーのJohn Born氏は語った。

KSM8の一番の大きな特長は、"Dualdyne"と銘打たれたデュアル・ダイアフラム機構だ。1枚のダイアフラムの下側にもう1枚のパッシブ・ダイアフラムを入れることによって、近接効果を大幅に排除し、軸を揺らしたときの極端な高域の減衰を防ぐことができる。

一般的なダイナミック・マイクは近接効果により、マイクに近づけると低音が強調、逆に遠のくと高域が減衰してしまうが、KSM8は距離によって音量は変わるものの、音の質感は変わらない。これにより、色付けなく収音可能な距離(スイート・スポット)が拡大したことが分かる。

一般的なダイナミック・マイクの周波数特性は、近接効果とのバランスを取るためにどうしてもミッドレンジあたりにピークがある。そのためエンジニアはEQで補正しフラットにする処理が必要だが、KSM8であれば音作りをする作業時間を削減することができるだろう。

周波数ごとの指向特性においても一般的なダイナミック・マイクの場合、特に低域の周波数特性はふらつきやすいが、KSM8に関してはあらゆる周波数帯域において非常に均一な指向特性を実現している。

これらのサウンドは何100ページにも及ぶ長い計算から導き出されたハードの組み合わせによって作られているという。

これはマーケティング担当のアイデアで作られたビデオ。各部品の製作工程の様子がよくわかる。
後半は開発チームとPAエンジニアによるディスカッションが行われた。開発段階において、テレビ番組、コンサート、企業イベントなど、いくつかにおいてベータ・テストを行ったところ、どの状況においてもナチュラルでフラットなサウンドで、音作りがしやすいという高評価をもらったという。
すでに発売されているコンデンサー・マイクKSM9との違いについての質問が上がったが、「コンデンサー特有の高域の伸びが欲しい時はKSM9を。また現場での使いやすさを優先させるなら、KSM8はダイナミック・マイクとして今までになかったタイプなので使ってみる価値は十分あると思いますよ」と回答していた。

そのクオリティの高さは実際に手にすればわかる。ライブ・ハウスやスタジオ、楽器店などで機会があればまずは試していただきたい。KSM8がさまざまな現場で活躍する日は遠くないだろう。非常に楽しみな製品だ。
SHURE KSM8
仕様
カートリッジタイプ: デュアル・ダイアフラム・ダイナミック(ムービング・コイル)
周波数特性:40〜16,000 Hz
指向特性:カーディオイド
出力インピーダンス:300 Ω
感度:-51.5 dBV/Pa(1.85 mV) (1 kHz、開回路電圧)
極性:ダイアフラムへの正圧印加時にピン 2 に正電圧を発生
質量:330 g
コネクター:3 ピン XLR、オス
ハウジング:アルミ・ダイキャスト製(ブラック塗装またはブラッシュド・ニッケル仕上げ)
ラインナップ/定価(税抜)
・KSM8/N(ニッケル) /88,000円
・KSM8/B(ブラック)/88,000円
・RPW714 /120,000円
(ハンドヘルド型送信機マイクヘッド/ブラック)
発売日 2016年3月発売予定
製品ページ http://www.shure.co.jp/go/ksm8/jp/
(→ SHURE KSM8をデジマートで探す)