Berlin Calling〜第96回 日本のジャズ喫茶などに影響を受けた“リスニング・バー”ブームがベルリンに到来

今年に入り、立て続けにまた2軒オープン

 日本の名曲喫茶やジャズ喫茶という、飲食よりも音楽を聴いて楽しむことに重点が置かれているスペースが注目を集めて久しい。すでにニューヨークやロンドンではこのような形態の店がオープンしていたが、ここに来てベルリンにも本格的ブームが到来したようだ。

 恐らくその先陣を切ったのは、2017年にオープンしたジャズバー、rhinoçérosだ。何度も日本のジャズ・バーに足を運んだというフランス人のカップルが営む、こだわりのフレンチ・ワインとチーズをたしなみながら、ハイファイ・オーディオでジャズのアナログ・レコードが楽しめる店。閑静な住宅街にあり、優雅な気分が味わえる。

ベルリンのジャズ喫茶スタイルのリスニング・バーの走りとなったrhinoçérosの店内の様子。筆者も2018年にアルバム・リスニングのイベントをやらせてもらったことがある。(写真提供:©Paul Rossaint)

ベルリンのジャズ喫茶スタイルのリスニング・バーの走りとなったrhinoçérosの店内の様子。筆者も2018年にアルバム・リスニングのイベントをやらせてもらったことがある。
(写真提供:©Paul Rossaint)

 2021年にレコード屋などが多いエリアにオープンしたKwiaは、その名が示すように、クィアなアンビエント・リスニング・バーで、ポストパンデミックなベルリンらしいスペースと言えよう。入り口で靴を脱いで床に座るスタイルで、筆者が訪れた夜は、客層は若かったがほとんど私語がなく、無言でアンビエント音楽に聴き入っている人ばかりで新鮮であった。

 昨年末には、日本でも人気が高いレコード・レーベル、Music From Memoryの共同設立者であるジェイミー・ティラーが設立メンバーに名を連ねるSwayが営業を開始。ここはKwiaからほど近いノイケルン地区のトレンディな通りに面し、ナチュラル・ワインが売りのお店。賑やかなエリアであるため、リスニング・バーというよりはDJバーに近い。“自宅の延長”を目指しているとのことで、カジュアルな雰囲気が魅力だ。

 今年に入り、立て続けにまた2軒オープンした。いずれもかなり本格派である。1軒目がクロイツベルク区にできたUnkompress。筆者はまだ訪問できていないのだが、日本製のカスタム真空管アンプとKLIPSCH Cornwall IVをあつらえているらしい。ここもナチュラル・ワインとおつまみ、コーヒーが楽しめる。

 今年4月にオープンしたBar Neiroは日本語の“音色”を名前にし、家紋のようなロゴと店内の内装も障子のようなかなり和なテイストである。それもそのはず、AUDIO-TECHNICAのAnalogue Foundationプロジェクトが運営するスペースだ。味噌や抹茶、柚子といった和のテイストを取り入れたカクテルも美味。ここは予約制なので事前予約を。

Bar Neiro自慢のALTEC LANSING A5systemスピーカー。その他こだわりのセット・アップの機材リストはオフィシャル・サイトのトップ・ページに掲載されている。(写真提供:Bar Neiro)

Bar Neiro自慢のALTEC LANSING A5systemスピーカー。その他こだわりのセット・アップの機材リストはオフィシャル・サイトのトップ・ページに掲載されている。
(写真提供:Bar Neiro)

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

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