ベースを弾いている大学生のシンジ君は、仲間とのセッションを日々楽しんでいますが、自分で曲を作ってみたい!と思うようになりました。仲間からは「DAW買えば?」と言われましたが、さて、なんのことやら……? バイト先の先輩が「親戚にサンレコの編集長がいるから」と紹介してくれて、編集長のところを訪ねてみることに……。
DAW、読み方はダウ? ディー・エー・ダブル?
シンジ ということで、編集長、よろしくお願いします。早速ですが、DAWってなんですか?
編集長 Digital Audio Workstationを略したもので、DAW。ディー・エー・ダブル。
シンジ ”ダウ”って言っている人もいましたけど...。
編集長 英語の頭文字で略すときは、アルファベット読みが普通だと思うんだけど、最近では英語圏でも“ダウ”って読んでいる人もいるから、どっちでも通じるとは思う。
シンジ で、「DAW」ってどんな機材なんですか?
編集長 今はパソコンやタブレットのソフトになっている。だから、正しくいえば“DAWソフト”だね。
シンジ DAWが無いと曲作りはできないんですか?
編集長 できないこともない。例えば、ピアノで曲を作って、アレンジを楽譜に書いて、レコーディング・スタジオに入って、ミュージシャンを呼んで録音すれば、録音作品になるよね? でもそれで試行錯誤するのは大変だし、労力も時間も、コストもかかる。そういった作業をコンピューターで一人でもできるようにしたのがDAWソフトなんだよ。言ってみれば、スタジオの全機能をソフト化したものなんだ。パソコン持ってる?
シンジ 大学の授業で使うので、Windows買いました。Macでないとできない?
編集長 ソフトによって対応環境やスペックは違うけど、Windows用のものあるね。
シンジ さっき「今はソフトになっている」って言いましたけど、ソフトじゃないものもあるんですか?
編集長 ”昔はあった”と言うべきかな。草創期のDAWは、専用機だったり、オーディオ処理用のものすごく大きな専用ユニットをパソコンにつなげていたりしたんだ。当時は一般人が買えるようなものじゃなかったけれど、今はそれをはるかにしのぐものがパソコンとかスマートフォン上で扱える。まあ、まだパソコンやインターネットも一般的ではない時代だったからね。
DAWで何ができるのか?
シンジ で、そのDAWソフトで何ができるんですか?
編集長 いろいろできるんだけど……そういえば昔、それを整理した記事を作ったな(がさごそ)……あった! 大きく分類すると、こうなる。
- オーディオの録音(レコーディング)
- 打ち込み(MIDIレコーディング)
- オーディオ&MIDIの編集
- ミックス・ダウン
シンジ レコーディングは、まあ分かります。パソコンに録音するんでしょ?
編集長 そうだね。DAWはマルチトラック・レコーディングができる。例えば、バンドの演奏だけ先に録って、その後からボーカルを何度も重ねたりとか。
シンジ Bメロは今歌った方が良かったけど、Aメロは前の方が良かった、みたいなこともありますよね? そういうのも対応できる?
編集長 うん、DAWには編集機能があるから、AメロとBメロを別のテイクから持ってきてつなげる、なんてことは簡単だね。
シンジ 次の“打ち込み”って、僕、別にPerfumeみたいな曲を作りたいわけじゃないんで、シンセがピコピコ鳴っている必要はないんですけど……。
編集長 若いのに、随分偏った打ち込みのイメージだな……。打ち込みでも、電子音だけじゃなくて、生楽器そっくりの音が出せたりもする。あと、最近は作曲やアレンジの支援をしてくれる機能があったりもする。曲作りをするなら、打ち込みはある程度覚えた方がいいよ。
シンジ 最後の”ミックス・ダウン”というのは、リハスタとかライブ・ハウスにあるようなミキサーを使うやつ?
編集長 ミックス・ダウンはトラック・ダウンとも言うね。DAWの中にあるミキサーで、バラバラに録ったりしたパートを1つの曲としてまとめる。各パートのバランスを決めるだけじゃなくて、エフェクトもかけられる。”ここだけ音量を大きくしたい”とか”この瞬間だけディレイをかけたい”といったこともできるよ。
どのDAWを買えばいいのか?
シンジ で、DAWが欲しいんですけど。
編集長 どのDAWソフトか決めてる?
シンジ さっぱり……あ、友達でLogic使ってるやつはいます。
編集長 ああ、LogicはAPPLEのソフトだから、Macにしか対応していないんだよね。
シンジ あと、Pro Toolsというのは、どこかで聞いたような記憶があるんですけど、それとDAWって違うんですか?
編集長 Pro ToolsはAVIDという会社が出しているDAWだね。Windowsで使えるDAWソフトとしては、こんな製品がある。
- ABLETON Live(Macにも対応)
- AVID Pro Tools(Macにも対応)
- BITWIG Bitwig Studio(Mac/Linuxにも対応)
- IMAGE-LINE SOFTWARE FL Studio(Macにも対応)
- INTERNET Ability
- MARK OF THE UNICORN Digital Performer(Macにも対応)
- PRESONUS Studio One(Macにも対応)
- STEINBERG Cubase(Macにも対応)
- TRACKTION Waveform(Macにも対応)
シンジ そんなにたくさんあると選べないですよ……。
編集長 周りの人と同じソフトにすると、情報も共有しやすいけど、そういう友達はあまりいない?
シンジ はい。さっきのLogic使っているやつがいるくらいかな...。
編集長 話が前後するけれど、DAWソフトへ録音するにはオーディオ・インターフェースという機材が必要になる。それを買うと、いろいろなDAWソフトの入門版がついていることが多いから、そこから始めてみるのもいいんじゃないかな? あるいはサンレコの記事を見て、自分が好きなアーティストが使っているものにしてみるのもいいと思う。あと、毎年サンレコ編集部で初心者向けのガイドブックをまとめていて、そこに各DAWの特徴をまとめているからそれもチェックしてみて!
シンジ なるほど。……で、もうひとつ質問なんですけど、DAWとDTMって同じなんですか?
編集長 おっと、そうきたか……。今から取材に出なきゃいけないから、その話は次の機会に!
ワンポイント:トラックとチャンネル
録音の世界では、信号の通り道の数をチャンネル(channel:chと略す)、録音されるコースのことをトラック(track:trと略す)と呼びます。
チャンネルはミキサーなどで使われる用語で、例えば10chミキサーといえば、10種類の信号が入力できる、つまり10個の音を入力してまとめられるという意味です。また、インプット・チャンネル、アウトプット・チャンネルなどのように接頭語をつけて、そのチャンネルが持つ役割を示すこともあります。
一方、トラックはレコーダーに使われる言葉で、陸上のトラックと同じように、コースに分けられたものを示します。”ベースのトラック””スネアのトラック”と言った具合に、どのコースにどの音が入っているのかを示すものです。
ところがDAWソフトが普及することで、DAW上のトラックとチャンネルの区分けがあいまいになってきました。DAWソフトでは、ベースのトラックの先に、そこに接続されたDAWソフト上のミキサーのチャンネルがあるからです。そうした理由もあり、DAWソフトではトラック/チャンネルがほぼ同じ意味で使われることが増えています。
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