さまざまな場所で音を録音したり、バンドのレコーディングをしたりするときに便利なレコーダー、自宅でのボーカル録音時に気になる“部屋鳴り”やモニター環境を改善する調音ツール、制作環境を整えるDTMデスクなど、音楽制作に役立つツールと選び方のポイントを紹介します。
※記載されている製品価格はすべて2023年12月13日時点の税込み価格です。
レコーダー
こんな方は要チェック!
✓ さまざまな場所で音を録りたい
✓ バンドで録音したい
選び方のポイント
1. 目的に適したモデルを選ぶ
使用する目的やシチュエーションをイメージしてみましょう。さまざまな場所でサウンドマテリアルを採取するといった目的であれば、マイク内蔵型のポータブルなハンディレコーダーは持ち運びが楽ですし、マルチチャンネルのイマーシブオーディオ制作やバンドのレコーディングなら、複数チャンネルのインプットを搭載したMTR(マルチトラックレコーダー)タイプがふさわしいです。
2. 音質に関わるスペックを確認
対応しているサンプリングレートやビットレートの値も、レコーダー選びの基準となります。一つの目安として音楽制作に使用するのであれば、最低でも44.1~48kHzのサンプリングレートで録音できるモデルを選びたいところ。またビットレートにおいては、“32ビットフロート録音”というものに対応していれば、調整が難しい入力レベルの設定を行わなくても音割れの少ない録音が可能で、初心者にもおすすめです。
解説:佐藤公俊
「録音までに時間がかかってしまうものだと、大事な瞬間をレコーディングができません。可能であれば実際にレコーダーを手に取って、自分に合った製品を選んでみてください」
【Profile】音楽家/サウンドデザイナー。環境音と電子音を組み合わせたワークスは、パブリックスペースやWebコンテンツ、ラジオ番組のサウンドプロデュース、舞台芸術の劇伴など多岐にわたる。
ZOOM R4 MultiTrak
R4 MultiTrakは、32ビットフロートとデュアルAD回路によりゲイン調整なしで音割れのない録音が行えるポータブルマルチトラックレコーダー。32ビットフロート/48kHzのWAVで最大2トラックの同時録音が可能。4つのオーディオトラックとバウンストラックを用いてオーバーダビングが行える。ファンタム電源を備えた2つのXLR/TRSフォーンコンボ入力を搭載。4つのフェーダーで各トラックのボリュームを調節できる。各トラックに3バンドEQ、パン、エコー、リバーブを設定可能なほか、アンプモデルなど50種類のエフェクトも内蔵する。
調音ツール
こんな方は要チェック!
✓ 部屋鳴りを解消したい
✓ モニター環境をアップデートしたい
選び方のポイント
1. そもそもなぜ必要?
“平らで固い面(壁、床、天井など)”は、音を多く反射します。それは“良いエコー”にもなり得ますが、音楽制作の場において邪魔になることも多いです。スピーカーの低音が実際より長く聴こえたり、録音したボーカルがもやもやして奥に引っ込んでしまったりします。そんな影響を軽減するために、調音ツールを用いて反射の大きさをコントロールします。
2. 求める効果でツールを使い分ける
調音ツールにはいろいろな種類がありますが、違いは主に“効果の高い周波数帯”と“効果の範囲”です。“吸音材”は多くの場合、高域に効果があるので、部屋の残響は減りますが、使いすぎるとこもった響きになることがあります。これを防ぐために、中低域に効果のある“拡散材”、低域に効果のある“ベーストラップ”を交ぜて調整していくのです。吸音材や拡散材を貼れない部屋などでは、マイクを囲うことで部屋の響きが入らないようにする“リフレクションフィルター”も活用できるでしょう。
解説:かごめP
「最後にTipsを一つ。吸音材や拡散材は、“部屋の角→天井(頭上中心)→壁”の順で設置していくと、敷き詰めずとも効率良く残響を減らせます。家具の配置変えも効果的です!」
【Profile】レコーディングスタジオで働くかたわら、2009年にボカロPとして活動を開始。現在、ボカロPとしての活動以外にも、さまざまなアーティストのミックス/エンジニアリングを手掛けている。
ISOVOX ISOVOX Go
一般的な部屋でボーカル録音をしたいというニーズに応えるポータブルなボーカルブース
ISOVOX Goは、音声の収録に不要な室内音を除去するポータブルなボーカルブース。一般的なリフレクションフィルターやフォームボールと比較して最大で約3倍程度のノイズ防止効果がある。上位モデルのISOVOX2のコンセプトを受け継いだ形で生まれた。
ISOVOX2は、最大-35dBの遮音性能を持ち、周囲に迷惑をかけることなくプロのスタジオでのレコーディングや大音量でのボーカル練習が行える。一方ISOVOX Goは、最大-10dBの遮音性能で、音響性能の良くない一般的な部屋でスタジオ品質のボーカル録音を行うことを求めるユーザー向けに作られた。新しい素材の使用と設計により、スムーズな周波数特性を備えつつ、ドライで歯切れ良くクリアなサウンドを実現している。アーティストやコンテンツクリエイター、ボーカリストだけでなく、ポッドキャストやオーディオブック、ナレーションの録音にも活用できるだろう。
VST/VST3(Mac/Windows)および、AU(Mac)フォーマットの無料プラグインソフトISOPLUG Goを使用すると、ディエッサー、ダイナミクス、トーン、リバーブなどのツールを使用してレコーディングをさらに強化できる。キャリーバッグ、フロアスタンド、マイクポールとM16ナット2個、マイクホルダー、LEDライトを付属する。
VICOUSTIC VicStudio Box
部屋の内装デザインとしても映える音響ソリューションセット
2007年に設立されたVICOUSTIC。ポルトガルで室内音響ソリューションを手掛ける同社の主力製品を1パッケージにしたのがVicStudio Boxだ。“音響ソリューションは内装デザイン”というコンセプトのもと、ブラック、マットホワイト、ブラウンオークの3カラーが展開され、部屋の広さに応じて複数セットでも利用できる。その中身を紹介しよう。
Wavewood Ultra Lite(8枚)は、溝を掘ったような特徴的なデザインを持つ吸音パネル。音響特性に基づく独自の研究と非線形の連続的な空洞を組み合わせたことにより優れた吸音性能を持つ。特に中高域の周波数に対して効果を発揮し、フラッターエコーなどの問題の解決にも役立つ。また、室内の隅に置いてベーストラップとして使用することで低域周波数の制御にも効果がある。
Multifuser DC3(2枚)は、凹凸を利用して音を拡散させる発泡スチロール製パネル。音響が重要視される場所の壁または天井に設置し、垂直面と水平面の両方に音を多重反射させる。中高域の周波数に作用しサウンドを明るくはっきりさせる効果がある。水性塗料での塗装も可能なので、好みにカスタムしても楽しいだろう。さらに、これらのパネルを接着するためのFlexi Glue Ultra2(2本)も同梱されている。
DTMデスク&周辺ツール
こんな方は要チェック!
✓ 制作の効率をUPさせたい
✓ 機材をすっきりとまとめたい
選び方のポイント
1. どれだけの機材を手に届く範囲に収めるか
まず考えていただきたいのは、“自分がどこまで手の届く範囲に物を収めたいか”です。大規模なスタジオであれば、スピーカースタンドやラックを内包する製品を検討できますが、規模の小さいスタジオや自宅であれば、物理的な制約がありますからね。そのため、DTMデスクに求める機能を洗い出して優先順位を付け、設置スペースと相談しながら、必要十分なラインを探ることが重要です。
2. 必要十分な機能を持つものを選ぶ
61鍵までのMIDIキーボードをお持ちなら、幅120cmくらいまでの鍵盤引き出し付きのDTMデスクが選択肢に入ります。フルサイズの鍵盤などであれば、必然的に幅150cm以上のデスクが必要です。また、ラックマウントができるタイプを検討するなら、最小限のラック数にすることを強くすすめます。なぜならラックが付くタイプのものは、液晶モニターの設置場所が高い場所になることが多いからです。特に縦のデュアルモニター編成などであれば、首に負荷がかかり現実的ではありません。
解説:春野
「機能を詰め込みすぎて逆に不便に感じてしまうことにならないよう、普段の制作環境に一番近い、自分に合ったスタイルのDTMデスクを選びましょう」
【Profile】作詞曲からトラック制作、ミックス、マスタリングまで自らこなす、ネット発のシンガーソングライター/プロデューサー。ジャズやヒップホップの素養を持ち、2020年のEP『IS SHE ANYBODY?』でiTunes/Apple MusicのR&Bチャート首位獲得。今年5月には最新アルバム『The Lover』を発表。
GLORiOUS Sound Desk Compact
機材を効率的に収納し使うことができるコンパクトなスタジオワークステーション
2004年の設立以来、DJや音楽スタジオ、オーディオ愛好家のための家具を製造しているGLORiOUS。Sound Desk Compactは、DTMをはじめとするクリエイティブな用途に適したコンパクトなスタジオワークステーションだ。
耳の高さにモニタースピーカーを、目の高さにディスプレイを設置するスペースを設け、その下にある2つの3Uラックには19インチのアウトボードを収納可能。クリエイティブな作業を行うデスクではケーブルの取り回しが一つの課題となるが、Sound Desk Compactには複数のケーブルダクトがあり、すっきりとまとめ、隠すことができる。前面および背面からアクセス可能な電源ケーブルダクトも便利だ。1,020mm幅のデスク面の下には、最大61鍵のキーボードや同様の周辺機器が置ける引き出し式キーボードトレイが格納されている。キーボードトレイの高さは6段階で調節できるので、自分の感覚に合った作業環境を構築可能だ。デスク面は35kg、キーボードトレイは12.5kgの耐荷重となっている。
X字型デザインは、スタイリッシュさとともに高いねじれ剛性を備え、安定性にも寄与している。本体はウッド仕上げで、ブラック、ホワイト、ウォールナットの3色を展開。バリエーションとして1,500mm幅のSound Desk Proもラインナップしている。
Decksaver 機材保護カバー
Decksaverは、40年以上のプラスチック製品の製造、設計の経験と技術を生かし、音楽制作、演奏、DJなどに用いられる機材を、液体、埃、衝撃から守る強靭かつ軽量なポリカーボネート製カバーを製造するブランドだ。スタイリッシュさを失わないデザインが特徴で、ここで紹介する、Roland SP-404 MK2用、Ableton Push 3用、Solid State Logic SSL 2用、Native Instruments Kontrol S61 MK2用のほか、多数の製品がラインナップされている。装着することで機材の保管やメンテナンスに関わるストレスは大きく軽減されるだろう。
STAY Slim 1100/02 / Compact
Slim 1100/02は、61鍵までのキーボードに対応する2段キーボードスタンド。Compactは、76鍵までのキーボードに対応する1段キーボードスタンドだ。共に、高精度な加圧射出成型技術によるアルミニウム製で、優れた耐久性を持たせながら、Slim 1100/02は2.9kg、Compactは2.0kgと軽量に仕上げている。Compactはアームの高さが最大700mmと低いため、座ってのキーボード演奏をはじめ、ノートパソコンやミキサー、モニタースピーカーなどを設置するのにも適している。スタンドには珍しく、カラーバリエーションも豊富だ。
サンレコ・ビギナーズ|音楽制作に役立つ初心者ガイド
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