専用ソフト音源&エフェクトを有償オプションで拡張可能な、ソフトウェア/ハード統合型レコーディング・システム
【製品概要】
The NAMM Show 2020で発表されたUNIVERSAL AUDIO Luna Recording Systemは、同社のオーディオI/OであるArrow/Apolloシリーズと新たに開発されたソフトからなるレコーディング/音楽制作システム。Macのみに対応し、Thunderbolt接続のArrow/Apolloシリーズ・オーナーは無償で使用することができます。
Luna Recording SystemはこれらのオーディオI/Oに加え、次の3つのソフトで構築されています。まずはミキサー機能をはじめとしたすべての基本機能を統轄するLuna Application、これにアドオンできるプロセッサーのLuna Extensions、そしてLuna Application専用のソフト音源Luna Instruments。Luna Applicationは無償ですが、後者2つは無償のコンテンツに加え、有料オプションもラインナップしています。
さらにLuna ApplicationではUADプラグインはもちろん、サード・パーティ製のAUエフェクト/インストゥルメントも使用可能。ビット/サンプリング・レートは最高24ビット/192kHzに対応し、内部処理は32ビット・フロートとなっています。
【動作環境】
Mac:macOS 10.14/10.15/11
コンピューター:Thunderbolt1/2/3を内蔵するAPPLE Mac
オーディオI/O:Thunderbolt端子を備えるApolloまたはArrow
推奨スペック:INTEL Quad Core I7以上のプロセッサー、16GB以上のRAM、SSDのシステム・ディスク、サンプル・ベースのLuna Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代以降のiLok USB Keyでライセンスを管理)
青木征洋が語るLuna Recording Systemのココが好き!
【Profile】カプコンを経て、フリーの作編曲家/プロデューサーに。『ストリートファイターV』の作曲などを手掛ける。ギタリストでもあり、レーベルViViXを主宰しつつギター・インストの流布に努めている。
アナログの良さをデジタルの世界で体感できるDAW。アナログライクなサウンドとワークフローを実現
アナログ環境での音楽制作にはレイテンシー(遅延)問題が無く、また魅力的なハードウェア機材に囲まれて作業をすることにはロマンがあります。Luna Recording System(以下、Luna)の素晴らしいところは、音楽制作におけるアナログの良さをデジタルの世界で体感できるところです。わざわざプラグインを立ち上げることなく、アナログライクなサウンドとワークフローですぐに録音やミックスを始めることができます。
LunaはUNIVERSAL AUDIOのオーディオI/O、Arrow/Apolloシリーズと統合的に使用するため、UADプラグインをほかのDAWよりも効率的に使うことができますし、それらの処理はすべてオーディオI/O側で行われるため、CPU負荷無くかけ録りすることが可能です。
さらに付属ソフト音源のLuna Instrumentsには同社のモデリング技術を採用。特にRavel(有償オプション)はサンプル・プレイバック式のピアノ音源では到達できないリアリティとレスポンスの良さがあるため、弾いているだけで楽しくなります。操作性については業界標準のDAWをかなり踏襲しているため、双方での行き来も楽になるでしょう。またI/O設定はほかのDAWよりも直感的で分かりやすいので、ビギナーでも扱いやすいかもしれません。レコーディング・システムと銘打っているだけあって、ミュージシャンにも優しいDAWだと思います。
お気に入りポイント1:SPILLボタン
ミキサー画面のバス・チャンネルに搭載されたSPILLボタンは、Lunaを象徴するユニークな機能の一つ。これは“そのバスにルーティングされているトラック以外を非表示にするボタン”です。特にドラムやストリングスの作業をするときは、マイクの数だけトラック数が膨れ上がっていきますが、楽器ごとにバスにまとめておけばドラムだけ、弦だけ、ボーカルだけ、ギターだけ、といった具合にミキサーの表示を瞬時に切り替えることができます。トラックの管理は規模が大きくなればなるほど大変になってきますが、このSPILLボタンは後発のDAWなだけあって、非常に便利だと思います。
お気に入りポイント2:Luna Extensions
ミキサー機能をはじめとしたLuna ApplicationにアドオンできるプロセッサーのLuna Extensions。例えばNEVE 1073マイクプリを通して、Studer A800テープに各トラックの録音を行い、コンソールはAPIのVisionを使うといった“夢のような”ことがLuna Extensionsでは簡単にできてしまいます。
また、アナログ環境では各トラックの音を足し合わせるだけでも微妙な音色変化が起こりますが、Luna Extensionsはそれさえも再現するのです。何も考えずともテンションの上がる音で作業できることが、Lunaを選ぶ最大の理由と言えるでしょう。
お気に入りポイント3:フィードバック・ボタン
Lunaはまだ若いDAWということもあり、ユーザーの声に対して非常に敏感です。画面右上には常にユーザー・フィードバックを送るためのボタンが表示されています。アップデートの頻度も高く、先日ついにMCUプロトコルに対応したことで、フィジカル・コントローラーが使えるようになりました。なんといってもLunaは、Apolloシリーズ・ユーザーなら無料で使えるというのが大きなポイント。Apollo Soloのようなエントリー向けのモデルから始めて、Lunaをぜひ使いこなしてみてください!
Luna Recording Systemのおすすめ付属プラグインを紹介!
1176LN Classic Limiting Amplifiers (Legacy)[コンプレッサー/リミッター]
ここではApolloシリーズに付属するUADプラグイン・バンドル=Realtime Analog Classicsから、幾つかピックアップしてみましょう。1176LN Classic Limiting Amplifiers (Legacy)は、20μsという超高速のアタック・タイムで有名なFETコンプレッサーのUNIVERSAL AUDIO 1176LNをモデリングしたコンプレッサー・プラグイン。モデルとなった1176LNは、世界で最も有名なコンプレッサーの一つと言えるかもしれません。またDSPへの負荷が低いため、CPU負荷を気にせず気軽に使うことができます。ドラム・バスやボーカル、ギター、ドラムなどに用いるのに適しており、アナログ・モデリングへの入り口として触りやすいプラグインです。ハイクオリティのサウンドを、ぜひ実感してみてください。
UA 610-B Tube Preamp And EQ[プリアンプ/イコライザー]
1960年代初期に登場したUNIVERSAL AUDIO 610モジュラー・コンソールを元にモデリングしたプリアンプ/イコライザーです。立体的なチューブの温かさや、存在感のある音色を付加することができます。
ApolloシリーズはUnisonテクノロジーを搭載するため、実機と同じような回路の挙動や倍音を再現することが可能です。ゲインを調節することによってクリーンな音から過激なひずみ音まで、幅広い音作りを楽しむことができるでしょう。
Marshall® Plexi Classic Amplifier[アンプ・シミュレーター]
ロックの歴史の中にアイコンのように君臨するMARSHALLのプレキシ系アンプもまた、Lunaの中でレイテンシーを気にせず思う存分使うことができます。モデリングされた実機は、よくあるただのプレキシ系アンプでは無く、一般公開されていないMARSHALLの博物館の中で長年テクニカル・スタッフによってメンテナンスされてきた1967年製のもの。つまりMARSHALLが“こう鳴るべきだ”と考える個体をモデリングしているということです。本物の音をデスクトップ環境で使えることに、ワクワクしませんか?
Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier (Legacy)[コンプレッサー]
世界中のエンジニアが真っ先に手を伸ばすと言っても過言では無いコンプレッサー、TELETRONIX LA-2Aをモデリングしたプラグイン。1176LNの俊敏さと柔軟性をギターのFENDER Stratocasterに例えるとしたら、LA-2Aの温かみのある個性的な音はGIBSON Les Paulに例えることができます。LA-2Aはなるべく透明なコンプレッションが必要なボーカルやベース、ストリングス、ホーンなどに使うのに適しているでしょう。UADプラグイン版のTeletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier(Legacy)では、比較的少ないDSPパワーで動作するので安心して使うことができます。
Pultec Pro Equalizers (Legacy)[イコライザー]
1951年にオリバー・サマランドとジーン・シェンクの手によって小さなガレージで生み出されて以来、世界中で愛され続けているEQ、PULTEC EQP-1Aを、LunaユーザーはUADプラグイン版のPultec Pro Equalizers (Legacy)として使うことができます!
デザインした本人たちは意図していなかった使い方だと思いますが、実機であるEQP-1Aの特徴の一つとして、低域のブーストとカットを同時に行うことで中低域にディップ(へこみ)が生じるため、結果として低域をブーストしつつタイトに仕上げられるということが挙げられます。これはベースやキックの音作りにもってこい。Pultec Pro Equalizers (Legacy)でも再現可能なので、ぜひ試してみるとよいでしょう。
Shape[マルチ音源]
主にレコーディングとミックスを行うDAWソフトとして完成されているLunaですが、ソフト音源のShapeも付属しており、導入したその日から作編曲を行うことができます。ベースやドラム、ギター、キーボード、ストリングス、ブラスといった基本的な楽器類に加えシンセ・ベースやリードなど必要なパートを備えているため、曲作りの即戦力となるでしょう。1インスタンスに最大4音色まで同時に読み込むことができます。ピアノには、有料のLuna InstrumentsプラグインRavelの簡易版が収録されているのもポイントです。