【2023年版】AVID Pro Toolsを詳しく解説 〜イロハのおすすめ付属ソフト&機能

AVID Pro Toolsを詳しく解説 〜イロハのおすすめ付属ソフト&機能

共同作業やカラーのカスタマイズで作業効率を向上 〜 ホーム・スタジオからプロまで幅広い環境に対応

【製品概要】

 レコーディング・スタジオで長く愛されているソフト。時間軸上にトラックが並ぶ“編集ウィンドウ”と、ハードウェア・ミキサーを模した“ミックスウィンドウ”を基本構成とし、作業環境や気分に合わせた画面カラーのカスタマイズも可能です。また、Avid Cloud Collaboration機能を使えば、離れた場所にいる人とも1つのプロジェクト内で共同作業ができます。入門向けのPro Tools Artist、Dolby Atmosなどのサラウンドにも対応したPro Tools Studio、Pro Tools Ultimate+バンドル・ソフトウェアのPro Tools Flexが用意されています。

左からPro Tools Artist、Pro Tools Studio、Pro Tools Ultimate

【製品ラインナップ】
Pro Tools Intro:無料|Pro Tools Artist:12,870円|Pro Tools Studio:38,830円|Pro Tools Ultimate:77,880円(Artist、Studio、Ultimateはいずれも年間サブスクリプション価格)
*2022年12月時点

【動作環境】
Mac:macOS X 10.15.7~12.5.1、INTEL Core I5以上またはAPPLE M1プロセッサー
Windows:Windows10、11、INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー
共通:16GBのRAM(32GB以上推奨)、インストール時に15GB以上のディスク空き容量、インターネット接続環境
*2022年12月時点

イロハが語るPro Toolsの魅力

イロハが語るPro Toolsの魅力

【Profile】洗足学園音楽大学および同大学院で作編曲を専攻。音響、演奏技術も学ぶ。現在は、作編曲やレコーディング・エンジニア、マニピュレーターをしながら、バンド活動も行っている。

機能のアップデートで作曲やアレンジにも役立つ機能が増加。バージョンの互換性もあり操作を覚えて損が無いソフト

 仕事としてレコーディングや楽曲制作をする上で、AVID Pro Toolsはスタジオでの基準ソフトになることが多く、スムーズなやりとりをするためにも操作を覚えておいて損は無いです。新旧のバージョンをまたいだやりとりができるので、最新版を買っても安心してデータを渡せます。ギタリストなども最近は宅録での納品が増えていますし、Pro Toolsのデータでやりとりできるようになっておくと楽ですね。

 また、バンドのレコーディングなど、複数チャンネルの同時録音を行う際にPro Toolsは“落ちない”という安心感があります。パンチインも楽だし、画面の上部には各種機能にアクセスできるツール・バーが表示されていて、虫眼鏡ツールでズーム、トリム・ツールで波形のトリミングなど、一度覚えてしまえばスムーズに編集が進むでしょう。初期設定のショートカット・キーを覚えておけば、大体は外部のスタジオでも同様に操作できるというのも、魅力的なポイントです。

 Pro Toolsはここ2年くらいで機能が大幅にアップデートされ、より一層クリエイターにも使いやすくなりました。中でも、画面のベース・カラーを暗くする“ダークテーマビュー”は重宝しています。僕は普段暗めな部屋で長時間作業をすることが多いので、目が疲れにくくなるのです。ほかにも作曲やアレンジに役立つ機能が増えているので、制作にもお勧め。絶対に持っておいた方がよいDAWです。

Pro Toolsのおすすめ付属ソフト&プラグイン

AIR Xpand!2[シンセ]

AIR Xpand!2

 無償版のPro Tools Introにも付属する、スタンダードなソフト・シンセです。ある程度のベーシックな音がそろっているので、初めて曲作りをしたいという人は、まずXpand!2から始めてみるのもお勧めです。バンドのデモ作りにも良いと思います。“ジャン!”という音を出すオーケストラ・ヒット(オケヒ)は、テレビ番組のSEなどで誰もが耳にしたことがあるような質感のサウンドで、その音を使うためにXpand!2を使うという声も聞くほどです。

CELEMONY Melodyne 5 Essential[オーディオ・エディター]

CELEMONY Melodyne 5 Essential

 Pro Toolsの大きな推しポイントの一つが、Pro Tools Artist、Studio、Ultimateに、ピッチやビブラート、タイミングなどを編集できるオーディオ・エディター・ソフトのCELEMONY Melodyne 5 Essentialが付属すること。しかもPro Tools内に統合された状態で使えるので、編集ウィンドウ内で直接操作できて、オーディオ・トラックの波形上にもエディット情報が表示されるようになりました。オーディオ分析も一瞬です。これが付属ソフトとして使えるのはPro Tools推しポイントの一つです!

SansAmp PSA-1[アンプ・シミュレーター]

SansAmp PSA-1

 コンパクト・エフェクターとして、ベーシストなどになじみが深く、唯一無二のサウンドを提供してくれるSansAmp。そのプラグイン版が、Pro Tools Artist以上のエディションには付属します。汚し系のディストーションなどがかかり、実機に近い音が鳴るので、ベースをDI経由で録ってかけることが多いです。もちろんほかの音にひずみを加えたい場合にも使います。8つのノブだけでコントロールできるので、実機を持っている人からベースを演奏したことがない人までぜひ試してみてください。

Pro Toolsのおすすめ機能

複数テイクの管理がスムーズなプレイリスト編集

複数テイクの管理がスムーズなプレイリスト編集

 メインの画面表示は“波形”や“プレイリスト”など使うシーンに合わせて選べるので、複数パートのレコーディングをする場合にも視覚的に分かりやすいです。特に、1トラックの中に複数のテイクを並べられる“プレイリスト”を使えば、テイクの管理や編集がすごく楽になります。各テイクをまたいで編集することや、気に入った部分だけを選んでOKテイクを作ることが可能です。さらに、ショートカット・キーを使えば操作は一瞬で完了します。

カーソルの配置場所によって機能が変わる作業ツール

カーソルの配置場所によって機能が変わる作業ツール

 波形の移動やクリップの長さを変えたいときなどに、便利なのが画面上部の編集ツールです。ここを複数選択しておくと、カーソルを置く場所によって操作が変わります。例えば、波形の上部にカーソルを置くと範囲が選択できるセレクタ・ツール、波形の端に合わせるとトリミングを行うトリム・ツール、波形下部では波形をつかんで移動させるグラバー・ツールとして機能します。これは、作業時間が短縮できて、本当に便利な機能です。

マニピュレートに必須のシステム使用状況&メモリーロケーション

マニピュレートに必須のシステム使用状況&メモリーロケーション

 僕はライブのマニピュレートにもPro Toolsを使います。そこで役立つ機能の一つが、CPUパワーの使用量などを表示する“システム使用状況”画面。コア別に使用状況が表示されるので、全体の負荷が大きくなくても、一部だけ負荷が増えたのを把握でき、トラブルが防げます。そのほか、セッション内にマーキングする“メモリーロケーション”機能は突然の曲順変更に対応するのに欠かせません。ライブ現場でもPro Toolsは活躍します。

素材に合わせたオーディオからMIDIへの変換

素材に合わせたオーディオからMIDIへの変換

 オーディオ素材は、MIDIトラックへドラッグ&ドロップするだけで、自動でMIDIへ変換できます。変換の際にはモード選択画面が表示され、素材に合わせた変換が行われます。ドラムや打楽器などの場合は“パーカッシブ”を選択することで、タイミングのみを検出。ボーカルなど音階が付いたパートでは“メロディック”を選ぶと音高も反映されます。スネアの音色を差し替えるときなど、個人的によく使う機能の一つです。

クリップゲインの調整がカンタン操作で完了

クリップゲインの調整がカンタン操作で完了

 クリップの音量を調整する“クリップゲイン”機能の扱いがすごく楽なのもお勧めのポイント。オーディオの一部分だけ音量を下げたい場合には、範囲を選択して、クリップ左下の●dBと書いてある部分をクリックしながら上下に動かすだけ。変更がリアルタイムで波形表示に反映されるので、見た目にも分かりやすいです。僕はボリューム調整系のプラグインを別で挿すことなく、このクリップ・ゲインだけでゲインを調整することもあります。

必要なテイクだけでセッション・データを作るメイン プレイリストの保存

必要なテイクだけでセッション・データを作るメイン プレイリストの保存

 最終的なOKテイクがまとまり、エンジニアへデータを送る際、採用しなかったテイクなども含まれたセッション・データをそのまま渡すと、容量が大きくなってしまい、双方にとって負担になってしまいます。そこで重宝するのが、“メイン プレイリストのみの保存”。OKテイクのみを集約したセッション・データがコピーとして別途保存されるので、不要な素材を削除する手間をかけず、必要なデータを作ることができるありがたい機能です。

AVID Pro Tools 製品情報

https://www.avid.com/ja/pro-tools

サンレコ・ビギナーズ|音楽制作に役立つ初心者ガイド

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