諏訪桂輔 × ソニー MDR-MV1 〜プロの仕事にフォーカスした「背面開放型」ヘッドホン【Vol.1】

諏訪桂輔 × ソニー MDR-MV1 〜プロの仕事にフォーカスした「背面開放型」ヘッドホン【Vol.1】

ソニーが2023年5月に発売した背面開放型のヘッドホンMDR-MV1。一線のプロは、本機をいかに評するだろう? 今回は、自ら購入して愛用中のエンジニア、諏訪桂輔氏がレビュー。5Hzまで再生する低域特性から話は始まる。

Photo:Hiroki Obara(プロフィール正面画像を除く)

購入の動機は、低音や音の距離感がよく分かるところ

 楽器店で試聴した際、すぐに“すごく良いな”と。低音がきちんと出るし、音の距離感もよく分かる。それが購入の動機です。低音に関しては、リファレンス曲を幾つか聴いてみたところ、50~60Hzは調整されたスタジオで普段使っているパワード・モニターと同じ聴感。そのパワード・モニターは38Hzまでの再生なので、MDR-MV1では、より低いところが見えるんです。楽曲の30Hz辺りも、よく聴こえました。開放型ヘッドホンって価格帯にかかわらず、低音が出ていても少しフワフワした感じで、とっつきづらいイメージだったんです。でもMDR-MV1の低音はバシっと、はっきりと来る。これまで密閉型に期待していた聴こえ方に近いと思います

 距離感の再現力は、リバーブの調整に効果的。僕はヘッドホンでリバーブを調整すると、かけすぎてしまうことが多いんですが、MDR-MV1なら“このくらいかけた”という感覚と実際のかかり具合の差が小さい。これまで使ってきたヘッドホンには、なかった特徴かもしれません。

 ステレオ感がワイドなのも特徴的です。ほかのヘッドホンだと左右に振りすぎたり振らなさすぎたりすることがあるけれど、本機では配置にそれほど迷わない。広く見えるからこそ、定位の精細なコントロールが可能なのでしょう。そして良くないミックスが良く聴こえるようなことはないので、モニター・ヘッドホンとして確かな仕上がりだと思います。

 装着感は、これまで使ってきたヘッドホンの中で一番。なんと言っても軽いし、イヤーパッドの感触や側圧の具合も良い。この音とこの使いやすさで5万円台か!と思います。多くのヘッドホンを試してきましたが、MDR-MV1がもっと早く出ていれば、長旅をしなくてもよかったかもしれません。

ヘッド・バンド長を調整する部分には目盛りがあり、自身のベスト・ポジションに設定しやすい。「設置ポジションを固定できるという点で、モニター・スピーカーのようです。ヘッド・バンドの長さで結構、聴こえ方が変わるので、目盛りで確認できるのはありがたい」と諏訪氏。写真右のイヤーパッドはスエード調人工皮革で、感触が良いという

ヘッド・バンド長を調整する部分には目盛りがあり、自身のベスト・ポジションに設定しやすい。「設置ポジションを固定できるという点で、モニター・スピーカーのようです。ヘッド・バンドの長さで結構、聴こえ方が変わるので、目盛りで確認できるのはありがたい」と諏訪氏。写真右のイヤーパッドはスエード調人工皮革で、感触が良いという

諏訪氏が外出先で作業するときのセット。アタッシュ・ケースにノート・パソコンやトラックボール、ヘッドホンを収納して運搬している。「MDR-MV1はハウジングが回転するので、平べったい状態にできて、アタッシュ・ケースにしまいやすいんです。一緒に収納している付属ケーブルは、被膜の加工によるものか、からまりにくくて良い」と語る

諏訪氏が外出先で作業するときのセット。アタッシュ・ケースにノート・パソコンやトラックボール、ヘッドホンを収納して運搬している。「MDR-MV1はハウジングが回転するので、平べったい状態にできて、アタッシュ・ケースにしまいやすいんです。一緒に収納している付属ケーブルは、被膜の加工によるものか、からまりにくくて良い」と語る

 Summary 

✓ 30Hz辺りもよく“聴こえる”
✓ リバーブの調整を誤りにくい
✓ とても軽くて側圧も良い具合

 

諏訪桂輔

諏訪桂輔
PLANET KINGDOM、studio MSRを経て、現在フリーランスのレコーディング・エンジニアとして活動。ポップ・ミュージックからアニメ系、劇伴まで手掛ける。ヘッドホンへの関心も高く、これまでにさまざまな機種を試してきた

ソニー MDR-MV1

ソニー MDR-MV1|オープン・プライス(市場予想価格:59,400円前後/税込)

ソニー MDR-MV1|オープン・プライス(市場予想価格:59,400円前後/税込)

 背面開放型により内部での共鳴を低減し、原音の正確な再現を目指したモニター・ヘッドホン。ドライバーは専用開発の40mm径のもので、低域の再現性を高めつつ超高域再生も可能に。ドライバー背面にはダクトを備え、振動板の動作を最適化。低域の過渡特性を改善し、中域との分離感を維持しつつリズムを正確に再現するという。360 Reality Audio認定モデルとなっているが、360 Reality Audio以外にも、さまざまな立体音響制作での使用が想定されている。

●形式:背面開放型 ●ドライバー径:40mm ●周波数特性:5Hz~80kHz ●最大入力:1,500mW ●感度:100dB/mW ●インピーダンス:24Ω(1kHzにて) ●重量:約223g(ケーブル含まず) ●付属品:ヘッドホン・ケーブル(TRSフォーン・プラグ)、TRSフォーン→ステレオ・ミニ・プラグ変換アダプター

製品情報

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