グローバル化されたBitwig Studioのモジュレーターを活用した音作り|解説:吉松悠太(SoundQuest)

グローバル化されたモジュレーターを活用した音作り|解説:吉松悠太(SoundQuest)

 こんにちは。サウンド/GUIデザイナーの吉松悠太です。今回もBITWIG Bitwig Studio Ver.5の新機能の活用法を見ていきます。

グローバル化で自由度を増したモジュレーション

 Ver.5の新機能として、前回は新モジュレーターのMSEGに注目しましたが、革新的なアップデートがほかにもまだあり、その一つがモジュレーター(とリモートコントロール)のグローバル化です。

 Ver.5で何かしら新規トラックを作成し、グループ化してデバイスパネルを見ると、以前とは微妙にレイアウトが異なっていることに気がつきます。パネルの左端にPROJECT、GROUP 1、DRUM MACHINEといった細いタテ棒のようなレーンが連なっているのです。各レーンの下部には見覚えのあるリモートコントロールとモジュレーターのボタンがあり、試しにモジュレーター・ボタンを押すと、空のスロットが出現します。

Ver.5のデバイスパネルには、PROJECT、GROUP 1、DRUM MACHINEといったレーンが用意され、それぞれにリモートコントロール(赤枠)とモジュレーター(黄枠)のボタンが備わっている。モジュレーターのボタンをクリックすると、スロット(緑枠)が表示され、例えばそれがGROUP 1であれば、グループ内のさまざまなパラメーターをモジュレートできる

Ver.5のデバイスパネルには、PROJECT、GROUP 1、DRUM MACHINEといったレーンが用意され、それぞれにリモートコントロール(赤枠)とモジュレーター(黄枠)のボタンが備わっている。モジュレーターのボタンをクリックすると、スロット(緑枠)が表示され、例えばそれがGROUP 1であれば、グループ内のさまざまなパラメーターをモジュレートできる

 これはつまり、トラックやグループ、プロジェクト全体といった各まとまりが、それぞれの階層でモジュレーターを持てるようになったということなのです! 各レーンに挿したモジュレーターは、自らが位置する階層以下ならどこへでもつなげることができるので、例えばPROJECTのレーンに挿したモジュレーターは、プロジェクト内のすべてのデバイスにマッピング可能ですし、なんならトラックのミュート・ボタンやプロジェクト全体のテンポまでもがモジュレーション可能になったのです。

 Ver.4までは、モジュレーターはあくまでも個々のデバイスの内側に挿すもので、デバイス間をまたぐことはできませんでした。それが今や、テンポにLFOをかけて出来上がった曲のリズムをスウィングさせるといった常軌を逸したような変調さえも可能となりました。

 もう少し実用的な用途で言えば、単一のLFOで2つのトラックのパンに右方向と左方向のモジュレーションをかけて、片方が右へ行けばもう片方は左、左へ行けば右といった具合で複数トラック間で連動した動きを作ることがかなり容易になっています。モジュレーターがデバイスの垣根を越えた。これは静かなる大革命なのです。

PROJECTのレーンにモジュレーターのCurves(赤枠)を読み込んで、その出力先に2つのトラックのパン(黄枠)を設定しているところ。パンは左のトラックは左に、右のトラックは右に動くようにマッピング。このようにグローバル化したVer.5では、1つのモジュレーターで複数トラックをコントロールできる

PROJECTのレーンにモジュレーターのCurves(赤枠)を読み込んで、その出力先に2つのトラックのパン(黄枠)を設定しているところ。パンは左のトラックは左に、右のトラックは右に動くようにマッピング。このようにグローバル化したVer.5では、1つのモジュレーターで複数トラックをコントロールできる

 今回はこの機能の活用例として、トラックの音量をLFOで高速操作することによって、ループ素材を細かくブツ切りにして並べたかのようなグリッチ音楽系のサウンドを作ってみたいと思います。

4つのトラック音量をモジュレーターで操作

 まずはBitwig Studio付属のサンプル・パック、Prime Loops Bass Musicからドラム・ループとして、PL 174bpm FullMix01をトラックに配置します。次に、ブツ切りする素材として同じサンプル・パックからPL 174bpm G BassLoop07、PL 175bpm G Drone11など、キーのそろったループを計4つ選んでトラックに並べます。あとは、曲のBPMを174に設定し、ブツ切りにする素材の4トラックの音量はいったんすべてゼロにして、4つのトラックをグループ化したら準備完了です。

一番上のトラックにはドラム・ループのPL 174bpm FullMix01を配置。その下には、ブツ切りにする素材として、PL 174bpm G BassLoop07、PL 174bpm G BassLoop21、PL 175bpm G Drone11、PL 140bpm G Silly01 Bassの4トラックを配置してグループ化。4つのトラックの音量は0に下げておく

一番上のトラックにはドラム・ループのPL 174bpm FullMix01を配置。その下には、ブツ切りにする素材として、PL 174bpm G BassLoop07、PL 174bpm G BassLoop21、PL 175bpm G Drone11、PL 140bpm G Silly01 Bassの4トラックを配置してグループ化。4つのトラックの音量は0に下げておく

 このグループのレーンに今回の要となる、Select-4というモジュレーターを追加します。Select-4は文字通り4つの出力先を1本のフェーダーで切り替えるというもので、最大の400%まで上げれば、一番上の矢印から最大値(1)が出力され、300%ならその下の矢印からの出力が1になり、200%ならさらにその下が……となっていきます。なおフェーダーが0、すなわち一番下にあるときは何も出力しません。今はフェーダーを0にしておきます。

GROUP 2にクロスフェーダー的な働きのモジュレーターのSelect-4を読み込み、フェーダーを0に設定

GROUP 2にクロスフェーダー的な働きのモジュレーターのSelect-4を読み込み、フェーダーを0に設定

 また中間の350%などにした場合は、上2つの矢印から0.5ずつ出力されるといった要領で、いわばDJがターンテーブルで2曲を切り替える際に動かすクロス・フェーダーをA/B/C/Dの4系統に拡張したような装置です。今回はまさにSelect-4をクロスフェーダーとして用い、DJのように4トラックの再生音量を操作します。

 では、この4系統の出力を、4つの素材トラックの各ボリュームに+1.00ずつマッピングしましょう。

Select-4の4つの矢印を、ブツ切りにする各トラックのフェーダーに1.00でマッピング

Select-4の4つの矢印を、ブツ切りにする各トラックのフェーダーに1.00でマッピング

 この時点で、Select-4のフェーダーをドラッグすると、それに応じてトラックの音量が切り替わります。つまり、手動ではありますが、“4つのうちどれかを鳴らす”という仕組みを確認できる状態になるわけです。

 次は、このフェーダーを自動で動かすために、Randomモジュレーターを追加します。Trigger欄でSyncを選び、Timebase欄は8分音符の8th noteにしてみます。

GROUP 2にRandomモジュレーターを追加。Trigger欄はテンポにシンクするようにSyncを選択(赤枠)。Timebase欄は8th note(8分音符/黄枠)を選ぶ

GROUP 2にRandomモジュレーターを追加。Trigger欄はテンポにシンクするようにSyncを選択(赤枠)。Timebase欄は8th note(8分音符/黄枠)を選ぶ

 これをそのままフェーダーにアサインしても悪くないのですが、そうすると141%とか366%といった半端な値が出てしまいます。今回は必ずどれか1トラックだけが鳴るようにしたいので、フェーダーは100%、200%、300%、400%のいずれかキッカリになってほしいところ。そこでさらにQuantizeというモジュレーターを使います。

 これは入力信号をカクカクの階段状にならすデバイスで、今回のケースならResolutionを4.00に設定しておけば、出力を0、0.25、0.5、0.75、1の5段階に強制的に丸めることができて、まさにうってつけです。

 ただし、0が出力されると無音になってしまうので、これを防ぐためにQuantizeモジュレーターのInputを0.25に設定し、Randomモジュレーターの出力をこのInputノブに1.0くらいでマッピングします。

GROUP 2にQuantizeモジュレーターを追加。Resolution(赤枠)を4、Inputを0.25に設定した上で、Randomの矢印をInputに1.000でマッピング(黄枠)

GROUP 2にQuantizeモジュレーターを追加。Resolution(赤枠)を4、Inputを0.25に設定した上で、Randomの矢印をInputに1.000でマッピング(黄枠)

 そして、このQuantizeの出力をSelect-4のフェーダーに最大までマッピングすれば、たとえRandomがどんな値を出そうとも、Quantizeの力によりフェーダーは常に100%刻みで動くようになります! これで完成です。

Qauntizeの出力をSelect-4のフェーダーに最大値(400.0%)でマッピング

Qauntizeの出力をSelect-4のフェーダーに最大値(400.0%)でマッピング

 再生するとなかなか過激なサウンドが現れますが、しかし完全ランダムなので音源として書き出すたびにフレーズが変わってしまうのはちょっとイヤですよね。そういう場合、このグループ全体の出力を別トラックに何テイクもループ録音し、気に入ったテイクをつなぎ合わせれば“理想のランダム”を作り込むこともできます。

録音用のトラック(赤枠)を作成し、GROUP 2を入力してループ録音した様子。黄枠内にテイクが並んでいる。テイクの任意の場所をドラッグするとコンピングが行えるので、気に入った部分をつなぎ合わせることができる

録音用のトラック(赤枠)を作成し、GROUP 2を入力してループ録音した様子。黄枠内にテイクが並んでいる。テイクの任意の場所をドラッグするとコンピングが行えるので、気に入った部分をつなぎ合わせることができる

 このように、新顔ではないモジュレーターもグローバル化によって新たな活用法がたくさん生まれています。ミキサーさえもがモジュレーション環境の一部と化したBitwig Studio Ver.5。皆さまも試してみてはいかがでしょうか。

 

吉松悠太(SoundQuest)

【Profile】音楽理論学習サイトSoundQuestの制作/管理者。またPlugmon名義でサウンド/GUIデザイナー、プログラマー、ピクセル・アーティストとして活動している。UHMスクリプトから生成した独自波形を用いた「Anthem」シリーズをはじめ、主にU-HE製シンセのプリセット集やカスタム・スキンを多数リリースしており、同社のHive2においては公式にスキンやウェーブテーブルの提供も行なっている。

【Recent work】

『Analog Anthem』
XFER RECORDS Serum用のプリセット集。227個のプリセットのほか、30個のウェーブテーブル、3個のノイズ・ファイル、1個のスキンを収録

 

 

 

BITWIG Bitwig Studio

BITWIG Bitwig Studio

LINE UP
Bitwig Studio
フル・バージョン:69,300円|エデュケーション版:47,300円|12カ月アップグレード版:29,700円
Bitwig Studio Producer:34,100円
Bitwig Studio Essentials:17,600円

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14以降、macOS 12、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
▪Windows:Windows 7(64ビット)、Windows 8(64ビット)、Windows 10(64ビット)、Windows11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
▪Linux:Ubuntu 18.04以降、64ビットDual-Core CPUまたはBetter ×86 CPU(SSE4.1対応)
▪共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インターネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)

製品情報

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