ソニーから、昨年12月に発売されたコンデンサー・マイクC-80。ホーム・スタジオに向けながら、同社のハイエンド・マイクC-800GやC-100の設計を受け継ぐ一本だ。この連載では、一線のミュージシャンが自宅録音でC-80をチェック。今回登場するのは、普段から、コーラスの本チャン録りや配信コンテンツの制作をホーム・スタジオで行っているMichael Kaneko。ボーカルやアコギなどに試したインプレッションを語っていただく。
Photo：Chika Suzuki
C-80の音は、高域がクリアでキレがある。音楽だけでなく配信にも効果的だと思います
僕は機材に関して、試してすぐに“今後も使えそうかどうか”を判断するタイプなんです。C-80は、長く使っていけると思いました。そもそも６万円弱という価格で、この音質のマイクはなかなか見ないぞ、と。普段は10万円台のコンデンサー・マイクを使っているのですが、それに慣れた耳で聴いても全くそん色が無いんです。
最初に録音してみたのはアコギ。これがめちゃくちゃ良くて、すごくクリアに録れるんです。本体上のローカット・スイッチを入れてから録音すると、それだけで奇麗にまとまって、デモ作りだけでなく本チャンのレコーディングにも使える！と思いました。
次に歌録りでチェック。ハイエンドがすごく奇麗に出ている、というのが第一印象です。換言すると“キレのある音”。でも決して耳に痛くはなく、英語の歌詞でもシビランス（サ行にあたる音）が耳障りに感じられることはありませんでした。それでいて、１つ１つの単語がきちんと聴き取れるんです。アコースティック系の音楽はもちろん、エレクトロニックな楽曲でも映えるのではないかと思います。また、僕の声質は丸みを帯びた感じなので、C-80のキレのある音と相性が良いのかもしれません。
そして、このキレのある音はナレーション録りやインターネット配信にも向きそうです。僕は、自宅でラジオ番組用のコメント録りやYouTubeライブを行うので、C-80をナレーション録りにも試してみました。結果は、“むちゃくちゃ合う”。先述の通りハイエンドがクリアなので、話が聞き取りやすいんです。普段、車の中でポッドキャストを聞くことがあるのですが、カー・ステレオだとたまに話の内容が聞き取りにくくて。それを踏まえると、C-80のようにキレのある音のマイクで収録しておくのは効果的だと思います。
というわけで、音楽録音から配信用の音声収録まで、宅録にバッチリのマイクではないでしょうか。音質が良く、価格はリーズナブルなので、宅録ビギナーの方々も手に取りやすいと思います。１本持っておけば、さまざまな楽器やボーカルに使えそうですしね。
Summary
✓ 言葉がよく聴き取れる音質
✓ ビギナーも手に取りやすい価格
✓ １本で幅広い用途に使えそう
Michael Kaneko
南カリフォルニア育ちの日本人シンガー・ソングライター。2017年にデビューする前からFUJI ROCK FESTIVALやSUMMER SONICに出演し、デビュー後は２枚のアルバムを発表するほか、プロデューサーとしても活躍。森山直太朗、あいみょん、瑛人などを手掛けてきた。
ソニー C-80
ホーム・スタジオ・ユースの単一指向性コンデンサー・マイク。歌やアコースティック・ギター、ピアノなどの録音、歌唱や演奏の配信に向けており、ハイエンド・マイクC-100を元にしつつ新設計したカプセルを採用。金蒸着のダイアフラムは、著名な録音作品の数々に使われてきたC-800Gと同等の素材を用い、近接効果を抑制すべくデュアル（２枚）構造となっている。これにより、オンマイクの際も自然な音が得られるという。また、楽器の中で声を抜け良く聴かせるために、13kHz辺りを持ち上げたチューニングも特徴。
●電源：外部から供給（DC44～52V） ●周波数特性：20Hz～20kHz ●正面感度：-30dB（偏度±3dB、0dB＝1V/Pa、1kHz） ●ダイナミック・レンジ：125.5dB以上 ●出力インピーダンス：90Ω±15％、平衡型 ●最大入力音圧：138dB SPL以上 ●外形寸法：40（φ）×158（H）mm ●重量：約215g
