Model 80 Five Voice Synthesizer × Gonno【SOFTUBEプラグインを使いこなす! Vol.9】

Model 80 Five Voice Synthesizer × Gonno【SOFTUBEプラグインを使いこなす! Vol.9】

 ハードウェア・モデリングから独自の製品まで、多くのプラグインを手掛けるSOFTUBE。当コーナーでは、プラグインのレビューと併せて、オリジナルのプリセットがダウンロード可能となっています。今回取り上げるのはシンセ・プラグイン、Model 80 Five Voice Synthesizerです!

わずかな調節でもしっかりと変化するフィルター

 ハードウェアの名機をモデルとするミックス/マスタリング用プラグインを多数発表しているSOFTUBE。品格のあるかかり具合で、筆者もかなり愛用しています。近年はビンテージ・シンセをモデルとしたプラグインも発表していて、その一つが今回ご紹介するModel 80 Five Voice Synthesizer(以下Model 80)です。

 まず外観から。シンセ好きなら説明不要の、1980年代を席巻したあの5ボイスのアナログ・ポリフォニック・シンセの名機をモデルにしているとすぐに分かります。私自身も長く憧れであったこの名機。多くのメーカーがリリースしているモデリング・ソフトや、近年発売された後継モデルのハードウェアも使用していて、それぞれの魅力がありますが、1980年代のレコードで聴ける“あの音”はなかなかうまく再現できず、やはりオリジナルでないとあの音色は出ないんだろうな......と思っていました。

 ところがこのModel 80。結論から言うと“あの音”が驚くほど丁寧に再現されています。“1-1 Brass”“1-2 Low Strings”など、オリジナルと同じプログラム番号で収録されているプリセットは、“本当にこれソフトが鳴ってるの??”と思うくらい、艶っぽい、アナログ感あふれるサウンドです。

 パラメーターもほぼ忠実に再現。パネル部分の左上にはオリジナルの特徴の一つであるVOICE MOD(オリジナルではPOLY MOD)、その下にはモジュレーション・ホイール関連をまとめたGLOBAL MODULATIONを用意。中央右には2オシレーターとノイズのミキサーやローパス・フィルター、その右にはグライドやユニゾンのノブもあります。右下の“AGING”は、ビンテージのアナログ機材のような“ゆらぎ”を再現しているという、ユニークなパラメーターです。

 もちろん各ノブの効きも抜群です。フィルターのレゾナンスを7時→7時半とほんのわずかに上げただけでキャラクターの異なるサウンドを生み出すことができました。素晴らしいクオリティで、本当に細部までモデリングされているのだろうと思います。

PAN SPREADで独特な広がりを加える

 Model 80には多くのソフト・シンセに付属するエフェクト・セクションがありません。ごまかしのない、そのままの音色を聴いてほしいというSOFTUBEの自信の表れでしょう。エフェクトを必要とせずとも、オシレーターやフィルター、モジュレーションが良いので、これらのパラメーターを組み合わせただけでとても豊かなうねりを作れます。例えば、オシレーター2をLFOとして使用し、PULSE WIDTHとVOICE MODを調整するだけで、ディケイが減衰した後にアルペジエイターが入ったような印象の音色も作成可能。こういった複雑な音色を、外部のエフェクトやモジュレーションに頼らずModel 80のみで作ることができるのは便利ですね。

 また、画面右の木枠をクリックすると、拡張メニューが出現。その中にPAN SPREADというノブが用意されています。これは、最小値では5つのボイスをモノラルで出力し、右に回していくとボイスごとにパン位置がそれぞれ変わっていくという、ビンテージのオリジナルにはない機能。コーラスのような雰囲気もあり、とても味わい深い広がりのあるサウンドを演出できます。

 拡張メニューには、ベロシティやアフタータッチによってフィルターやアンプの開閉を調節する機能や、VOICE MODを反転させるINVERT VOICE MODなどのパラメーターもあります。これだけでも十分に幅広い音作りができますよ。

 一聴してソフト・シンセのサウンドとは思えないリアリティのModel 80、とにかく驚かされました。さすがSOFTUBE、とても信頼できますね。これからも愛用します。

Gonno's Presets:ModBrass

Gonno's Presets:ModBrass

減衰後にピッチがコロコロと変化するブラス

 LFOに設定したオシレーター2と、VOICE MOD(黄枠)のOSC2/PW1でオシレーター1を変調させることで、ピッチがコロコロと変わる効果を付加。リリースを長めにすることでディレイのような効果も生んでいて、エフェクトがなくとも多彩に音作り可能なことが分かるかと思います。

Gonno's Presets:Filresonation

Gonno's Presets:Filresonation

発振音から生まれたピュア・サウンド

 オシレーターのボリュームを0にして、フィルターの発振音のみで作成。ENVELOPE AMOUNT(黄枠)でピッチがポルタメントのように変化します。とかく派手になりがちなフィルターの発振音でさえも超音楽的な鳴りで、すべてのパラメーターがとても丁寧に作られていると感じました。

 

Gonno

Gonno
アシッド&アトモスフェリックなサウンドを 手掛けるハウス/テクノ・プロデューサー。 名門International FeelやOstgut Tonなど各国から作品を発表し、ローラン・ガ ルニエなど著名DJにプレイされる。今年9月末に最新作となるEP『JIN08』のリリースが予定されている

製品情報【10月31日まで44%オフのスペシャル・セール価格です!】

※サウンド&レコーディング・マガジン2023年11月号での掲載時に、「50%オフ」と記載しましたが、正しくは「44%オフ」です。お詫びして訂正いたします。

関連記事