Atlantis Dual Chambers × okkaaa【SOFTUBEプラグインを使いこなす! Vol.10】

Atlantis Dual Chambers × okkaaa【SOFTUBEプラグインを使いこなす! Vol.10】

 ハードウェアモデリングから独自の製品まで、多くのプラグインを手掛けるSOFTUBE。当コーナーでは、プラグインのレビューと併せて、オリジナルのプリセットがダウンロード可能となっています。今回取り上げるのはリバーブプラグイン、Atlantis Dual Chambersです!

チェンバーを組み合わせて独自のリバーブを生成可能

 近年では自然なリバーブ効果を高めるため、さまざまなスタジオの響きを再現したプラグインが発表されている。そんな中、ミックスやマスタリング、シンセなど往年の名機の数々をモデルとするプラグインを提供しているSOFTUBEから、ユニークなレコーディング空間をデジタル化したプラグイン、Atlantis Dual Chambersが発表された。ストックホルムにある、“伝説的”とも称されているAtlantis Studiosのリバーブチェンバーがモデルで、ABBAやロクセットといった大物アーティストが愛用してきたサウンドを踏襲。資料によると、実際のAtlantis Studiosのリバーブチェンバーは、古い映画館を改築して造られており、広大で明るいサウンドが特徴とのこと。使用するマイクやスピーカー、さらには吸音材まで忠実に再現しているというのは、さすがSOFTUBEと言ったところだ。

 用意されているチェンバーは2種類。画面上部のA/Bボタンで切り替えられ、L/Rのチャンネルも分かれている。リンクさせて同時にも、L/R別々にも調整可能。異なるチェンバーを設定し、オリジナルなステレオ感を演出したり、L/Rで趣の異なったサウンドメイキングにも対応する。

 マイクは4種類で、画面上部の指向性マークのボタンから選択。左から、モダンカーディオイド(LINE Audio CM2)、フィギュア8リボン(RCA 77-DX)、チューブカーディオイド(Neumann U 47)、ビンテージオムニ(Electro-Voice RE55)となっていて、これらのチョイスも数々のレコーディングで使用されたものだそう。ボタンを押せばすぐに音色が変わるので、再生しながらお好みのサウンドを探すのもいいだろう。

 そのほかにも、スピーカーとマイクの距離をシミュレートする“MIC DISTANCE”や、アルゴリズムによる“DECAY”に加え、吸音材の数でディケイを調節する方法を再現する“MECHANICAL DAMPING”ノブも搭載。UN-DAMPED(オフの状態)、HALF DAMP、FULL DAMPと段階的に調整できる仕様になっている。FULL DAMPにするとより残響が短くなり、高域成分を抑えることが可能だ。精密なシミュレート具合がここにも表れているのを見て取れる。

初心者にも優しい即戦力プリセットを収録

 筆者は特にボーカル処理でリバーブを施すことが多く、空間系/チェンバー/プレートなどを組み合わせ、好みの空間をサウンドメイクしてきた。その経験も踏まえ、まずプリセットの“Vocal ABBA Setup”をボーカルに使用してみると、高音域の美しい減衰に加え、広がりと明瞭な響きを生成。オケと自然になじませることができた。ボーカルに透明感を与えながらも、独特の広がりを持った、まさにスウェディッシュポップ・サウンド。今までなかなか手の届かなかったサウンドが、いとも簡単に実現できることに驚いた。“Vocal Female Doubler”“Vocal Male Widener”といったプリセットも、コーラス用途として即戦力。プリセットが豊富なのは初心者の方にとっても優しい仕様だ。

 パラメーターも複雑な要素はなく、直感的な操作で簡単にスウェディッシュポップ・サウンドを取り入れられる。先述したパラメーター以外にも、特定帯域の共鳴を抑える“RESONANCE CONTROL”や、ひずみを加える“AMP DRIVE”などは、一聴して分かるほど抜群の効き具合だ。画面下段にはEQやダイナミクスも用意。“LOW CUT”“HIGH SHELF”で音抜けを追い込むなど、外部のエフェクトに頼らずとも、素早く最適なサウンドにたどり着くことができる。

 Atlantis Dual Chambersは、一聴してプラグインとは思えないリアリティと品格を持っていた。使い方次第でさまざまな可能性を秘めており、筆者はもちろん、幅広いユーザーの音楽制作に新たな息吹をもたらしてくれるだろう。

okkaaa's Presets:Vocal Group Chamber

Vocal Group Chamber

存在感を強調しながら抜けのあるサウンド

 明瞭さがありつつ、ボーカルと楽曲の境界線が溶け合うようなイメージで作成。DECAYは最大にして、リバーブの減衰を滑らかに感じるHALF DAMP(黄枠)を設定。LOW CUTとHIGH SHELFのGAINを調整し、ボーカルの存在感を強調しながら抜けのあるサウンドを演出。

okkaaa's Presets:Vocal Widener

Vocal Widener

コーラスエフェクトのようなステレオ感

 マイクを別々のモデルにするなど、チェンバーのパラメーターをL/Rで個別に調整。ステレオ感を強調したコーラスエフェクト的なリバーブ。DECAYは最小に、16kHzに設定したHIGH SHELFのGAINをほぼ最大まで上げる(黄枠)ことで、ヘイジーな音色を目指した。

 

okkaaa

okkaaa
ミュージシャン/ライター/フォトグラファーなど、多彩な顔を持つアーティスト。楽曲だけなく、MVの制作、ジャケットやWebサイトなどもすべてセルフプロデュースしている。2019年2⽉に「シティーシティー」がSpotifyバイラルチャートにランクイン。2019年7⽉には同新人発掘プロジェクト“Early Noise”のカバーを飾る。

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