KERWAX K-23R 〜Rock oN Monthly Recommend vol.67

KERWAX K-23R 〜Rock oN Monthly Recommend vol.67

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップスタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はフランスに拠点を置くブランド、KERWAXから発売されたリボンマイクのK-23Rをピックアップする。重厚なステンレスのボディを持ちつつも全長は200mmと、リボンマイクとしてはコンパクトな印象もある本機の魅力とは何なのだろうか。宮地商会M.I.D.所属で、ビンテージ機材のメンテナンスや改造、リボンマイクの修理なども行い、自身のマイク・ブランドTONEFLAKEも手掛ける佐藤俊雄氏と、メディア・インテグレーションの安田都夢氏に話を聞いていこう。

Photo:Takashi Yashima(メイン画像、製品、*)

K-23R

K-23R|168,000円

K-23R|168,000円

 K-23Rは、フランスに拠点を置くKERWAXが発売するリボンマイク。ステンレス削り出しの筐体を採用し、本体上部に12段のスリットが入っている。回路にはネオジム磁石を、トランスは自社開発のカスタムモデルを搭載。リボンは厚さ2.5μm、幅5mm、長さ51mmのアルミニウムを使用する。双指向性で、周波数特性は30〜15,000Hz(±3dB)となっている。

K-23Rを背面から見たところ。XLRケーブルが本体に直接接続されている。また本体の底部にはスイベルマウントを装備。角度を自在に変えられる便利な仕様だ。外形寸法は直径30mm、長さ200mmで、重量は455g。1本1本がハンドメイドで組み立てられているとのことで、設計だけでなく製造にもそのこだわりが現れている

K-23Rを背面から見たところ。XLRケーブルが本体に直接接続されている。また本体の底部にはスイベルマウントを装備。角度を自在に変えられる便利な仕様だ。外形寸法は直径30mm、長さ200mmで、重量は455g。1本1本がハンドメイドで組み立てられているとのことで、設計だけでなく製造にもそのこだわりが現れている

●まずKERWAXとはどういったブランドなのかを伺えますか?

佐藤 2012年に、フランスでミュージシャン/エンジニア/プロデューサーとして活動するクリストフ・シャバノンとその奥さんのマリーが、ブルターニュ地方にあるコートダルモールの小さな町の学校の寄宿舎だった1,500㎡の建物を改装して、レコーディングスタジオとして運営を始めました。“KER”はブルターニュの地名で、“WAX”は最初期の円筒型のレコード=ワックスシリンダーのことを指し、今ではアナログに傾倒している人のことを表す言葉でもあります。彼らもアナログレコーディングや真空管にとても情熱を注いでおり、それがKERWAXという名前にも表れています。

フランスのブルターニュ地方コートダルモールの小さな町、ロギヴィ・プルグラに構えるKERWAXのレコーディングスタジオのコントロールルーム。アナログレコーディングへのこだわりを持ち、500本以上のマイクをはじめ、多数の真空管機材を所有する。2016年には、スタジオ所有の24chミキサーを元にしたプリアンプKerwax Replicaを発表した

フランスのブルターニュ地方コートダルモールの小さな町、ロギヴィ・プルグラに構えるKERWAXのレコーディングスタジオのコントロールルーム。アナログレコーディングへのこだわりを持ち、500本以上のマイクをはじめ、多数の真空管機材を所有する。2016年には、スタジオ所有の24chミキサーを元にしたプリアンプKerwax Replicaを発表した

KERWAX創設者のクリストフ・シャバノン氏。両サイドにはテープレコーダーのSTUDER C37(写真左)とJ37(同右)が見える

KERWAX創設者のクリストフ・シャバノン氏。両サイドにはテープレコーダーのSTUDER C37(写真左)とJ37(同右)が見える

KERWAXのスタジオの外観。元々は寄宿学校として使われていた、1,500㎡以上の土地を持つ建物を改装して造られた

KERWAXのスタジオの外観。元々は寄宿学校として使われていた、1,500㎡以上の土地を持つ建物を改装して造られた

●スタジオとしてだけでなく、製品の開発も行っていますね。これまでにどのようなラインナップを発表しているのでしょうか?

佐藤 2016年にスタジオ所有の24chミキサーのラインアンプを元にしたプリアンプ、Kerwax Replicaを発表しました。また、往年のマイクブランドMelodiumの商標を取得して、リボンマイクの42Bを再現した42Bnなども発売しています。

 

●そしてこのたび、オリジナルのリボンマイクK-23Rが発表されました。K-23R開発の経緯は?

佐藤 小型ですっきりしたデザインで、かつ工場で大量生産されるようなものではなく、すべて手作りの、手ごろな価格のリボンマイクを作りたいと考えていたそうです。“入手しやすい”“使いやすい”“かっこいい”という3つの理念ですね。

 

●製品自体の話に入る前に、一般的なリボンマイクの特徴を教えていただけますか?

佐藤 大きな特徴としては、リボンそのものが発電体であるということです。外から音声=空気振動のエネルギーが入ったときに、リボン自体が電気を起こす。これはほかのコンデンサーマイクなどとは異なる仕様で、音を直接電気信号に変換するのがリボンマイクなのです。

 

●リボンマイクを求めるユーザーとしては、どういった方が多いですか?

安田 バイオリンやチェロなどの弦楽器奏者の方が多いです。ギターやボーカル用として求める方もいらっしゃいますが、生楽器系の方で、現在使っているコンデンサーマイクの次の1本として求めるケースを比較的よく目にします。

 

●音質はどういった傾向があるのでしょうか?

佐藤 一言で表すと、非常に自然な音ですね。例えば弦楽器奏者の方は、耳が楽器の音ありきのような状態と言いますか、音が自然に聴こえないことに対してすごく違和感を持たれる方が多いです。コンデンサーやダイナミックだとどうしても強調される部分があって、自分が鳴らしている音とは違うんじゃないかと感じてしまい、そのため違和感なく録音できるリボンマイクを選ばれるんだと思います。

安田 リボンマイクは本体がゴツゴツとしているようなイメージがありますが、見た目も音に関わってくるのでしょうか?

佐藤 それが実は、本体の物理的な大きさが音質や音量の差になっているわけでもないんです。リボンマイクの音色を決定づける要素としては、リボンの厚み、張り方、磁石と磁石の間のギャップ=隙間などです。有名なRCA 77DXも本体は大きいですが、リボン自体は親指の爪の長さくらい、幅も約2mmくらいと、ものすごく小さいんです。

 

●K-23Rのリボンは、長さ5.1cm、幅5mmとなっています。

佐藤 幅5mmというのは、割とスタンダードなサイズかと思います。Melodium 42Bnや、ほかの有名なリボンマイクも幅5mmが多くて、耐久力や自然な動作というのを鑑みてその選択になっているのではないでしょうか。

 

●外観も非常にコンパクトです。

佐藤 重厚さがあって、全然安っぽい印象はないです。スリットが入った同様の形状のマイクが各社から出ていますが、それらより若干太く、頼もしさがあります。

 

●磁石にはネオジム磁石が使われています。さまざまな機材で使われているのを目にしますが、あらためてどういった磁石なのかを教えていただけますか?

佐藤 近年の音響機材で使われる小さな磁石の中でも、磁力がかなり強い磁石です。科学者が扱うようなものにはとんでもない磁力を持つ磁石もありますが、一般に流通している範囲では最も強力な部類に入るのかなと。あくまで金属の塊であり、その加工精度がそのまま品質に直結する部分なので、精密に作られていると思います。

 

●出力トランスは、KERWAXが独自にカスタムしたものが使用されていますね。

佐藤 リボンマイクは、リボン部分だけでは出力がものすごく小さくて弱いため、そのままではとてもマイクプリアンプを鳴らせません。ですので、出力を大きくするためにトランスを搭載しています。トランスによって周波数特性が変わってしまうこともあり、K-23Rのトランスを作るにあたっては、可能な限り色付けされないよう、コイルの巻線比率を1:35という値にしています。妥協せずに実験を重ねて、K-23Rに一番合うものがカスタムメイドされています。

 

●実際にK-23Rの音を聴いてみた印象は?

佐藤 見晴らしの良さが、ほかとは一味違うのかなと。高域が伸びているマイクは、キラキラしている代わりにどこか低域に物足りなさを感じることも多いのですが、そういった感じはない。ちょうどいい広がりがあって、低域の存在感もあるという印象ですね。今風の奇麗なストリングスや、胴鳴りまで収録したいアコースティックギターやクラシックギターのほか、歌にもいい。また、ドラムのオーバートップに立ててエアー感を録るのにも向いているのではないでしょうか。

安田 先ほど佐藤さんもおっしゃっていましたが、リボンマイクの音は見た目とは違うというところが前提としてあって、定番のものはリボンらしいクリアで自然な音という印象なんですが、K-23Rはちょっとそれとは違うところもあるかなと。リボンらしさがありつつも、太さも十分に備えていますね。

 

●そのほかに何か特徴はありますか?

佐藤 本体の下に、ネジで角度を調整できるスイベルマウントが付いているところです。楽器の向きに合わせて角度を調節しやすいようになっています。

 

●K-23Rはどのようなユーザーにお薦めですか?

安田 リボンマイクが欲しいという方だけでなく、まず1本マイクを欲しい方にもいいと思います。歌だけでなく楽器も録るとなったときに、歌は良く録れたけど楽器は……と案外なりがちなのですが、K-23Rなら1本で十分賄えそうです。

佐藤 私も、歌と楽器の両方を録る方にお薦めします。癖がないので、確かに最初の1本というのもアリかなと。クリーンなエレキギターにもいいですよ。

 

●リボンマイクというと、導入へのハードルが高いというイメージを持っている方も多いように思います。

佐藤 1950〜60年代は、当時の主流だったし、市場にもたくさん出ているマイクでした。わざわざこの音が欲しいから使うということではなく、普通に音を録るために使われていたものなんです。だから、気軽にトライしてみてもいいんじゃないかと思いますね。ただ、あくまでリボンは薄い金属の箔(はく)なので、空気に直接当たってしまうと伸びたり破れたりしてしまいます。もちろん本体でもそれを防ぐようになってはいますが、大きなものは防ぎ切れないので、ウインドスクリーンを用意するか、歌の場合は息がかからないように少し斜めから録るなどの対策をしてもらえたらと思います。

K-23Rのギターアンプのマイキング例。佐藤氏いわく、最低でも30cmは離した状態で、間にウインドスクリーンを立てるのがよいとのこと。アンプ内部のスピーカーコーンの動きは、いわばうちわで風を送っているのと同じような状況のため、リボンを守るためには適切な距離を置いた上で、角度を付けたり、ウインドスクリーンを立てたりして空気が直接当たらないようにしよう(*)

K-23Rのギターアンプのマイキング例。佐藤氏いわく、最低でも30cmは離した状態で、間にウインドスクリーンを立てるのがよいとのこと。アンプ内部のスピーカーコーンの動きは、いわばうちわで風を送っているのと同じような状況のため、リボンを守るためには適切な距離を置いた上で、角度を付けたり、ウインドスクリーンを立てたりして空気が直接当たらないようにしよう(

宮地商会M.I.D.の佐藤俊雄氏
メディア・インテグレーションの安田都夢氏
宮地商会M.I.D.の佐藤俊雄氏(写真左)、メディア・インテグレーションの安田都夢氏(同右)

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