MACKIE. DLZ Creator 〜Rock oN Monthly Recommend vol.61

MACKIE. DLZ Creator 〜Rock oN Monthly Recommend vol.61

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はアナログ・ミキサーをはじめ、さまざまな音響機器をリリースするMACKIE.が5月に発表した配信用デジタル・ミキサー、DLZ Creatorを取り上げる。どのような製品なのか、音響特機の市谷京三氏と、メディア・インテグレーションの多田純氏に話を聞いた。

Photo:Takashi Yashima(メイン画像とトップ・パネル、リア・パネル)

DLZ Creator

DLZ Creator|オープン・プライス(市場予想価格:122,650円前後)

DLZ Creator|オープン・プライス(市場予想価格:122,650円前後)

 12chの入力と、ステレオL/Rや4系統のヘッドフォン出力、さらにオーディオI/Oとして各入力をコンピューターへマルチトラック出力することも可能なデジタル・ミキサー、DLZ Creator。トップ・パネル上部には、10.1インチの大画面ディスプレイと、ヘッドフォン音量などを調節する5つのコントロール・ノブ、ホーム・ボタン、RECボタン、AUTOMIXボタンを装備。下部には、ch1〜9/10まで各入力チャンネルのフェーダーと、それぞれのソロ・ボタンとミュート・ボタン、ch11/12に対応する6つのサンプリング・パッドとソロ・ボタン、メイン出力L/Rのフェーダーとミュート・ボタンを配置。フェーダーの長さは100mmとなっている。

リア・パネル。左から、microSDカード・スロット、USBドライブを接続するUSB-A端子、イーサーネット端子(RJ-45)、ch7/8入力(ステレオ・ミニ)と、コンピューター接続用のUSB-C端子、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)×4、スピーカー出力L/R(TRSフォーン)、ch5/6入力(TRSフォーン)、ch1〜4入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×4。イーサーネット端子は、今後のアップデートでNDIに対応予定だ

リア・パネル。左から、microSDカード・スロット、USBドライブを接続するUSB-A端子、イーサーネット端子(RJ-45)、ch7/8入力(ステレオ・ミニ)と、コンピューター接続用のUSB-C端子、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)×4、スピーカー出力L/R(TRSフォーン)、ch5/6入力(TRSフォーン)、ch1〜4入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×4。イーサーネット端子は、今後のアップデートでNDIに対応予定だ

●DLZ Creatorが開発された経緯を教えていただけますか?

市谷 製品名に“Creator”とある通り、まさにクリエイター向けのミキサーとして設計、開発されました。MACKIE.は、10年ほど前にAPPLE iPad上からコントロールを行うDLシリーズをリリースするなど、アナログ・ミキサーだけでなくデジタル・ミキサーも開発しており、そこで培った技術がDLZ Creatorにも踏襲されています。

 

●クリエイター向けとは具体的に言うと?

市谷 コロナ禍以降、Webでの配信需要が増えたこともあり、YouTube配信やポッドキャストを行う方などに向けています。配信に対応する製品として、これまでにUSB接続のオーディオI/O機能を持ったProFXシリーズなどのミキサーもリリースしてきたのですが、やはり初心者の方が扱うには難しすぎるんですよね。しかしDLZ Creatorは、あまり機材に詳しくない方でも操作できるように特化されています。もちろんミキサーとして、小規模なライブやレコーディングにも用いることも可能ですよ。

多田 アナログ・ミキサー・ブランドとしてMACKIE.の知名度は高く、音質面などで間違いない製品であるというのは皆さんご存じのところですよね。DLZ Creatorの第一印象としては、ノブの色分けなど、電源を入れた状態で何がどこにあるのかが、かなり分かりやすいです。ミュート・ボタン上の表示が“スピーカーに×マーク”だったりと、初心者向けというのはかなり意識されているのだろうと思います。

 

●入力は合計12chで、4系統のXLR/TRSフォーン・コンボ入力にはOnyx80という新開発のマイクプリが搭載されています。

市谷 まさにアナログ・ミキサーのOnyxシリーズを範としているもので、最大80dBの入力ゲインを誇ります。MACKIE.では、低価格帯のミキサーで50dB、Onyxシリーズで60dBが最大でしたが、それを上回っています。これはアメリカで最も使われているという配信用マイクがSHURE SM7Bであることが影響していて、感度が低い設計のSM7Bに対応するため、新たにマイクプリを開発しました。マイク設定のプリセットとしても、MACKIE.以外のメーカーのマイクとして唯一SM7Bのプリセットが用意されています。

 

●ステレオ入力はどのような仕様ですか?

市谷 ch5/6はTRSフォーンのL/R、ch7/8はステレオ・ミニ、ch9/10はBluetoothかmicroSDを選択できる入力で、それぞれUSBからの入力に変更もできます。あとは6つの音を4バンクまでアサイン可能なサンプリング・パッドがch11/12に割り当てられています。また、Bluetooth入力にはMix Minus機能が備わっています。これは、配信などで遠方の方が電話で参加するときに、スマートフォンをBluetoothとペアリングしておくと音声をDLZ Creatorからスマートフォンに返さないことでループバックを防ぐ機能です。もちろんオフにもできます。

 

●出力はTRSフォーンのL/Rのほか、ヘッドフォン出力が4系統あります。

市谷 マイク入力が4chあるということは、4人が同じ空間で配信することも想定されています。そうなると、4人分のヘッドフォン出力が必要ですからね。またキュー・ボックス的な使い方もでき、例えばヘッドフォン出力のch1は自分の声だけ、ch2は自分と相手の声も出力するというようにカスタム可能です。ライブやレコーディングでのAUX出力としても用いることができるなど、使い方の幅は広いです。

 

●ディスプレイは10.1インチと大きなサイズですね。

市谷 DLシリーズはiPadで操作するミキサーとお話ししましたが、DLZ CreatorはiPadと連動はしていません。その分、本体にiPadと同等のサイズのディスプレイを備え、タッチ式で直感的に操作しやすい画面になっています。

 

●6つのサンプリング・パッドにはどのような機能が?

市谷 エアホーンなどデフォルトで6つの音源が入っていて、加えて4つのバンクがあり、USBデバイスやmicroSDカード、コンピューターから音源を自由にアサインできます。サンプラーとしてアサインするだけでなく、カフェのBGMとして6つのボタンそれぞれに朝、昼、夜、閉店時の「蛍の光」などを再生するといった用途にも使えます。プレイ/ストップ、ループなど5パターンから再生方法を選択できるほか、Bleep、いわゆる“ピー音”のモードでは、パッドを押すとほかのすべての入力音声をミュートにする機能も備わっています。

多田 配信用途はもちろん、カフェや飲食店ではBGMのほかに店内でのライブやDJイベントなどでも活躍しそうです。物理フェーダーがあることで、選択肢の幅が広がっているんだと思います。

 

●操作設定の大きな特徴として、Easy/Enhanced/Proの3つのモードから選択可能な点が挙げられます。

市谷 初心者の方、少し機材に触れたことがある方、機材に詳しい方と、使用する方に合わせた操作設定を選ぶことができます。Easyは主にフェーダーでのボリューム操作のみ、Enhancedは内蔵エフェクトのEQが固定3バンドのグラフィック仕様になっているなど、ある程度簡易化されたエフェクト調整が可能、Proはすべての機能にアクセスできるというものです。モードはいつでも切り替えでき、調節したパラメーターも引き継がれます。機能の中身は同じだけれども操作方法が異なる、というイメージですね。例えばカフェで使用する場合、最初の設定だけエンジニアの方がProで行い、その後は店員さんがEasyのボリューム操作のみでDLZ Creatorをコントロールするといった使い方もできます。その際、下手にパラメーターを触って設定が変わってしまうことを防ぐため、システム・ロックをかけることもできます。

DLZ Creatorの起動時に、Easy/Enhanced/Proの3つからコントロール・モードを選択可能。自身の機材への習熟度に合わせて、操作するパラメーターを限定することができる。また、Setup Assistant機能をオンにすると、入出力設定を順番にナビゲーションしてくれるため、取扱説明書を読むことなく、画面上の指示に従ってセットアップを行うことができる

DLZ Creatorの起動時に、Easy/Enhanced/Proの3つからコントロール・モードを選択可能。自身の機材への習熟度に合わせて、操作するパラメーターを限定することができる。また、Setup Assistant機能をオンにすると、入出力設定を順番にナビゲーションしてくれるため、取扱説明書を読むことなく、画面上の指示に従ってセットアップを行うことができる

Proモード選択時の入力チャンネル・セットアップ画面。マイクのプリセット設定や48Vファンタム電源のオン/オフ、ゲイン調整、パンやリバーブ/ディレイのセンド・レベルの調整などが可能だ。Enhancedモードでは、パンがなくなり、リバーブ/ディレイがオン/オフのみになるなど、シンプルな操作画面になり、さらにEasyモードでは黄枠部分のみの表示となる。調整したパラメーターは各モードを移動しても引き継がれる。Proで細かく調整した後に、操作時はEasyにしてフェーダーを動かすのみにするといった使用方法も可能だ。モード変更は、赤枠の歯車マークから設定できる

Proモード選択時の入力チャンネル・セットアップ画面。マイクのプリセット設定や48Vファンタム電源のオン/オフ、ゲイン調整、パンやリバーブ/ディレイのセンド・レベルの調整などが可能だ。Enhancedモードでは、パンがなくなり、リバーブ/ディレイがオン/オフのみになるなど、シンプルな操作画面になり、さらにEasyモードでは黄枠部分のみの表示となる。調整したパラメーターは各モードを移動しても引き継がれる。Proで細かく調整した後に、操作時はEasyにしてフェーダーを動かすのみにするといった使用方法も可能だ。モード変更は、赤枠の歯車マークから設定できる

Proモード選択時のEQ画面。3バンドのパラメトリックEQを調節可能。内蔵エフェクトはEQ、ゲート、コンプ、ディエッサーのチャンネル・エフェクト、リバーブとディレイのセンド/リターン・エフェクトを搭載。EnhancedモードではEQが3バンドのグラフィックEQに、ゲートがオン/オフのみ、リバーブ/ディレイがワンノブ仕様になるなど、操作が簡略化されている

Proモード選択時のEQ画面。3バンドのパラメトリックEQを調節可能。内蔵エフェクトはEQ、ゲート、コンプ、ディエッサーのチャンネル・エフェクト、リバーブとディレイのセンド/リターン・エフェクトを搭載。EnhancedモードではEQが3バンドのグラフィックEQに、ゲートがオン/オフのみ、リバーブ/ディレイがワンノブ仕様になるなど、操作が簡略化されている

 

●それは初心者の方が迷ってしまうなど、余分な気を遣わずに済みそうでとてもうれしい設計ですね。

市谷 初心者の方に優しいという点だと、これまでは説明書を見ながら最初にセットアップしていたと思いますが、画面上の説明を見ながら順を追って行うことができます。まずフェーダーを“U”の位置に合わせるところから始まり、ヘッドフォンのケーブルを挿す端子の位置が図で表示され、ヘッドフォンのレベルを調整し、入力端子には何を入力するか……というように、必要な工程をすべてナビゲーションします。初心者の方が一番難しい部分であろう、マイク入力のゲインも画面の指示に従いながら自動で簡単に設定することができますよ。現在は表示言語が英語ですが、まもなく日本語にも対応する予定です。

 

●ほかにはどのような機能がありますか?

市谷 ポッドキャストなどでは、BGMをかけながら話すようなこともありますよね。そのときにマイクで話しているチャンネルの音声が優先されるようにBGMのレベルを自動で下げるAuto Ducking機能が備わっています。手動でその都度フェーダーを操作しなくても済みます。あとはディスプレイの右にAUTOMIXというボタンがあり、これは複数のマイクを使用する際、特定チャンネルのマイクに優先度を持たせ、そこを基準にして越えないようにゲインをシェアリングする機能です。一般的にはマイクが1本増えるごとにゲインが3dB上がると言われていて、4本だと12dB上がってしまうため、本来であれば若干フェーダーを下げなければならないのですが、その必要がなくなります。

AUTOMIX画面。複数のマイクを使用する際に、自動でミックスを行う機能で、赤枠部分でAUTOMIXのオン/オフと、マイクの優先度をHigh/Middle/Lowの3段階から設定する。例えばch1をHigh、ほかのチャンネルをLowに設定すると、ch1のレベルを越えないように、ほかのチャンネルのゲインが自動で調整される。ch1以外の話者が急に大きな声を発した際などでも、ひずむことなく音声を提供することが可能だ

AUTOMIX画面。複数のマイクを使用する際に、自動でミックスを行う機能で、赤枠部分でAUTOMIXのオン/オフと、マイクの優先度をHigh/Middle/Lowの3段階から設定する。例えばch1をHigh、ほかのチャンネルをLowに設定すると、ch1のレベルを越えないように、ほかのチャンネルのゲインが自動で調整される。ch1以外の話者が急に大きな声を発した際などでも、ひずむことなく音声を提供することが可能だ

 

●ホーム・ボタンとAUTOMIXボタンの間にはRECボタンもあります。録音にも対応しているのでしょうか?

市谷 最大14chのマルチトラック・レコーディングに対応しています。USBでコンピューターと接続し、12ch+マスターのステレオL/Rを出力、またはステレオL/Rのみ出力を選択して、DAW上へ録音することができます。DAWだけでなく、本体に接続したUSBデバイスやmicroSDカードも同様に録音できるので、DAWにマルチトラックで録音しつつ、microSDカードにバックアップしたり、その逆も可能です。生配信時はステレオL/Rの音声を使って、YouTubeなどで編集した動画をアップロードするときには、ミックスでマイクの音量バランスを調整することもできますね。

 

●最後に、DLZ Creatorはどういった方にお薦めですか?

多田 やはりこれから配信を始めたい方や、その延長でゲームの大会を開きたい方、お店を経営されている方などにお薦めですね。これだけ音を出すためのアシストが充実しているものは、今までなかったのではないでしょうか。できることの広がりもあり、最初はEasy、慣れてきたらEnhanced、本格的に使えるようになったらProと、1台を長く使える。ユーザーが育つ教材的な面もあると思います。

市谷 よく、“モノラル・フェーダーをリンクしてステレオにできますか?”という質問をいただきますが、それはできません。技術的にはもちろん可能ですが、あえてできなくしているのは初心者の方にとって難しくなってしまうからなんです。エントリー・モデルとして導入される方から、プロの方まで使いやすいように設計、開発を行っている。今後もファームウェアのアップデートを行うので、拡張性に優れたデジタル・ミキサーとして使っていただけるのではないでしょうか。

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