注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回は3月から国内でも取り扱いが開始されたリバーブ・プラグイン、RELAB DEVELOPMENT LX480 Dual-Engine Reverbを紹介する。音楽制作の現場で長く愛用されてきたデジタル・リバーブをモデリングする本製品について、銀座十字屋ディリゲント事業部の多良間孝紀氏と大倉佑介氏、メディア・インテグレーションの安田都夢氏から話を聞いた。
LX480 Dual-Engine Reverb
LEXICON 480Lをモデリングしたリバーブ・プラグイン、RELAB DEVELOPMENT LX480 Dual-Engine Reverb。レコーディング・スタジオで目にする機会の多い480Lを踏襲するサウンドを備えつつ、高度なDSP技術を元にした2つの独立するアルゴリズム・エンジンを搭載。それぞれに設定したリバーブを組み合わせることで、新たなリバーブを作成可能だ。各パラメーターの操作は、中央左にあるE1/E2からエンジンを選択し、右にある各機能の名称が書かれたボタンを押すと、下段の文字表記が変化。各列のフェーダーを動かすことで値を調節できるほか、画面上にあるグラフィックを直接操作することも可能だ。
●まずは、開発元のメーカーであるRELAB DEVELOPMENTについて教えてください。
多良間 RELAB DEVELOPMENTはマーティン・リンド氏という音響技術の研究者が、デンマークで2006年に創業したメーカーです。最初はプラグイン・メーカーではなく、DSP技術の提供を行うところからスタートしました。現在も、IK MULTIMEDIA、SOLID STATE LOGICなど、多くのメーカーに技術提供を行っています。今は自社でプラグインを開発しており、リバーブに特化したラインナップを展開しています。
●LX480 Dual-Engine Reverb(以下LX480)は、1986年に発売されたLEXICON 480Lをモデリングするリバーブです。そもそも480Lとはどういった製品なのでしょうか?
多良間 スタジオに必ず置いてあると言っても過言ではないリバーブで、1980年代後半から1990年代にかけて一世を風靡(ふうび)しました。若い方でも、スタジオのコンソールの上に置いてあるのを目にしたことがある方が多いのではないでしょうか。ただ、よく目にするそれ自体は480Lの本体ではなく、コントローラーです。LX480のユーザー・インターフェースはそのコントローラーの形を模しています。
●LX480が発表されたのが2012年で、約10年を経て国内販売が開始されました。ユーザーからはどのような反応が?
安田 元々有名なプラグインでしたから、昨年末にバージョン4にアップデートされたタイミングで国内販売が開始されたのは待望だったと思います。ユーザー・サポートが受けられるようになったのもとても大きいですね。これから反響がさらに増えていくのではないでしょうか。
●製品名にもなっている、“Dual-Engine Reverb”の機能について伺えますか?
多良間 ほかの多くのプラグインは、DSP処理を1つのエンジンで行っているのですが、Dual-Engineはその名の通り2つのエンジンを搭載しているので、相互作用によって、より複雑な処理が可能になっています。
大倉 商業用スタジオでは今も480Lを使っている方が多いと思いますし、そのプロフェッショナルな方々に、Dual-Engineにしか作れないサウンドを一度体感してみてほしいですね。忠実に再現している音質とも合わせて、かなり面白い反応がいただけるかと思います。
●Dual-Engineを用いた音作りの方法は?
多良間 全7種類のリバーブが用意されています。これらをエンジンであるE1/E2のそれぞれに設定し、組み合わせることができます。組み合わせ方法として4つのモードがあり、グラフィック表示もされるので、画面を見ながら音をイメージできるようになっています。
●開発時のモデリングはどのように行われているのですか?
多良間 480Lを通して録音した、リバーブの残響部分=リバーブ・テイルをDSP処理によって再現しています。480LとLX480の比較表も公開しているのですが、寸分たがわない結果が出ていることが発表されています。
●実際にサウンドを聴いてみると、かなり奇麗なリバーブという印象を受けました。
多良間 ほかにも480Lをエミュレートしているリバーブはありますが、やはりマーティン・リンド氏が携わっているという点は大きいかなと。彼の技術は音楽業界だけでなく、映画音響を制作するSKYWALKER SOUNDや、ゲーム開発会社のUBISOFTの制作スタジオなど幅広く採用されています。LX480もそのエミュレーション技術を使って開発されており、さまざまなプロの現場で信頼され選ばれていることは大きな強みです。それだけクオリティが高いという証しですし、バージョン4まで熟成されてきているので、音質は確かなものになっていると思います。
安田 ユーザー・インターフェースが480Lそのものというのもいいですね。見た目がそのままで使い勝手も踏襲されていて、なおかつ音も良いので、“あの音だ!”という印象も強くなり、より作業に没頭できるのではないでしょうか。
●見た目という点だと、中央のスイッチでHDW(ハードウェア)モードとADV(アドバンスド)モードの切り替えが可能です。
多良間 HDWモードは、480LのLED表示部分までほぼ同じです。ADVモードは、リバーブの動きが波形で表示されるなど、視覚的に調整できます。昔から480Lに慣れ親しんでいる方はHDWモード、DAWなどコンピューター上での制作に慣れている方や細かく音を作り込みたい方はADVモードと、使い分けられるようになっています。
●リバーブ以外にもエフェクトが搭載されています。
多良間 ADVモードでは、ハイパス/ローパスなどのフィルター、EQも調節できます。これらもグラフィックを見ながら、入力信号に対してどういった影響を与えているかを視覚的にコントロールできますよ。
●プリセットは100種類以上用意されていますが、特徴は?
多良間 グラミー受賞経験もあるジョー・カレル氏、リチャード・ファーチ氏らによるシグネチャー・プリセットが用意されています。“Bright Guitar Plate”や“Vox Ambience”など、どんなパートに適しているかが名称になっているので、自分で作り込むことも可能ですが、初めはプリセットをいろいろと試してみるのもいいと思います。
●LX480のエントリー・モデルに当たる、LX480 Essentialsもラインナップされています。
多良間 機能が制限されたシンプルなモデルです。ただ、こちらにもシグネチャー・プリセットが用意されています。
大倉 DTM初心者〜中級者の方にとっては、DAWソフトにそもそもリバーブは付いているので、リバーブを手に入れるのは機材をそろえる過程でもかなり後になるかと思います。けれども、往年の機材を忠実に再現しているのは安心材料になりますし、“あの名曲ではこういったリバーブが使われているんだ”という一つのガイドとしても捉えてもらえるかなと。動作も快適で、低価格だからといって音が悪いというものではないので、まずはLX480 Essentialsからでも古き良きサウンドを体験してほしいです。
安田 最初は実機を知っている人がモデリングに興味を持ち、それからどんどん広がっていくと思うので、まだこれからLX480を知る人も多いはずです。だからこそ、定期的にバージョンが更新されてずっと使い続けられるようになっているのは安心できます。リバーブの開発はプラグインの中でもかなり難しいのではと思っていますが、リバーブに特化した元気なメーカーが作っていることもお薦めできるポイントです。
●往年の名機と、それを確かなメーカーがモデリングして作っているというのは、導入の大きな材料となりそうです。
多良間 国内販売を開始してまだ日が浅いですが、ユーザーの方からも好評の声をいただいています。リバーブの有名機種である480Lを、今実機で手に入れるというのはかなりハードルが高いことですが、自宅でも手軽に再現できます。このサウンドを皆さんに知ってもらいたいですし、ぜひ一度LX480を使ってみてほしいですね。
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