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筆者流Cubaseのボーカル・エディット法とデータを分かりやすく書き出すコツ|解説:みきとP

筆者流のボーカル・エディット法とデータを分かりやすく書き出すコツ|解説:みきとP

 どうも、みきとPです。前回に次いで第2回、よろしくお願いします。今回はデモ制作におけるボーカル・レコーディングや補正のお話、そして書き出しにおけるテクニックや注意点などについてお送りいたします。

“カーブを平坦化する範囲”を狭めて自然にボーカルを補正

 まずはボーカル・レコーディングについて。最大の注意点は、クリッピング(音量割れ)です。ボーカルだけに関わらず、ギターやベースなどすべてのオーディオ・データにおいて、故意的なノイズ以外の不要な音は楽曲の世界観の妨げになります。なので、録音をする際の入力レベルには十分気を付けてください。

 まれに、録音の入力レベルには余裕があるのに、前段に挿していたプリアンプなどで不本意に音割れしているようなデータを見かけることがあります。それが他人に渡すデータであった場合、受け取った方にも負担がかかるため、注意しましょう。波形は少々小さくても構いません。思い切り演奏しても音がクリップしないポイントを探ってみてください。

 さて、無事にボーカルのレコーディングが終わりました。それでは今回の中心テーマである、エディットをしていきましょう。デモの制作を想定しているので、スピード感を重視して速攻で作業していきます。以下に、僕のボーカル・エディットの一連の流れの例を示します。

❶イベントのつなぎ目をチェックし、クロスフェードをかける

 ブレスや言葉が切れていないかを確認しながら、Xキーを押してクロスフェードをかけていきます。

バラバラになっているイベントを選択して“X”を押すと、クロスフェードをかけることができる

バラバラになっているイベントを選択して“X”を押すと、クロスフェードをかけることができる

❷そのトラックを複製する

 これはケース・バイ・ケースですが、フル尺の録音データなどはテイク数も多いので、後述するVariAudioの解析の負荷を軽くするために、オリジナル・データではなくコピー・トラックを作成して、不要なイベントなどを整理してからエディットしていく場合があります。元のトラックはオリジナル・トラックとして残しておきましょう。

❸コピー・トラック上のイベントを全選択して“選択イベントから独立ファイルを作成”を実行する

 トラック上のすべてのイベントをつなぎ合わせて、新たなイベントを生成し、まとめてVariAudioで解析します。もちろん、つなぎ目のクロスフェードに失敗しているなどおかしな部分があれば、オリジナル・トラックを確認して、そのデータを補完するなどしましょう。

上がオリジナル・トラックで、下が複製されたコピー・トラック。“選択イベントから独立ファイルを作成”を実行したことで、複数に分割されたイベントが一つにまとまっている。“選択イベントから独立ファイルを作成”はメニュー・バーのAudioメニュー内にある

上がオリジナル・トラックで、下が複製されたコピー・トラック。“選択イベントから独立ファイルを作成”を実行したことで、複数に分割されたイベントが一つにまとまっている。“選択イベントから独立ファイルを作成”はメニュー・バーのAudioメニュー内にある

❹解析したノートと音程の数にズレがないか確認し、ずれていればノートを分割する

 例えば、ドとレの2つの音階なのに、解析情報は1つのノートになっている場合があります。その際は、はさみツールで数を合わせましょう(これは後でやる場合もあります)。

左画面の赤枠を見ると、2つの音程が1つのノートとして解析されてしまっているのが分かる。こういう場合は、右画面の赤枠のようにはさみツールを使ってノートを分割する

左画面の赤枠を見ると、2つの音程が1つのノートとして解析されてしまっているのが分かる。こういう場合は、右画面の赤枠のようにはさみツールを使ってノートを分割する

❺ノートを全選択して“ピッチカーブを平坦化する範囲”を少し狭めておく

 この機能は便利で、ピッチを補正したときの音程のつなぎ目の“ロボ感”を回避できます。この設定をした後にノートを分割すると、分割されたノートには設定が反映されないので、その場合は個別で調整する必要があります。手数が増えてしまうので、先に❹の作業をしておくとよいでしょう。

VariAudioの“カーブを平坦化”は、デフォルトだとノートの全範囲に適用される。しかし、ノートの左右にカーソルを合わせると“ピッチカーブを平坦化する範囲を設定”が表示されるので、その範囲を少し狭めておくと、音程のつなぎ目のロボ感を軽減できる。赤枠の緑色のノートに注目すると、黄色矢印のように、カーブを平坦化する範囲が少し狭められているのが分かる。なお、この機能を使うためにはVariAudioのメニューでスマートコントロールの設定を“すべて”にしておく必要がある

VariAudioの“カーブを平坦化”は、デフォルトだとノートの全範囲に適用される。しかし、ノートの左右にカーソルを合わせると“ピッチカーブを平坦化する範囲を設定”が表示されるので、その範囲を少し狭めておくと、音程のつなぎ目のロボ感を軽減できる。赤枠の緑色のノートに注目すると、黄色矢印のように、カーブを平坦化する範囲が少し狭められているのが分かる。なお、この機能を使うためにはVariAudioのメニューでスマートコントロールの設定を“すべて”にしておく必要がある

❻ノートを全選択し“ピッチを補正”を80~100%位にする

 ここの%は、ボーカルの表現や楽曲によって、ピッタリ合わせるのか、ルーズにするのかをチョイスしてください。

❼聴いてみて、歌がよれているところの波形を伸ばしたり、斜めにしゃくっているところを直すなど、調整していく

 ❻や❼に関してはアートに関わる部分ですので、正解はないかと思います。ただメロディだけ分かればよいということであれば、❻は100%にして、❼については“カーブを平坦化”を50〜60%くらいにしておけばよいでしょう。

ノートを全選択して“ピッチを補正”は100%、“カーブを平坦化”は50%にした状態

ノートを全選択して“ピッチを補正”は100%、“カーブを平坦化”は50%にした状態

書き出しの際の便利機能と分かりやすいデータ作りの方法

 ボーカルのエディットやミックスが終われば、次は書き出しになります。基本的に2ミックスを作るだけでしたら、オーディオミックスダウンのダイアログで、単一チャンネルのステレオ・アウトを指定の形式で書き出せばOKなのですが、今回はもう少し踏みこんで、他人にデータを渡すときのポイントや、パラデータなどの書き出し方法などについても触れておきます。

 まずは、名前の右側にある歯車マークをクリックして、“名前の設定パターン”より、ファイル名の表記方法を設定します。僕は基本、チャンネル名のみにしています。

書き出すオーディオ素材の名前の設定パターンを定義できる“名前の設定パターン・ダイアログ”。“属性”にある要素を“結果”にドラッグ&ドロップすることで設定できる。画面では“チャンネル名”のみを設定している

書き出すオーディオ素材の名前の設定パターンを定義できる“名前の設定パターン・ダイアログ”。“属性”にある要素を“結果”にドラッグ&ドロップすることで設定できる。画面では“チャンネル名”のみを設定している

 プロジェクト名や任意の日付などをファイル名にくっつけて書き出すこともできますが、特にそれがないと困った経験がありませんし、ファイル名が長いことのほうが不便に感じます。そういった情報は、格納するフォルダ名に記載したり、テキスト・ファイルを添えるのがいいかなと思います。

 続いて、オーディオミックスダウンのダイアログでは、iXMLチャンクがデフォルトでオンになっていますのでチェックを外しましょう(詳しいことはネットで検索してみてください)。そしてサンプリングレート、ビット解像度を設定して、モノラルかステレオ(Interleaved)かを決めます。ここでパラデータを書き出す場合は、プロジェクト内にモノラルとステレオが入り交じっていますので、“キューを書き出し”機能を使いましょう。モノラルはモノラルで一旦“キューに追加”したら、ステレオ・トラックも別でキューに追加します。

オーディオミックスダウンのダイアログ。“キューを書き出し”という機能(赤枠)を使えば、モノラルでの書き出しとステレオでの書き出しをまとめて設定して、同時に処理することができる

オーディオミックスダウンのダイアログ。“キューを書き出し”という機能(赤枠)を使えば、モノラルでの書き出しとステレオでの書き出しをまとめて設定して、同時に処理することができる

 パラデータと言っても、すべてのトラックを書き出さない場合もありますよね。そういうときは、オーディオミックスダウン・ダイアログで“複数”を選択して、その下の鎖のマークをクリックすれば、プロジェクト・ウィンドウで選択している複数のトラックのみが表示されて便利です。

オーディオミックスダウン・ダイアログで“複数→その下の鎖のマーク”を選択すると、プロジェクト・ウィンドウで選択しているトラックのみが表示される

オーディオミックスダウン・ダイアログで“複数→その下の鎖のマーク”を選択すると、プロジェクト・ウィンドウで選択しているトラックのみが表示される

 ここまでの準備をしてから、晴れて2ミックスやステム・データ、パラデータの書き出しを実行しましょう。その後データを他人へ納品する場合は、ファイル名やフォルダ名に必要な情報を記入し、なるべくスッキリ見やすい状態でお渡しください。これは他人のまねですが、WAVトラックやMIDIトラックの数を記入したメモを同梱しておくと、より親切です。

フォルダー内に“wav10 midi2.txt”というテキスト・ファイルがある。これは“このフォルダーにはWAVが10、MIDIが2含まれている”ということを示しており、ファイルの中身は白紙の状態

フォルダー内に“wav10 midi2.txt”というテキスト・ファイルがある。これは“このフォルダーにはWAVが10、MIDIが2含まれている”ということを示しており、ファイルの中身は白紙の状態

 さて、今回は、デモ制作における時短ボーカル補正のお話や、書き出しのお話をさせていただきました。また次回、お会いしましょう。

 

みきとP
【Profile】2010年3月より、ネット・ミュージックのシーンにて活動を開始。ボカロPとして、ジャンルの垣根を越えた多様なVOCALOID楽曲を発表する。「いーあるふぁんくらぶ」「サリシノハラ」などのヒットを契機に海外でのイベント興行、本人歌唱でのライブやアルバム制作など、クリエイターとしてマルチに活動の幅を広げてゆく。2018年の「ロキ」や「少女レイ」などのヒットにとどまらず、音楽作家としてもアニメの主題歌やミュージカル、さまざまなアーティストへの楽曲提供を数多く手掛けるなど、幅広く活躍中。

【Recent work】

『NEPPUU〜熱風〜』
みきとP feat.初音ミク

 

STEINBERG Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 12:13,200円前後|Cubase Artist 12:35,200円前後|Cubase Pro 12:62,700円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降
▪Windows:Windows 10 Ver.21H2以降(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー、8GBのRAM、35GB以上のディスク空き容量、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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