SOLID STATE LOGIC SSL 12 〜Rock oN Monthly Recommend vol.55

SOLID STATE LOGIC SSL 12 〜Rock oN Monthly Recommend vol.55

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回は、SOLID STATE LOGIC(以下SSL)のオーディオ・インターフェース・シリーズの新モデル、SSL 12を紹介する。ソリッド・ステート・ロジック・ジャパンの松井憲佑氏と、メディア・インテグレーションの日下部峻氏から話を聞いた。

SSL 12

SSL 12|オープン・プライス(市場予想価格:75,900円前後)

SSL 12|オープン・プライス(市場予想価格:75,900円前後)

 SSL 12は、SOLID STATE LOGICからリリースされたUSBオーディオ・インターフェース。低ノイズながら62dBというワイドなゲイン・レンジを持つマイクプリと、SL4000シリーズのコンソール・サウンドを再現できるLegacy 4Kスイッチを装備した4つのアナログ入力に加え、ADAT入力1系統を搭載し、最大12chの入力が可能だ。最高32ビット/192kHz対応のAD/DAコンバーターを採用し、フロント・パネルにはHi-Z入力対応のライン入力×2とヘッドフォン出力×2を備える。

リア・パネル。左から電源スイッチ、コンピューター接続用のUSB(Type-C)、ADATオプティカル入力(TOSLINK)、MIDI入出力、スピーカーと接続するためのライン出力×4(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)が並ぶ。ライン出力はDCカップリング対応のため、CV出力が可能

リア・パネル。左から電源スイッチ、コンピューター接続用のUSB(Type-C)、ADATオプティカル入力(TOSLINK)、MIDI入出力、スピーカーと接続するためのライン出力×4(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)が並ぶ。ライン出力はDCカップリング対応のため、CV出力が可能

●SSL 12は、SSLのUSBオーディオ・インターフェース・シリーズに新たに加わった製品です。前モデルのSSL 2やSSL 2+からどういった部分が進化したのでしょうか?

松井 SSL 2、2+は、3年前のNAMM Showで発表されました。SSL 12は前モデルに比べてチャンネル数が増えただけのように見えると思いますが、実際はこの3年にわたってユーザーの方々の意見を取り入れて進化させ、中身は全然違うものになっているんですよ。特に大きな変化はソフトウェア・ミキサーで本体内部のルーティングができるようになったことですね。SSL 2や2+は“持ち運べるSSL”というのが開発のテーマだったのですが、SSL 12はそれよりももっとスタジオライクな製品になったという印象です。

 

●マイクプリはSSL 2や2+と同じものですか?

松井 そうですね。全く同じです。この価格帯では考えられないほど良い音がすると言われていました。SL4000シリーズの音を再現する4Kスイッチでキャラクターを変えられるというのもすごく評判が良かったので、そのままSSL 12にも搭載しています。新しいのはローカット・スイッチが付いたというところだけですね。

 

●低ひずみなのにワイド・レンジというのが大きな特徴です。どうやって実現されたのでしょうか?

松井 マイクプリのレンジが広くてS/Nが大きいというのは、SSLのすべての製品に共通する大きなテーマの一つです。また、原音を損ねることなく、どんなソースにも対応できるのも特徴で、こういった品質を低価格帯のものにおいても妥協していないんですよ。コンソールと全く同じマイクプリを搭載することは難しくても、同じ考え方でこのオーディオ・インターフェースを作っていますね。

日下部 SSL 2や2+が発売されたころから、このマイクプリに対するお客様からの評判はかなり良くて、マイクプリとしてアウトボードの一つのように使用されている方もいました。録りをメインにしている方に多く選ばれている印象です。SL4000シリーズのサウンドは4Kスイッチでかなり再現されていると思いますし、キャラクター付けができつつ、クリアで濁らないサウンドが手に入るというのは、ほかの製品だとなかなかありません。

 

●4Kスイッチを押すと、本体の内部で何が変化するのですか?

松井 DSPが入っていると勘違いされている方も多いのですが、実際は完全なアナログ回路で、入力された音に倍音を付加していく装置が入っているんです。ヘッド・アンプで音にキャラクターを付けるためのVHDという回路は20年ぐらい前からSSLのコンソールに搭載されているのですが、それと動作原理はかなり近くて、原音に対して倍音を付加していき、音の厚みを作る仕組みです。本来のSSLのヘッド・アンプは透明感がある音なので、そことの色づけの差はかなりあるのかなと思います。

 

●4Kサウンドにお薦めのソースは?

松井 アコースティック・ギターにかけるとボディの鳴りが良くなります。また、ディストーションやオーバー・ドライブがかかったエレキギターは、まさにヴァン・ヘイレンとか、ボン・ジョビ、メタリカのような世代をほうふつさせる太い音にすることができますよ。

日下部 個人的には女性ボーカルなど、キラッとさせたいものや派手に聴かせたいものを録るときにも、4Kスイッチを入れて味付けをするといいんじゃないかと思います。

 

●モニター音についてはいかがでしょうか?

日下部 出音の特徴については、D/Aでサウンドが大きく変わることはなく、原音をそのまま素直に出してくれる印象です。この価格帯のオーディオ・インターフェースは、D/Aにキャラクターを付けるというところに力を入れているメーカーが多いのですが、そういった色づけが無くフラットなので、モニター用として使いやすいと思います。

松井 実は、SSL 12のAD/DAコンバーターは、SSL 2や2+とは全く違うものなんです。32ビット/192kHzに対応していて、クオリティがかなり上がりました。実際ブラインド・テストを行ってみると、そのクオリティの差に気が付く方がとても多いです。ヘッドフォン・アンプについては、SSL 2や2+の時点でかなり評判が良くて、PAエンジニアの方がヘッドフォン・アンプだけ使用されているというケースもあったのですが、SSL 12はさらに良くなっているという話をユーザーの方々から聞いています。

日下部 以前はSSL 2や2+をマイクプリとして使い、AD/DAコンバーターは別のものを使うという方もいらっしゃいました。SSL 12は出音の品質が上がったので、SSL 2や2+を使われている方にもアップグレードをお勧めしたいです。

 

●先ほど、ソフトウェア・ミキサーでルーティングできるようになったというのが一番大きな進化だとおっしゃっていましたね。

松井 SSL 360°というSSLのハードウェアを制御する無償の管理アプリがあり、そこにSSL 12用のソフトウェア・ミキサーが追加されました。これをパソコンにインストールしてつなげば、SSL 12本体のルーティングをソフトウェア・ミキサー上で行えます。ループバックをどちらのヘッドフォンに返すか、入力信号をどこに送るかなど、モニター・ミックスをソフトウェア内で作ることが可能です。SSL 12をこのソフトウェア・ミキサーと一緒に使うことで、モニター・コントローラーのように柔軟な使い方ができるようになりました。

日下部 アナログ・コンソールのように1画面にまとまっているので見やすいです。どのアウトにどの信号を送るのかというのがアサインしやすいですね。4chあるマイク入力を、マイクプリをバイパスしてライン入力としても使用できるという点も相まって、ハードウェア・インサートを行いたい方にはとても便利だと思います。SSL 12は、入出力が十分にあり、モニター・コントローラーのような使い方もできる。ミックスにもレコーディングにも使いやすいですね。

SSLのハードウェアをコントロールする無償の管理ソフト=SSL 360°に搭載された、SSL 12のソフトウェア・ミキサーの画面。ループバックの設定や、ヘッドフォン出力インピーダンスの変更など、ルーティングや機能のカスタマイズが行える

SSLのハードウェアをコントロールする無償の管理ソフト=SSL 360°に搭載された、SSL 12のソフトウェア・ミキサーの画面。ループバックの設定や、ヘッドフォン出力インピーダンスの変更など、ルーティングや機能のカスタマイズが行える

 

●トークバック・マイクが搭載されたのも大きな変化です。

松井 トークバック・マイクもソフトウェア上でルーティングできるので、オンラインでボーカルを録るときに使うのも面白いと思います。コミュニケーション機能が充実するのは大事なことですね。意外とこの価格帯のオーディオ・インターフェースにはトークバック・マイクが付いていないことが多いです。あるとすごく便利ですよ。

日下部 トークバック機能はモニター・コントローラーに付いていることは多いですが、オーディオ・インターフェースとは別でそろえないといけないというのが煩わしいですよね。やはり自宅や小規模なスペースだと、なるべく一つにまとめたいという方が多いです。

 

●本体の操作性について、端子がリアとフロントに分けられ、使いやすそうな印象を受けました。実際はいかがでしたか?

日下部 SSL 2や2+のユーザーの多くが“ヘッドフォン端子は前側がいいな”とおっしゃっていました。インストゥルメント入力についても手前にあった方が使いやすいので、これはかなりうれしいアップデートです。その他スイッチやノブなども詰まりすぎず、すごく触りやすくなっていると思います。

松井 SSLはコンソール・メーカーなので、音質と同じくらいワークフローを重視しています。ツマミの位置や色、ツマミ同士の隙間や、スイッチにどんな素材を使うかなど、どの製品においても気を配っているんです。ヘッド・アンプのツマミが赤くて、モニターのツマミは青、ヘッドフォンは黒というのも、パッと見の視認性を良くしている部分。これは、SSLが40年そういうものを作り続けてきたことの集大成ですね。

日下部 スイッチを押してLEDが点灯してくれるのもいいですね。今どれがオンになっているのかがすぐに分かります。

 

●SSL 12にはさまざまな機能が追加され、音楽制作においてより使いやすくなったことが分かりました。

松井 SSL 12は2や2+に比べてよりプロフェッショナルライクになった製品だと思いますね。ソフトウェア・ミキサーでヘッドフォン出力のインピーダンスを変えられたり、CV入力のモジュラー・シンセなどをコントロールできるDCカップリング出力に対応していたり、細かい機能も満載です。

 

●最後にどんな方にお薦めしたいかを教えてください。

松井 一番お薦めしたいのは、ホーム・スタジオをグレード・アップしたい人です。オーディオ・インターフェースがあって、モニター・コントローラーがあって、あれもこれもあって……というような環境だった方が、一つで多くの役割をこなすSSL 12を導入すれば、ワークフローがさらにステップアップすると思います。

日下部 なるべく機材は少なくまとまったものがいいというアーティストの方などにお薦めしたいです。また、機能が多く何でもできるので、とにかくいろいろやってみたい方にもぜひ使っていただきたいですね。

ソリッド・ステート・ロジック・ジャパンの松井憲佑氏
メディア・インテグレーションの日下部峻氏
ソリッド・ステート・ロジック・ジャパンの松井憲佑氏(写真左)、メディア・インテグレーションの日下部峻氏(同右)

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