吸音材「iwasemi」の効果をトーク配信&宅録でチェック!

吸音材「iwasemi」の効果をトーク配信&宅録でチェック!

Pixie Dust Technologies, Inc.が手掛ける吸音材、iwasemiシリーズ。そのコア・テクノロジーである音響メタマテリアル技術は、ABS樹脂やステンレス鋼、アクリルなど、さまざまな素材に吸音効果を与えるもので、デザイン性や強度に富んだ吸音材を生み出せる。現在のラインナップは、500Hz~1kHzといった“話し声の帯域”に絞った硬質吸音材、iwasemi RC-α、HX-α、SQ-αの3製品である。前者2つは透明なので、ガラスに貼ることもできる。上の写真をご覧の通り、グラスウールやウレタンを使った吸音材とは異なり、設置する空間になじむ意匠も魅力だ。この企画では、iwasemiシリーズ開発者への取材を元にした技術解説、そしてiwasemi SQ-αの試用レビューをお届けする。

※iwasemi及び関連するロゴは、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の商標又は登録商標です
※iwasemi HX-α は、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社と株式会社イトーキの共同開発品です

音響メタマテリアル技術とは?

iwasemi RC-α

iwasemi HX-α

iwasemi SQ-α

上から、iwasemi RC-α、iwasemi HX-α、iwasemi SQ-α:すべてオープン・プライス(価格はオフィシャルWebサイトから問い合わせ)

共鳴器型吸音で広帯域をカバーする

 一般的に、壁面の吸音にはウレタンフォームやグラスウールのような、空気を含む素材のものが用いられることが多い。これらは“多孔質型吸音”と言われ、音=空気の圧力変動が入ると、素材の繊維部分が揺れ、エネルギー損失が起こって音が吸収される。ただし、その“繊維が揺れやすい周波数”=吸収しやすい周波数は材料の種類で決まる上、高い周波数ほど吸収されやすいという特性がある。“低域の吸音は難しい”とよく言われるのはこうした理由だ。

 一方、iwasemiの考え方の基本にあるのは、“共鳴器型”。基本的には音楽室の壁面に設けられた吸音有孔ボードと同じで、ヘルムホルツ共鳴という原理を用いている。共鳴構造の開口部周辺で空気が震えて熱に変わり、そのエネルギー損失によって吸音するというものだ。この方式では、素材を問わない代わりに、特定の共鳴周波数帯域でしか吸音できないのが一般的であった。

 iwasemiでは、主に電磁波や光の分野で活用されていたメタマテリアル技術を、音波に応用。メタマテリアル技術とは、構造を適切に設計することによって、元の素材の特性とは異なる特性を実現する技術のことで、光の分野では屈折率をコントロールして後ろが透過しているように見える素材の研究が進んでいる。

 iwasemiでは、吸音したい周波数帯域の音の波長に合わせて共鳴構造を複数設け、穴の大きさや空洞の大きさ、配置などを最適設計。一般的な共鳴器型の弱点であった“特定周波数のみの吸音”を拡張し、吸音する帯域を制御している。光や音などの波動を取り扱うことに長じた、Pixie Dust Technologies, Inc.のノウハウがここに生きているという。

共鳴構造を複数、設けたところの模式図。開孔部や空洞の大きさ、それらの配置を吸音対象の帯域に向けて最適化することで、性能をコントロールする

共鳴構造を複数、設けたところの模式図。開孔部や空洞の大きさ、それらの配置を吸音対象の帯域に向けて最適化することで、性能をコントロールする

素材や帯域を問わない“形状由来の吸音”

 iwasemiは現在、バイオPC製で直方体のRC-α、ポリカーボネート製で六角形のHX-αという、ガラス面にも張れる透明素材のものが2種、そしてABS樹脂製でウォール・パネルのアクセントになるSQ-αという、計3種の製品がある。いずれも素材やデザインが異なるものだが、500Hz~1kHzを吸音するというその効果は変わらない。同じ目的の製品がなぜ3タイプもあるのかと言えば、それは使われるシチュエーションに合わせて製品を選択できるようにしているため。その背景にあるのは、iwasemiの基本となる音響メタマテリアル技術が、材質に縛られないという特徴だ。

 なお、現在のラインナップが500Hz~1kHzをターゲットとしているのは、声の不要な響きを抑えるのが目的だから。音楽用途ではなく、普段の生活や会議などで最も気になる声の聴こえ方をコントロールするためだ。実は、同社はではさまざまな帯域の吸音に有効な音響メタマテリアル構造をライブラリー化しており、応用が利くようにもしているという。そうした展開は今後の製品に期待したいところだが、声=ボーカルの帯域に効果があるという現在のiwasemiも、音楽用途に応用できる可能性は十分にあるのではないだろうか。

iwasemi SQ-αの吸音性能を示すグラフ。人の話し声にあたる500~1,000Hz(1kHz)の平均吸音率が0.8を超えており、高い吸音性能を有していることが分かる

iwasemi SQ-αの吸音性能を示すグラフ。人の話し声にあたる500~1,000Hz(1kHz)の平均吸音率が0.8を超えており、高い吸音性能を有していることが分かる

Check & Review:トーク配信&宅録に、iwasemi SQ-αを試す

 約8畳の自宅風スタジオを使い、ミュージシャンが家でトーク配信や宅録を行うシチュエーションを再現。iwasemi SQ-α(以下SQ-α)を設置する前後で、ルーム・アコースティックがどのように変わるのかを確かめた。テストに参加してくれたのは、エンジニアの福田聡氏とアーティストのシンリズム。トークとアコギ弾き語りでSQ-αの効果を検証していただいたので、インプレッションをお届けしよう。

無駄な残響を抑えつつトークも演奏も心地よく響く

福田 シンリズムさんが弾き語りを録音しているときに、部屋鳴りも確認していたのですが、SQ-αを貼る前はワンワンと響いていたのが、貼った後は想像以上に抑えられていて、びっくりしましたね。500Hz~1kHzにフォーカスしているということで、その辺りがしっかり収まっていて、“音の裏側”が聴こえるというか。無駄な残響がなくなってスッキリとしました。音楽的にも心地良かったですよ。吸音材の素材がウレタンなどの場合、高域の成分が減るため、圧迫感が強くなってしまうんですけど、SQ-αは高域成分をカットしないので自然な響きに感じたんでしょうね。

シンリズム ヘッドフォン・モニターでの印象としては、まずSQ-αを貼った後は声が近くなったと感じました。トークでテストしたときは、しっかり吸音されたラジオ・ブースで話している感覚でしたし、弾き語りの際もちゃんとした録音環境で録っている印象でしたね。福田さんが言うように無駄な残響音がカットされ、パフォーマンスしやすかったです。歌に関しては、SQ-αを貼る前は声を張ったときの高域成分が少し耳障りに聴こえましたが、吸音したらすっきりしました。録音データを聴き比べてみると、その違いが顕著に分かりましたね。実際に配信した場合でも、視聴者は聞き取りやすくなっていると思いますよ。

良いマイクに変えたような変化。強くタイトになるので制作にも有効

福田 トークは、まさにラジオ番組のような、整った音響に聴こえましたね。

シンリズム そうですね。使っているマイクを変えていないのに、良いマイクで録っているようにも聴こえましたし。

福田 録っている場所もマイクの位置も変えていないのに、しっかり変化が感じられました。SQ-αは、声の帯域に特化した吸音材ということですが、アコギの音にも有効だと思います。部屋の構造上、コーナーに余計な反射音があったのですが、すっきりとしたし、音にエッジ感が出ました。

シンリズム はい、ちょっとごちゃついて聴こえたギターの音が、締まって聴こえましたね。今回は、マイク1本で配信のシチュエーションを再現しましたが、楽器用にもマイクを立てて録音すれば、作品作りにも有効だと思いました。

福田 僕も有効だと思います。先ほど、SQ-αの高さにギターのサウンド・ホールがくるように立って演奏してもらいましたが、音が強くタイトになったので、そういった環境を作って録音すれば、制作にも生かせると思いますね。

シンリズム そうですよね。取り外しもしやすいので、場所を変えて設置すればよいですし。配信者からプロ・ミュージシャンまで、幅広い方にお薦めできますね。デザインも、自宅環境に違和感なくなじむので良いと思いました。


福田聡
シンリズム

福田聡(写真左)
フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニア。ファンクやR&Bなどグルーブ重視のサウンドをメインに、最近ではENDRECHERI、Purple Drip、佐藤竹善、賽などの楽曲を手掛ける。

シンリズム(同右)
シンガー・ソングライター。最新作はP-VINEよりリリースの『Musica Popular Japonesa』。藤井隆や中島愛への楽曲提供、流線形/一十三十一の管弦編曲、秦基博のツアー・サポート(g、k)なども務める。

製品情報