AUSTRIAN AUDIO CC8は、単一指向性のペンシル型スモール・ダイアフラム・コンデンサー・マイク。AKG CK1カプセルからインスピレーションを受けたOCC7カプセルを採用する。最大SPLは156dBで、音圧が高いソースの録音にも対応。個体による感度差が少なく、出荷されるいずれの2本を組み合わせてもステレオ・ペアとして使用可能だ。今回は、CC8のステレオ・セットを青葉台スタジオのエンジニア、中村美幸氏がチェック。バンドでのスネアの録音や、グランド・ピアノへのステレオ・マイキングでテストをしてもらった。
撮影:小原啓樹
中低域のゴリっとしたところがしっかり録れる 音も利便性もCC8ならではの役割があります
100〜350Hz辺りの暴れが気にならない
ドラム・レコーディングで、スネアのトップとボトムをそれぞれ試しました。今まではスネアをコンデンサー・マイクで録ると少し腰高になるイメージを持っていたのですが、CC8は中低域のゴリっとしたところがしっかり録れますし、腰が低めでも変にモコモコしないのが特徴的でした。ほかのマイクだと必ず切る100〜350Hzくらいの暴れが気にならなかったんです。しっかり太いけど荒さはない印象でした。指向性は割と鋭いので、かぶりはそれほどありませんでした。ドラムに立てたほかのマイクとのなじみも良かったですね。
少しクリスピー感が欲しいときや、空気感を重視するナチュラル系のドラムでスネアのオンマイクとして使ったり、ステレオでドラムのトップに立てたり、指向性の鋭さを生かしてハイハットに立てるのも良さそうです。PADを−20dBまで入れられるのもいいですね。演奏によっては−10dBのPADでスネアを受けきれないときがあったので。カプセルを外さずにPADがスイッチで入れられるのも便利です。
中域の“実”となる部分が安定して録れた
CC8を2本使って、グランド・ピアノの録音も試しました。高域側と低域側のハンマーの上に立てたところ、中域の“実”となる部分が安定して録れたんです。打鍵がはっきり聴こえるので、ピアノのメインとなる周波数帯でしっかりメロディを聴かせたいときに使えそうですね。味付けが強いマイクプリを組み合わせて使うと、より個性が出ました。高域がきらびやかに録れるマイクと混ぜて使うのもお勧めです。
最大SPLが156dBなので高い音圧にも対応できるし、音のキャラクターも踏まえると、ギター・アンプにも試してみたくなりました。普段ギター・アンプには、ダイナミック・マイクとリボン・マイク、高域をキラッとさせたい場合はコンデンサー・マイクも混ぜるのですが、CC8はリボン・マイクとコンデンサー・マイクの役割を1本で担えるかもと期待しています。
あとは複数本のCC8をライブ収録のオーディエンス・マイクにも使ってみたいです。リーズナブルなので耐久性が求められる現場でも思い切り使えますし、ライブではよくマイク側でローカットをするので、60Hzのローカット・フィルターも役立ちます。指向性の鋭さは歓声を録るのにも良さそうです。
今回試してみて、音のキャラクター的にも、利便性の面でもCC8ならではの役割があると感じたので、どのマイクを使うか選ぶときに“CC8が欲しいから使う”となりそうですね。