AUSTRIAN AUDIOのアクティブ・ダイナミック・マイクOD5とコンデンサー・マイクOC7。ともに回転機構を採用し、ヘッドを220°まで回転させることができるというその構造からも、楽器録音向けのマイクとなっている。今回のレビュワーはエンジニアの美濃隆章氏で、自身のスタジオでのバンド録音にてチェックを敢行。その印象を詳しく伺った。
撮影:小原啓樹
楽器録音の最適な構造として考えられている。欲しい成分がきちんと録れるマイクです
OC7はミックスでのコンプのノリが良い
本体を触ってみて、220°の回転機構を採用しているところにすごく利便性を感じました。レコーディングの際、ドラムはシンバルなどのスタンド類が密集していたり、意外と思っているところにスタンドを立てられないことが多いんです。そういった場合でも、ヘッドをくるっと回してピンポイントで狙いたい角度に調整できる。横にネジが付いているので、ピッタリ止められます。楽器を録音する際の取り回しに最適な構造として、きちんと考えられているんでしょうね。
最大音圧レベルが、OD5は151dB SPL、OC7が154dB SPL、PADを使えば両機種とも160dB以上という高い値だったので、大音量のソースにも向いていると思い、スネアに立ててみました。斜め上から狙うようにOC7を立ててみたところ、ギラギラした耳障りな高域感はなく、マイクの裏側の景色まで見えるような奇麗な明瞭さがありました。狙った通りの大きなレンジの音像が録れましたね。
今回録音したのは、ギターがかなりひずんだパワフルなバンドでした。スネアが埋もれずに華やかさも出て、OC7がバッチリとハマったように思います。OC7での録り音に不要な周波数成分が含まれないためか、ミックスでのコンプのノリも良く、音が素直に持ち上がりました。今回は試せなかったのですが、タム回りの録音でも活躍してくれるでしょう。
ナチュラルで重心の低いOD5
OD5はギター・アンプのキャビネットに、3〜5cmほど離したオンマイクで立てました。重心がやや低い印象で、高域の成分はOC7より少ないのですが、かといって上がないわけではなく、とてもナチュラル。普段はエレキギターのピーキー な部分にディエッサーやダイナミックEQなどをかけることもあるのですが、OD5にはその必要がなく、今回録音したソースの太いサウンドを捉えることができました。
どちらかが優れているというわけではなく、2本それぞれにいいところがあります。アコギを自分で弾いて両方試してみましたが、バンドの中でも粒立ちよくするならOC7、ソロならどっしりしたOD5、というように、ソースや曲によって使い分けるのがいいと思います。2本を並べて録って、好みのサウンドの方を採用するのもいいですね。
ビンテージ・マイクにはいわゆるマジックもありますが、相性や扱いにくさもある。だったらOC7やOD5を使って、クリアでワイド・レンジな音を録ってから、おいしい倍音をサチュレーターで足すのもいいかなと。求めやすい価格設定ですが、初心者向けとは全然思わないし、プロの現場でも十分に使えます。欲しい成分がきちんと録れるマイクです。