パワード・モニタースピーカーでありながら、ワイヤレス接続やバッテリー駆動に対応するAIAIAI Unit-4 Wireless+。独自のワイヤレス通信技術W+Linkにより専用の周波数帯域を使うため、16msの低レイテンシーで、ロスレスオーディオを安定的に伝送できる。付属のX02トランスミッターをパソコンにUSB-C接続するか、X02のUSB-C端子または3.5mm端子にオーディオソースを入力すれば準備完了だ。W+Linkのほか、Bluetooth 5.2や有線接続をサポートし、スマートフォンや楽器をつなぐことも可能。電子音楽/テクノを手掛けるプロデューサー/シンガーのmachìnaがレビューする。
Overview|AIAIAI Unit-4 Wireless+
4インチウーファーを備えるワイヤレス接続の2ウェイ・パワードモニター。独自のW+Linkテクノロジーでパソコンやスマートデバイスとの通信を行い、専用の周波数帯域で非圧縮音声の伝送が可能。16msという低遅延も魅力だ。W+Linkでの通信には、付属のX02トランスミッターを使う。❶パソコンと直接ワイヤレス接続する方法、❷オーディオI/Oやシンセ、グルーブボックスなどの出力をX02の3.5mm端子に入力して伝送する方法、❸Apple iPadまたはAndroidタブレット/スマートフォンにX02をUSB-C接続して通信する方法、❹Lightning仕様のiPad/iPhoneにLightning-3.5mm端子のケーブルをつなぎ、X02の3.5mm端子に入力してから伝送する方法など多用途だ(❷と❹の場合、X02にはUSB-C端子から別途、電源供給する必要あり)
配線に不慣れな若い世代にも良いと思う
“モニター用のスピーカーを完全にワイヤレス化した”というのが何より斬新だと思います。世界中のメーカーを見渡しても、かなり早い取り組みではないでしょうか。DAWと併用する際、オーディオインターフェースやスピーカーケーブルが要らないので、設置場所を選びません。その柔軟性が素晴らしいし、パソコンメインで音楽を作る人が増えている中、配線に不慣れな若い世代にとっては特にストレスフリーだと思います。ワイヤレス接続は簡単で、私の使うAbleton Liveの場合はオーディオ出力デバイスの設定欄で“AIAIAI X02 W+ Link Transmitter”を選ぶだけ。X02トランスミッターを使用して、スマートフォンとも超低レイテンシーでワイヤレス接続できるから、Ableton Noteのような作曲アプリでスケッチする人にも便利ですね。
ウーファー径は4インチ、重量は1台あたり2.5kgで、かばんに入れて持ち運んでも重いとは感じなかったです。モニタースピーカーとしてはコンパクトなので、ツアー先に持っていってホテルで作業するようなときに良さそうです。特にダンスミュージックのプロデューサーが出先で使うなら、ヘッドホンよりもUnit-4 Wireless+の方がいいと思います。ダンスミュージックってクラブでかかる音楽だから、空間で鳴らしながら作らないとグルーブを調整しにくいですしね。
盛り上がる感じの音だから曲作りに向く
肝心の音質は、フラットというより気持ち良く鳴ってくれるという印象。低域が効いていて、さすがにローエンドは見えないものの、キックとベースのバランス調整ができるくらいにはファットに聴こえます。また、高域の方にはクリスプな(しゃきっとした)感じがありますね。レンジが十分に広くて、聴いていて楽しい音。私ならダンスミュージックのミックスにも使うと思いますが、どちらかと言えば曲作りに向く気がします。音量も、自宅では最大値の半分くらいで非常に大きいと感じたので、かなり出せるんです。
聴いていて楽しいという点では、私が普段から愛用しているAIAIAIのヘッドホンTMA-2 Studio Wireless+に通じるものがあります。AIAIAIのサウンドキャラクターなのかもしれませんが、曲がマスタリングから上がってきたときのような、気分が盛り上がる感じの音作りです。
Unit-4 Wireless+は、機材としてシンプルに作られているのが素晴らしいです。温かい季節になったら屋外でパーティする機会があるかもしれないので、そこで音楽を鳴らすのにも使ってみたい。内蔵のバッテリーが2時間の充電で20時間も駆動するので、電源の面も安心ですからね。
machìna
電子音楽家/シンガー。シンセを駆使した実験的なサウンドやフロア向けのテクノなど、幅広く制作。Bicepとの共作、ドイツの名門TresorやUKの人気レーベルUnknown To The Unknownからのリリースでも知られる