フックアップが運営するオンラインストアbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回はUNIVERSAL AUDIOのUADプラグイン/UADxプラグインを集めたエフェクト/インストゥルメントバンドル4種類=UAD Essentials Edition Bundle / UAD Producer Edition Bundle / UAD Studio Edition Bundle / UAD Signature Edition Bundleを紹介します。いずれもMac/Windowsで動作し、AAX/AU/VSTプラグインとして使用可能です。さらに11月にリリースされたばかりで、上記UAD Signature Edition Bundleに収録されているルームモデリング・プラグイン、UAD Sound City Studios Plug-Inもレビュー。サウンドシティ・スタジオとは、ニルヴァーナ『ネヴァーマインド』をはじめ、メタリカ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの作品などロックの名盤を数多く生み出してきた“伝説”と言われるレコーディングスタジオです。
UADプラグインとUADxプラグインの両バージョンを収録
UNIVERSAL AUDIOのプラグインには、UADプラグインとUADxプラグインの2種類が存在します。UADプラグインは、同社のオーディオインターフェースApolloシリーズやアクセラレーターUAD-2 Satelliteといったハードウェアが必要です。UADxプラグインは、それらのハードウェアが不要かつ、コンピューターのCPU上で動作します。今回紹介するバンドル4種類には、両方のバージョンが含まれています。
UAD Essentials Edition Bundleは、シンセのPolyMAX SynthやEQのPultec EQ Collectionといった“必須”エフェクト/インストゥルメント11種類をパッケージ(画面①)。
UNIVERSAL AUDIOが得意とするアナログトーン・シミュレーション技術により、リアルなサウンドを体感できます。UAD/UADxプラグインの使い心地を体験したいエントリーユーザーに最適です。
UAD Producer Edition Bundleは22種類のエフェクト/インストゥルメントを同梱したプロデューサー/クリエイター向けのバンドル(画面②)。
現代の音楽制作には欠かせないシンセやピアノなどのインストゥルメントから、コンプ/リミッターの1176 Limiter Collectionといったスタジオグレードのエフェクトまで網羅しています。
UAD Studio Edition Bundleは33種類のエフェクト/インストゥルメントで構成され、曲のクオリティを商品レベルに仕上げたい方や、ミックスを追い込みたい方に向けたバンドル(画面③)。
リミッターのFairchild Tube Limiter CollectionやプリアンプのManley Tube Preampなどを収録しています。
最後はUAD Signature Edition Bundle(画面④)。
beatcloudのWebページでは“UADxプラグインのベスト版”とうたわれており、44種類のエフェクト/インストゥルメントを含んでいます。個別に購入すると9万ドル相当(12月11日の換算レートで約130万円!)の価値があるとのこと。これからレビューするUAD Sound City Studios Plug-Inは、このバンドルに含まれています。
サウンドシティ・スタジオAの音響特性を再現 3つのセレクターに最大3種類のマイクを設定可能
UAD Sound City Studios Plug-Inは、サウンドシティ内にあるスタジオAの音響特性を再現したプラグイン。立ち上げると、同スタジオを模した仮想のスタジオビューが表れます(画面⑤)。
画面最上段ではRE-MICモード/REVERBモードの切り替えや、ドラム/ギター/ボーカルといった音源の選択が可能です。
RE-MICモードを選択すると、全オーディオ信号が仮想サウンドシティ・スタジオ内に設置されたマイク、プロセッサー、ルームを再現したサウンドになります。一方のREVERBモードでは、仮想スタジオ内のアーリーリフレクションとディケイのアンビエンスのみを聴くことができ、短いリバーブエフェクトとして機能します。
同画面下部にはCLOSE/ROOM1/ROOM2という3つのマイクセレクターを搭載。それぞれ最大3つのマイク、またはマイクペアを設定可能です。CLOSEではマイクと音源の距離が最も近く、ROOM 1とROOM 2ではマイクと音源の距離がCLOSEよりも遠くに設定されているため、アンビエンスをより多くキャプチャーします。
筆者としては、UAD Sound City Studios Plug-Inはステレオトラックやバスでの使用に適していると思ったのでドラムのバスで試してみることに。するとサウンドが一気に重厚な雰囲気に。本物のスタジオさながらの空気感と雰囲気が漂い、一聴して低域に重さと力強さが感じられます。
ドラム音源に対しては、Live/Tight/Cornerの3つの設定が選択可能。Liveは広がりのある自然な反射音で、Tightは音響板を使用した響きになります(画面⑥)。
Cornerは非常に豊かな反射音で、最も活力のあるサウンドといった印象です(画面⑦)。
CLOSE/ROOM1/ROOM2という3つのマイク設定だけでも多彩な音像を演出できますが、画面上でマイクをドラッグして位置変更することでサウンドがリアルに変化します。
またマイクごとの特性の差も明確に感じられ、ミックスに合わせてサウンドを追い込むことが可能です。指向性パターンも切り替えることができ、ステレオ幅や奥行きの変化もはっきりと分かります。
サウンドシティ・スタジオのカスタムコンソールやビンテージマイクなどの質感までもエミュレート
ドラム以外でも試してみましょう。例えばバックコーラスでは立体的なサウンドへ一気に昇華し、非常に華やかな雰囲気に仕上がりました。また、打ち込みのストリングスでは平坦なサウンドから豊かで美しい響きに変化し、元の素材の雰囲気とは全く異なるリッチなサウンドに(画面⑧)。
ピアノでは、ステレオ・チューブマイクAKG C 24のモデリングであろうC24マイクの美しい響きが心地良く、ずっと聴いていたくなるほど気に入りました。打ち込みの音源を、リアルなピアノサウンドへ見事に変身させることができるでしょう(画面⑨)。
トータルなサウンドメイキングに優れたマスターエフェクトも見逃せません(画面⑩)。
これらは単なるEQやコンプではなく、サウンドシティ・スタジオのコンソールやアウトボードのエミュレーションサウンドなのです!
DYNAMICSモジュールは6種類のモードを搭載。高域の抜け感を再現できるAIRや、サウンドシティ・スタジオ独自のサウンドをエミュレートしたENCODEが特に個性的だと感じました。これらを用いることで、同スタジオのきらびやかな空気感を音源に自在に付加することが可能です。
UAD Sound City Studios Plug-Inを用いれば、どの音源でも前例のないほど自然なステレオ感、リアルな奥行き感が得られると思いました。UAD Sound City Studios Plug-Inはただのルームリバーブではありません。最大の魅力は、サウンドシティ・スタジオの響きを軸に、同スタジオにある1970年代の英国製カスタムコンソールやビンテージマイク、アウトボード類を通ったサウンドの質感や色合い、雰囲気を加えられることにあります。名だたるミュージシャンたちがこのスタジオを選んだ理由を、UAD Sound City Studios Plug-Inを通して体感してみてください。
UNIVERSAL AUDIO UAD Essentials Edition Bundle / UAD Producer Edition Bundle / UAD Studio Edition Bundle / UAD Signature Edition Bundle
beatcloud価格:beatcloud価格(2023年12月時点)/UAD Essentials Edition Bundle:43,650円、UAD Producer Edition Bundle:58,250円、UAD Studio Edition Bundle:72,850円、UAD Signature Edition Bundle:87,450円
Requirements
■Mac:macOS 10.11〜10.15、intel CoreプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
■Windows:Windows 10〜11、intel CoreもしくはAMDプロセッサー
■共通:1〜10GBのSSD
■対応フォーマット:AAX/AU/VST
Hiro(STUDIO PRISONER)
【Profile】METAL SAFARIのギタリストを経てプロデューサー/エンジニアに。録音〜マスタリングまでこなす。NOCTURNAL BLOODLUSTやUnlucky Morpheusなど多くのメタルバンドを手掛ける。