西村サトシが使うCubase Pro 10.5 第1回〜トラック管理やフェード・カーブを使ったCubaseでの波形編集術

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 皆さん、はじめまして。北海道を拠点に活動するエレクトロニカ・ユニット、木箱でプログラミング/ギターを担当している西村サトシです。普段はPA、レコーディング/ミックス・エンジニア、レーベル運営などにも携わっています。今回はこれらの経験を生かし、僕なりのSTEINBERG Cubase Pro 10.5の使い方をご紹介します。

 

フォルダートラック機能で
複数トラックを一括管理/編集する

 僕がCubaseを使い始めたのは、今から約20年前の話。サンレコを読み始めたのもそのころで、当時CubaseはCubase VSTという名前でした。現在では、音楽制作からライブでのマニピュレーションに至るまで、すべてCubaseで完結しています。今回は木箱の楽曲「カゴの中の鳥」のプロジェクトを使用し、レコーディング後の波形整理や編集にともなう便利な使い方を解説していきましょう。

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約20年前に筆者が購入したCubase VST/32。現在は専用インストーラーを使用してダウンロードする方式だが、当時はCD-ROMやマニュアルなどを同梱したパッケージで発売されていた


 まずは、各パートやドラム・パーツの位相を合わせていくところから始めます。ご存じの方も多いと思いますが、スネアのトップ/ボトムは逆相関係にあるので、そのまま再生すると芯の無いスカスカな音になってしまうのです。


 位相反転を行う方法は、まず反転させたいイベントを選択し、メニュー・バーにある“Audio”から“位相を反転のオン/オフ”をクリックするだけ。ちなみにスネアのトップ/ボトムではタイミングがほんの少しだけずれているので、こういったところも手作業で合わせていきます。

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位相反転機能を用いて、各パートやドラム・パーツの位相を合わせていく。絶妙なタイミングのずれは、手作業でイベントを動かして調整


 次に紹介したいのは、さまざまなトラックを1つのトラックにまとめることができる“フォルダートラック”という機能。これはトラックの整理や管理に役立ちますし、複数のトラックを一括して編集することも可能です。ドラムのマルチトラックなどに使うとプロジェクトがすっきりと見やすくなり、作業効率も一気に上がります。


 フォルダートラックの作成手順ですが、メニュー・バーにある“プロジェクト”から“トラックを追加→フォルダー”を選択すればOK。するとプロジェクトゾーンにフォルダートラックが作成されるので、ここに収納したいトラックをドラッグ&ドロップで簡単に入れていくことが可能です。また録音ボタンやソロ/ミュート・ボタンを押すと、格納されたすべてのトラックにも同じ操作が適用されるので便利です。

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フォルダートラックを作成し、そこへ複数のトラックをドラッグ&ドロップして収納していく。グループ編集ボタン(赤枠)をクリックすると、グループ化されたすべてのトラックをまとめて編集することができるようになる


 次は“グループ編集モード”を使ってみます。これは、フォルダートラックに格納されたイベントを編集したり、範囲を選択したりすると、グループ化されたすべてのトラックが対象となる機能。これにより、キック/スネア/タムなどのさまざまなドラム・パーツを同時に編集することが可能となります。


 グループ編集モードをオンにするには、フォルダートラックにある“グループ編集”ボタンをクリック。しかし、この状態でオンにすると“このフォルダー内のトラックは、完全に同期されていません。グループ編集が失敗する可能性があります。”というメッセージが出ます。これは各イベントの開始/終了のタイミングがずれているためです。こういう場合は、分割機能を使って各イベントの開始/終了のタイミングをそろえた状態でオンにするとよいでしょう。これで、マルチトラックを一括して編集できるようになりました。

 

フェードエディターを使用して
フェード・カーブを微調整

 ここからは、各イベントにフェード・イン/フェード・アウトを描いていく作業です。デフォルトでは、選択したイベントの左/右上端にカーソルをかざすと三角形の“フェードハンドル”が表れます。それをドラッグすることでイベント上にフェード・カーブが表示され、フェード・イン/フェード・アウトを好きな長さで適用することができるのです。

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イベントの左/右上端にカーソルをかざすと、三角形の“フェードハンドル”が表れる(赤枠)。それをドラッグすることにより、フェードを施すことができる


 ちなみにトラック数が多い場合、各イベントをクリックして1つずつフェード・カーブを確認するのはとても手間がかかりますよね? そこで、プロジェクトにおけるフェード・カーブを、すべて表示させておくようにすることをお勧めします。


 やり方は簡単。メニュー・バーにある“Cubase”から“環境設定→イベントの表示→Audio”とクリックし、“イベントのボリュームカーブを常に表示”にチェックを入れるだけです。これですべてのフェード・カーブが、プロジェクト上で一目りょう然になります。快適に作業ができますので、ぜひやってみてください。

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フェード・カーブを常に表示させるには、メニュー・バーにある“Cubase”から“環境設定→イベントの表示→Audio”と選択し、“イベントのボリュームカーブを常に表示”(赤枠)にチェックをいれる。プロジェクト内すべてのフェード・カーブを認識することができる


 またデフォルトではフェード・カーブは直線ですが、僕は曲線にして使っています。理由は、フェードの長さが短い場合は曲線の方が自然に聴こえるから。直線と曲線、どちらにするかは自身で聴いて判断してみるとよいかと思います。


 フェード・カーブを変更するには、既にフェード・イン/フェード・アウトが適用された、1つまたは複数のイベントをクリックします。次にメニュー・バーにある“Audio”から“フェードエディターを開く”を選択すれば、フェードエディターが出現し、フェード・カーブを細かく調整することが可能です。

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フェード・カーブを細かく調整することが可能なフェードエディター画面。選択したイベントにフェード・インが適応されている場合はフェード・インのエディター画面(左)、イベントにフェード・アウトが施されている場合はフェード・アウトのエディター画面(右)が開く。フェード・カーブは、グラフ下のアイコンから選択することも可能だ


 フェードエディター画面中央にあるディスプレイの左上には3つのボタンが配置され、“スプライン曲線/直線に近い曲線/直線”の3種類が選択できます。また、ディスプレイ内のフェード・カーブをクリックすることでカーブ・ポイントを追加でき、そのポイントをドラッグすることで任意のカーブ形状を作ることが可能です。


 作成したフェード・カーブをイベントに反映させる場合は、画面右下にある“適用”ボタンをクリック。デフォルトとして設定する場合は画面右下にある“既定値に設定”ボタンをクリックしておくと便利です。これで、いつでも好みのフェード・カーブを使うことができます。


 そのほか、波形編集時の基本的なポイントも幾つか紹介します。まず無音部分は必ず削除しましょう。また、オーディオ同士をつなぐ場合はすべてクロスフェードで処理することをお勧めします。そして、音量が大きいと感じるところは“イベントエンベロープ”で調整しましょう。イベントエンベロープとはボリューム・カーブのことです。鉛筆ツールを使ってイベントエンベロープにカーブ・ポイントを追加し、音量を自由にコントロールすることができます。あとでコンプをかけて無理に整えるよりも、イベントエンベロープを使った方が良い結果を得られることがあるので、目的によって使い分けています。それでは、また次回にお会いしましょう!

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カーブ・ポイントを追加して音量を自由にコントロールすることができるイベントエンベロープ(赤枠)。音量が大きいと感じるところはイベントエンベロープで調整し、ノイズやボーカルのブレスなども小さく聴こえるようするのがポイントだ

 

西村サトシ

札幌在住。2010年にエレクトロニカ・ユニット、木箱のプログラマー/ギタリストとしてビクターBabeStar Recordsからメジャー・デビューする。2012年には自主レーベルkitorina recordsを主宰。サウンド・エンジニアとしても活動し、サカナクションの作品などを手掛ける。また、木箱としてはアジアを中心とした海外ツアーのほか、国内ではプラネタリウムでのライブや、森の中でのキャンドル・ライブを行っている。

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