主にオールドNEVEのクローン機をローコストで発売するスペインのHERITAGE AUDIOから、モニター・コントローラーが登場しました。日本ではまだあまりなじみのないHERITAGE AUDIOですが、レコーディング・エンジニアが立ち上げただけあり、海外では価格以上のクオリティだと高い評価を得ているメーカーです。
64段階のリレー・ラダー・アッテネーター
L/Rを個別にモノラルでモニター可能
写真を見た方がまず目を向けるであろうポイントは、オールドNEVEを想起させる赤いノブだと思います。しかし、このノブはかなりのビッグ・サイズ。NEVEのノブから全体のサイズ感を想像して買ってしまうと、予想より大きかったと思われることでしょう。
ほとんどの端子が背面パネルに集結。入力は3系統のアナログL/R(TRSフォーン)と1系統のS/P DIFコアキシャル、キューL/R(TRSフォーン)を用意。IN3はアンバランス−10dBVに変更可能です。また、Bluetooth入力にも対応しています。出力端子はすべてTRSフォーン。3系統のアナログL/Rに加えサブウーファーを1つ搭載し、ミックスL/RとキューL/Rも装備しています。ヘッドフォン端子は本体の左右に1系統ずつ実装。入力ソースを切り替えるMIX/CUEスイッチと、音量調節ノブが用意されています。
やや手前に傾斜したトップ・パネルを見ていきましょう。まずは中央のボリュームを調整するロータリー・ノブ。音量調整 は、金メッキ・リレーをマイクロ・プロセッサーで切り替える方式を採っています。これは一部の高級機で使われている構造です。実際ノブを回すとカチカチとリレーが切り替わっていく音が聴こえ、1dB単位で最大64dB減衰します。右いっぱいに回すとユニティ・ゲイン、左いっぱいに回すと音は消えて、自動的にMUTEスイッチが光る仕様です。ボリュームは一定のレベルを2パターン記憶させるLEVEL PRESET機能を実装。即座に任意のレベルでモニターできます。
特徴的な機能は、L/Rで独立したモニター・アウトのミュート・スイッチ。MUTE LおよびMUTE RをSHIFTと一緒に押すと、その信号をモノラルでモニター可能です。サブウーファーのみをミュートするMUTE SUBも付いています。
さらにトークバックも充実。内蔵マイクおよび外部からのステレオ入力を選択可能です。ボタンはミックス・アウトに流すTB MIX、キュー・アウトに流すTB CUE、両方に流すTB ALLが用意されています。
左右の分離が良く位相の狂いを感じない
高級オーディオ機器に通ずるリッチな質感
BURR-BROWN製のオペアンプを使い、極力色が付かない設計になっているとのことですが、実際に聴いてみるとスピーカーとヘッドフォン共に納得の音質。決して無色透明というわけではないのですが、いい方向に色が付いているという印象です。左右の分離が良く、位相の狂いを感じません。オーディオI/Oにモニター・スピーカーを直接つなぐより、本機をスルーさせた方が音が良いというのは不思議な感じではありますが、価格からは想像できない非常にリッチな音質。ハイエンドのオーディオ機器に共通する質感をこの製品にも感じられました。好みのキャラクターです。
APPLE iPhoneからBluetooth入力をしてみたところ、すんなりと接続できました。Bluetooth入力もアナログ出力と同様の傾向で、高級なDAコンバーターを使っているのかのようなサウンドです。メーカーの説明にもありましたが、そもそもBluetoothは非常に音質が良い規格のようで、AACをネイティブに再生するためロスが少ないとのこと。スマート・デバイスから音声を再生したい機会が増えてきた昨今、ステレオ・ミニ・プラグを使うより、Bluetooth接続の方がずっと有意義だと思います。
小規模スタジオやホーム・レコーディングなどでモニター・コントローラーの重要性が注目され始めてきたのは、ここ10年といったところですが、特に自分でミックスまでやってしまう方にはもってこいの機材だと思いました。本機より安価なモニター・コントローラーもある中、音質にこだわりたいという方にお薦めできる製品です。
問合せ:フックアップ
製品ページ:https://hookup.co.jp/products/heritage-audio/ram-system-2000
HERITAGE AUDIO RAM System 2000
オープン・プライス
(市場予想価格:100,000円前後)