「TASCAM TH-06」製品レビュー:45mm径ドライバー搭載の密閉ダイナミック型モニター・ヘッドフォン

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 国内の老舗音響機器メーカーであるTASCAMが、DJやプロデューサーをメイン・ターゲットに据えたヘッドフォンを発売するという非常に興味深いニュースが届いたので、さっそく試用させていただきました。価格からしてもエントリー向けのモデルという印象もあり、その点も踏まえて使用感をお伝えしたいと思います。

密閉性の高いイア・パッドが外音を遮断
10Hz〜26kHzのワイドな周波数特性

 まず手に取って感じたのが、黒地にシルバーをあしらったデザインの洗練性。耳をすっぽり覆うオーバー・イア・タイプで、密閉性が高く音漏れを極力抑えて外部の音を遮断してくれそうです。イア・カップは180°回転するため、頭や首にかけなくても片耳だけ押さえてモニタリングできる仕様。イア・パッドにはしっかりとした厚みがあり、クッション性を高める特別なステッチ加工が施されていて、心地良い装着感を実現しています。重さは310gと、DJ向けの製品としては平均的な重量です。

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ステンレス製のフレームを覆うイア・パッド。クッション性を高めて長時間の使用にも耐え得るよう特殊なステッチ加工が施されている

 ドライバー・ユニットには45mm径の高磁束密度型マグネット・ドライバーを採用。10Hz〜26kHzというワイドな周波数特性を実現しています。

 

 ケーブルは固定式のストレート・タイプで、長さが3mあるためDJプレイやライブでの使用時にも十分な余裕がありますね。あまり太くはありませんが、柔らかくしなやかで、ステージ上での取り回しにもきゅうくつな思いはしなさそうです。ケーブル先端のステレオ・ミニ・プラグに加え、ステレオ・フォーン変換プラグも付属しており、共にゴールド・メッキ加工が施されています。さらに、内部には一般のケーブルより高品位なOFC無酸素導線を使用しているとのことです。  

 

DJに重要なキックを鮮明にキャプチャー
マンガン製ヘッド・バンドが落下を防止

 現場での使用感をお伝えするため、早速渋谷SOUND MUSEUM VISIONでのイベントでDJプレイの際にみっちり2時間使ってみました。低域が豊かで、DJプレイに必要なキックの音をしっかりつかむことができました。一方で高域の伸びはやや控えめな印象です。低域重視な作りではありますが、出過ぎて暴れるようなものではなく、バランス良く聴こえます。許容入力は1,850mWとかなり余裕があり、爆音にさらされたクラブの現場でヘッドフォン・ボリュームをかなり上げても全く問題ありませんでした。

 

 やはり厚みがありクッション性の高いイア・パッドのおかげで、耳当たりが良く装着感は非常に良好です。イア・パッドが薄い製品の中にはドライバー・ユニットのカバーが直接耳に当たって使っているうちに耳たぶが痛くなるものもありますが、TH-06は全く心配する必要がありません。適度なホールド性の良さも好印象です。側圧が強過ぎた場合、長時間装着していると疲れますし、弱ければふとした弾みで落下したり、外音の遮断性が低くイア・パッドを手で押さえたくなるようなことが起きるのですが、TH-06は安心して使えました。DJプレイ中は両耳で聴き続けることはほとんどなく、片耳のみ、あるいは両方外してイア・パッドを耳の後ろ辺りに回して外音を聴くということが多いのですが、そのような状態で激しく頭を動かしてもずり落ちることはありません。

 

 そこはホールド性の良さだけでなく、軽量かつ丈夫で柔軟性のあるマンガン素材のヘッド・バンドもポイントです。幾ら保持性の高いヘッドフォンであってもヘッド・バンドがゴツくて重たいものだと、その重みのせいで頭を動かしているうちにイア・パッドを軸にして前後にぶれて落下してしまうものもあるのですが、TH-06はその点がうまく設計されているなと思いました。実はこれがDJプレイにおいて非常に重要なポイントで、どれだけ高級で音が良いヘッドフォンでも、容易に動いてしまうことで使い続ける気になれなかった製品を幾つも見てきましたが、TH-06なら問題ありません。欲を言えば、DJやライブのような出先で使用する際に、キャリング・バッグが付属していればさらに良かったなと思いました。

 

 自宅スタジオにおける制作でもTH-06は活躍します。前述の通り、イア・パッドは密閉性が高く音漏れが少ない上、長く使用しても疲れません。サウンド面でも低域の鳴りが豊かなため、キックとベースをしっかりと明りょうにつかむことができます。さらに中域には雑味が無くスムーズに入ってくるため、とりわけダンス・ミュージックの制作を志す方にぜひ一度試していただきたいです。  冒頭にも述べた通り、価格の事情もあってプロ仕様の高級な製品と比べると差が出てくる部分も幾つかあるかもしれません。しかし、ビギナーから中級者向けのモデルとしては満足度の高い製品なのではないかと感じました。  

 

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TH-06を装着してDJプレイを行う筆者。写真の通り、片方のイア・カップは耳の後ろに来るよう使っているが、TH-06はこのような状態でも保持性が高く落ちることがないという

 

問合せ:ティアック タスカムカスタマーサポート

製品ページ:https://tascam.jp/jp/product/th-06/top

 

サウンド&レコーディング・マガジン 2020年4月号より)

 

TASCAM TH-06

オープン・プライス

(市場予想価格:6,000円前後)

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SPECIFICATIONS ▪形式:密閉ダイナミック型 ▪周波数特性:10Hz〜26kHz ▪ドライバー口径:45mm ▪感度:94dB(±3dB) ▪インピーダンス:45Ω ▪許容入力:1,850mW ▪ケーブル:3mストレート(ステレオ・ミニ) ▪重量:310g ▪付属品:ステレオ・フォーン変換アダプター