「JBL PROFESSIONAL 1Series 104-BT」製品レビュー:Bluetooth接続に対応したクラスDアンプ搭載のモニター・スピーカー

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 スピーカーの老舗JBL PROFESSIONALから、デスクトップ・モニターの1Series 104-BTが発売されました。これは、高出力かつ豊富なアナログ入力端子を備えながらもコスト・パフォーマンスに優れた1Series 104に、Bluetooth機能を追加したモデルです。ここ数年、Bluetooth接続対応スピーカーの普及は目覚ましいものがあります。制作の現場でもリスナーの再生環境としてBluetooth接続対応スピーカーを意識した方が良さそうだと考えていたところだったので、筆者としても1Series 104-BTのチェックはタイムリーな出来事でした。 

 

同軸構造と水平120°の指向角で
広範なスウィート・スポットを実現

 

  1Series 104-BTのスピーカーとして最も注目すべき特徴は、ツィーターとウーファーを一つに重ねて組み込んだ同軸構造であることです。その最大のメリットは高域と中〜低域の発音位置が同軸上にあるため、音像の焦点がセンターで奇麗に合わせやすい点。しかし、その長所と背中合わせに、センター以外での音像や音質(聴こえ方)の変化がほかの方式のスピーカーより若干大きくなってしまうことがあります。1Series 104-BTを使用してみてまず気に入ったのが、指向角度が水平120°と広めに設計されている恩恵で、同軸にもかかわらずセンターから多少外れても音像変化が少ないことです。リスニングのスウィート・スポットが広いとも言えますね。

 

 また、ウーファーが4.5インチで重量も1台あたり約2kgとデスクトップ・スピーカーとしては大きめなため、DSPなどを使用しなくても自然な低域の量感が得られます。サイズの小さなスピーカーの場合、音量を上げていくと早々にバランスが変化してしまいがちなのですが、1Series 104-BTは実際に使用できる再生音量の幅がかなり広い点も気に入りました。底面のラバーがよくできており、自重を利用しデスク上に安定して設置でき、このことも音質に少なからず良い影響をもたらしていると思います。

 

 最大出力はマスターとスレーブを合わせて60Wですが、防音していない普通の部屋では十分過ぎるほどの音量です。価格から考えると音質は申し分ないため、プロが一般コンシューマーのリスニング環境を想定しサブモニターとして使うことはもちろん、ビギナーの方にはこのような脚色が少なく基本性能が高いモデルを強くお薦めします。

 

全入力系統を統合するALLモード搭載
Bluetooth接続の方が低域が伸びやか

 機能面で特筆すべきは、多様な入力方式に対応していることです。ステレオ入力(RCAピンL/R、TRSフォーンL/R)、AUX(ステレオ・ミニ)、Bluetoothの4つから単独で選択できるだけでなく、ALLというすべての入力をミックスできるモードも用意されています。このALLを選択すればBluetoothで接続したスマートフォンからバック・トラックを再生し、ギター用アンプ・シミュレーターとシンセをTRSフォーンとRCAピンにつなぎ、手軽にセッションをするなどさまざまな使い方が考えられます。また、AUX端子とヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)がフロント・パネルに用意されており、非常に便利です。


 今回一番興味があったのは、Bluetooth接続とTRSフォーンなどのアナログ接続時の音質の違い。複数のオーディオ・インターフェースで聴き比べをした上で共通して感じたアナログ接続の印象と比較すると、音像は上下左右共にBluetooth接続の方が少し広く感じました。特に低域はBluetooth接続の方がクリアに伸びているように聴こえます。また、わずかではありますが音像が広がった分、センターの音圧や音場全体において中域が弱くなる感じもしました。楽器の分離などはBluetooth接続に軍配が上がります。ダイナミクスも含めた全体的なまとまり感は、特に高域から中域にかけてアナログ接続の方が滑らかな印象です。凡庸な感想ではありますが、やはり全体的にBluetoothの方がデジタル的な印象を受けましたが、聴き比べをしてみた率直な感想としては、ミックス・チェックのために1Series 104-BTが欲しいなと思いました。


 デスクトップ・スピーカーには設置した際のコンパクトさや可搬性などに重点を置いた製品も多数ありますが、1Series 104-BTは明らかにそれらとはベクトルの違う“音質”と“使い勝手”に重点を置いた製品だと感じました。Bluetooth接続機能を備えたことで音楽や動画などをコンピューターやスマートフォン、タブレットで視聴する機会が飛躍的に増えている昨今、1Series 104-BTはプロフェッショナルからコンシューマーまで、それぞれのニーズに幅広く応えることができる上、リファレンスとしても使用可能なデスクトップ・スピーカーではないかと思います。  

 

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1Series 104-BTのリア・パネル。マスター・スピーカー(左)には、上からステレオ入力端子(RCAピンL/R、TRSフォーンL/R)、スレーブ・スピーカー(右)への出力端子、電源スイッチ、ACインレットが並ぶ。スレーブ・スピーカーはマスター・スピーカーからの入力端子のみ備えている

 

取扱い:サウンドハウス

※ヒビノプロオーディオセールス Div.でも104-BT-Y3として取り扱いあり。

 

JBL PROFESSIONAL 1Series 104-BT

オープン・プライス

市場予想価格:17,800円前後

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▪スピーカー構成:4.5インチ径ウーファー、0.75インチ径ソフト・ドーム・ツィーター ▪周波数特性:88Hz〜20kHz(−3dB)、60Hz〜20 kHz(−10dB) ▪最大音圧レベル:102dB ▪クロスオーバー:1.725kHz ▪最大音圧レベル:104dB ▪カバレージ:水平120°、垂直60° ▪感度:88dB SPL ▪SN比:75dBA ▪外形寸法:153(W)×247(H)×124(D)mm ▪重量:2.06kg(マスター)、1.73kg(スレーブ) ▪付属品:スピーカー・ケーブル(約2m)、ステレオ・ミニ-RCAケーブル(約1.4m)