こんにちは、音楽プロデューサー/DJのDJ PMXです。自分はImage-Line FL Studioをヒップホップやトラップの制作に用いており、現在はFL Studioの最新版=バージョン21.2をApple MacBook Proにインストールして使用しています。今回はFL Studioに付属する数多くのインストゥルメントの中から、自分がよく使っているものを紹介しましょう。
1980年代のシンセの名機を再現したKepler 高品質なサウンドを手軽に使えるFLEX
まずはバージョン21.2で追加されたKepler。
1982年に発売の伝説的なアナログ・ポリフォニックシンセをシミュレーションしたインストゥルメントです。そのデザインは実機のパネル部分を踏襲し、ARPPECIO、LFO、DCO、HPF、VCF、VCA、ENV、CHORUSといったシンセサイズやエフェクトに関する機能が一目で分かるようになっています。
Keplerを挙げた理由は、モデルとなった実機を所有しており音色になじみがあるから、そして使いやすいからです。最近のソフトシンセは多機能ながら、複雑なインターフェースのものが多いですが、Keplerのインターフェースはシンプルなのでビギナーにもお薦めできます。
音色に関しては、自分はブラスやストリングス、シンセパッド、シンセリードにKeplerを用います。特にKeplerで作るストリングスは、1980年代当時のサウンド感満載。従ってレトロな雰囲気を持つストリングスが欲しいときはKeplerを使うといいでしょう。名機の魅力を受け継ぎ、シンプルな操作性と奥深い音色を併せ持つKepler。FL Studio付属インストゥルメントにおける強力な武器の一つとして、一押しです!
次に挙げるのは、FL Studio全エディションに付属し、減算合成、ウェーブテーブル、マルチサンプル、FM/AM方式のシンセサイズが可能な音源、FLEX。
専用の音源ライブラリーPACKSからは、シンセやピアノだけでなく、ストリングスやブラス、シンセベースといったあらゆるサウンドを簡単に見つけ出せる点が魅力です。自分の場合、シンセプラックにFLEXを用いることが多く、PACKSから好みの音色を選んだら画面右上にあるMACROSセクションにあるパラメーターをサッと触るだけで音作りが完成します。もちろんエンベロープや、ディレイ/リバーブ/リミッターといった内蔵エフェクトの細かい調整も可能です。ちなみに、MIDIフレーズをループさせながらプリセットを次々に試していける点も重宝しています。
PACKSは追加購入することもできますが、デフォルトで付属するものだけでも十分過ぎるくらいの音色がそろっています。また気に入ったプリセットは、お気に入りに登録できるのも便利。自分は“Synpluck Calculate”や“Synpluck Classic”など7種類くらいを登録しており、FAVOURITESカテゴリーからいつでも呼び出せるようにしています。
さらに、これは最初に挙げたKeplerにも共通して言えることですが、1つの画面上でサウンドデザインが完結するところもポイント。手軽に高品質なサウンドを手に入れることができるFLEXは、プロだけじゃなく、音楽制作を始めたばかりで予算の少ない人にもお薦めです。
ヒップホップのシンセパッドに重宝 豊富なプリセットを備えるSytrus
3つ目に紹介するのはSytrus。
カスタマイズ可能なオシレーターを6基搭載した多機能シンセで、FL Studio Fruityを除く全エディションに付属しています。FM/RM/減算合成/加算合成が可能で、3つのフィルター、コーラスエフェクト、モジュレーションマトリクスなどを装備。その柔軟性と音質の高さで、ヒップホップだけでなく、ダンスミュージックなどあらゆるジャンルの音楽制作に適しています。
自分がSytrusを選んだ理由はFLEXと一緒で、プリセットの充実度が高いから。
特に自分は、ふわふわ漂うような雰囲気の良いシンセパッドを使いたいときにSytrusを用います。中でも“Abobe clouds”というプリセットは、ボコーダーっぽいサウンドが組み込まれていて好きです。ヒップホップのトラックにおいてバッキングとして鳴らしておくだけで、シリアスな雰囲気を演出することができるでしょう。また“FM rhodes”というプリセットは、FMシンセらしい音とエレピ特有の優しい音が混じったサウンドで好み。とにかくプリセットが膨大なので、まだそのすべてを試せてはいないのですが、ゆくゆくはじっくり試してみたいと思っています。
音作りとしては、基本的にはプリセットを選んで、カットオフやレゾナンス、エンベロープを少し調整する程度です。それだけでも十分に使えますし、特にウエストコースト・ヒップホップのビートメイキングにSytrusは最適だと思います。
サンプルを一瞬で自動スライスしピアノロールへアサインしてくれるSlicex
最後はSlicex。
ビート検出機能を用いてサンプルを自動スライスし、ピアノロールやMIDIコントローラーから演奏できるようにするソフトサンプラーです。ボーカルサンプルのカットアップや、ドラムループを元にしたブレイクビーツを作る際などに大活躍しています。使い方は簡単。スライスしたいサンプルを画面下部にあるWave Editorにドラッグ&ドロップするだけです。あとはSlicexがスライスポイントを自動検出し、オレンジ色のMarkerを配置。この時点で既にピアノロールやMIDIコントローラーから演奏できるようになっているため、ループ再生しながら自由にリフを作ることが可能です。
もちろんスライスのタイミングを手動で調整したり、Markerを追加したりすることもできます。FL Studio Fruityを除く全エディションに付属しているので、ぜひ試してみてください。非常に便利なツールだと感じています。
FL Studioの付属インストゥルメントは、特にダンスミュージックやクラブミュージックを意識したものが充実しているように思います。つまり、現代の音楽制作に重宝する音源がたくさん入っており、プリセットの音色を聴くだけでも即座に活用できるものが多いと感じました。特にFLEXのプリセットは膨大で、中には“808”と呼ばれるキックベースも入っているため、FLEXだけでもたくさんビートメイキングができるのではないかと思います。FL Studioの付属インストゥルメントは、初心者の方はもちろん、プロの方にとっても即戦力になりそうだと感じました。ユーザーの皆さんにも、ぜひその魅力を体感していただきたいですね!
DJ PMX
【Profile】日本にウエストコースト・ヒップホップを広めた第一人者であり、ジャパニーズヒップホップのプロデューサー/DJ/洗足学園音楽大学客員教授。日本のヒップホップが産声を上げた1980年後半から数多くのアーティストをプロデュース。アメリカ西海岸のヒップホップの影響を受け、ジャパニーズ・ウエストコースト・ヒップホップのスタイルを構築。現在、5作目のアルバム『THE ORIGINAL V』を制作中。
【Recent work】
「new balance」(『Kawasaki Riff』収録)
MARUKADO
(Under the Edge)
※プロデュースで参加
Image-Line Software FL Studio
LINE UP
FL Studio 21 Fruity:22,000円|FL Studio 21 Producer:37,400円 |FL Studio 21 Signature:44,000円|FL Studio 21 Signature クロスグレード:26,400円|FL Studio 21 Signature 解説本PDFバンドル:46,200円|FL Studio 21 クロスグレード解説本PDFバンドル:28,600円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、intel CoreプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10/11以降(64ビット)intel CoreもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM