Maxで作る自分専用パッチ〜Patch41 8trでポリリズムを形成するサンプル・プレイヤー

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基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING '74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能だ。ここでは最先端のアーティストによるクールなパッチを紹介。ファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててほしい。

 

■パッチのダウンロード:

https://rittor-music.jp/soundlib/Max_Patch_Polymachine.zip

2trを一組としたシーケンサー×4を内蔵

 初めまして、大和比呂志です。音楽活動ではdropcontrol名義でコンピューターを使ったライブやレコーディングをしているほか、普段はシグナル・コンポーズというアートや音楽、デザイン、プログラミングを主とした会社を経営して、さまざまなメディア表現活動や制作を行っています。また一方で、音楽研究者として情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入学し、修士(メディア表現)を三輪眞弘教授の元で修めました。現在は会社経営、音楽制作/ライブなどと並行して慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスの社会人博士課程で“AIを使った音楽の体験や制作、演奏にどんな可能性があるか?”ということを研究しています。

 

 Maxは、まだMax/MSPと呼ばれていた時代から使っています。古くからのMaxユーザーですが、かなりブランクもあったため、IAMASで研究を行うにあたって再入門しました。

 

 IAMASでの研究は“多層時間構造による音楽創造の試みとその身体化の可能性”というものです。筆者のWebサイトから作品や演奏動画、論文をご覧いただけます。研究の内容自体を説明すると長くなってしまうのでここでは割愛しますが、その過程で制作したものがPolymachineというパッチ。今回は複雑なポリリズムを生み出すこのパッチを紹介します。

 

 Polymachineは、サンプルをトリガーする8trステップ・シーケンサーです。2trが一組となっており、各組で一定の周期を任意の数で分割して、選択した拍でサンプルを再生できます。つまり計8trでポリリズムを作ることが可能です。起動時には上から5拍/7拍/4拍/12拍という分割になっていますが、各組の左側にある“Beats”から変更ができます。また、Masterの右側にあるPresetをクリックすると再生パターンの切り替えが可能です。各シーケンサーの右側にはデフォルトのサンプルを読み込む[buffer~]とサンプルを変更するための[read]メッセージが置いてありますので、好きなサンプルで試してください。[buffer~]にサンプルをドラッグするだけでサンプルの変更もできます。

プロジェクト機能で各要素を一元管理

 このパッチではポリリズムを作るために以下のような考え方でパッチを組んでいます。

  1. マスターとなるテンポ(BPM)からサブパッチャー[p beat_to_sec]で小数点まで含む一拍の長さ(ms)を求める
  2. それをサブパッチャー[beat_counter]に送り、[metro]に渡す(この時点で小数点以下は切り捨てられる)
  3. 拍数の設定は[beat_counter]にも送られて、[counter]で送られてきた信号(bang)を数えてその数を出力する
  4. それを[live.grid]で受けインターフェース部分とステップ・シーケンサー部分として使う

 [live.grid]からのリスト出力を[iter]で連続した数値の出力に変換して[sel]に送り、該当した数値の場合にサンプルを[play~]でトリガー。外部パッチャー・オブジェクトの[panning]、[live.gain~]を使ってミキサー部分を作り、最後にマスター・ボリュームとして使う[live.gain~]へ送っています。

 

 また、今回パッチを配布するにあたっては、Maxの“プロジェクト”という機能を使っています。これは“Maxで実行するのに必要なファイル類を一つにまとめておく”という機能です。この機能を使ってとても便利だと感じたのは、[buffer~]にデフォルトのサンプル・ファイルを指定できる部分です。プロジェクト機能を使わないとインスペクターやさまざまな方法でファイルのパスを指定したり取得したりという手間がありましたが、同じプロジェクトにサンプル・ファイルを含めておくことで、例えば今回のパッチの場合[buffer~ track1 Calabash1.aif]のように指定することができます。

 

 今回紹介したPolymachineを使えば“聴いたことがないようなリズム”を試すことができます。複雑なリズムを作って音源を鳴らすだけでもアイディアが浮かぶのではないでしょうか? 本パッチをいろいろと改造して試してもらえればうれしいです。シンプルに作っているので、これを元に例えばAbleton LinkでABLETON Liveと同期させたりしてみてもいいかもしれませんね。

 

 現在、渋谷にあるFabCafe Tokyoとシグナル・コンポーズとの共同で、音楽とプログラミングのコミュニティ“ALMF:これからのリベラルな音楽のためのアカデミー”の立ち上げを行っています。みなさんが本稿を読むころには第2回のプレイベントが終わっていると思いますが、8月から11月まで“これまでの音楽”“音楽と(楽器としての)ハードウェア”“音楽とAI”“これからの音楽”と題し、月に1回のペースでオンラインのトーク・イベントを行っていきます。Twitterでも@ALMF_fcscにて情報発信をしていきますので、興味のある方はぜひフォローしていただけたらうれしいです。実際の活動は2021年頭からを予定していますが、コミュニティに参加したい、という方はぜひお声がけください。

fabcafe.com

 

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大和比呂志/dropcontrol

音楽家/エンジニア/リサーチャー。30代でデザイン会社を起業。その後IAMASに入学し、三輪眞弘に師事して修士(メディア表現)を取得する。また、ジャズ理論とサックスを菊地成孔に師事。シグナル・コンポーズ代表のほか、IAMAS特別非常勤講師、慶應義塾大学非常勤研究員を務める。

hiroshiyamato.com

 

製品情報

www.mi7.co.jp

 

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