近年、バーチャル・シンガーによる楽曲の人気が再燃しており、インターネットの動画投稿サイトで注目を集め、活動の場を広げていくボカロPがさらに増えてきた。Jポップ・シーンでも、そういったネット発のプロデューサーが手掛ける楽曲がチャートで上位にランクインすることはめずらしくない。ここでは、そんな新進気鋭プロデューサーの、かごめP、くじら、biz、すりぃ、ササノマリイ、須田景凪、ツミキが愛用するWAVESプラグインを紹介。使用シーンやコツも語ってもらったので、ぜひ参考にしてみてほしい。
かごめP
Manny Marroquin Reverb
Manny Marroquin Reverbは、少ない手数で“そうそう、このリバーブが欲しかった!”へたどり着ける、非常に便利なデジタル・リバーブです。リバーブ成分に対してEQ、プリディレイ、ドライブ、コンプ、モジュレーションと、さまざまな機能をスピーディに展開可能。もちろん音も素晴らしい。表に出すパラメーターの選び方と、その効き方が非常に“分かっている”ヤツです。COMPを12時以上にして、EQのどれか1バンドをグイっと強調してみましょう。それで、このリバーブの楽しさが分かると思います。
Vitamin
Vitaminは洋楽やKポップで聴くような、音の立ったリードに使います。特にビリビリしたブラスを作る際には最適ですね。デジタルならではの倍音感が得られます。中高域と中低域を強調すると、途端にオケの中から抜けてきます。歌ものではボーカルとの帯域かぶりに注意しましょう。
くじら
Recent Work
『ジオラマの中で』
くじら
(ソニー)
GTR3
GTR3はどんなトラックに挿しても活躍してくれます。ストンプ・エフェクトのPANNERやVIBROLOをよく使っていますね。トラックごとにPANNERを使い、いろいろなポイントで楽器が鳴っているようにすると曲に厚みも出ます。PANNERありきで編曲を考えることが多くなりました。
Greg Wells PianoCentric
Greg Wells PianoCentricは、DELAYとDOUBLERをオフにし、中央のノブの値を-50にするとどの鍵盤系に挿しても簡単にローファイな質感に仕上がってくれます。テンポの遅い曲を作るときには重宝するサウンドです。
WAVESの中ではOneKnobシリーズがずっと気になっていて、導入を考えています。プラグインの細かい操作に弱いのですが、OneKnobシリーズはいろいろな楽器に挿して直感的に面白い音が作れそうです。
biz
Recent Work
『東亰カニバリズム』
biz feat. Ado
CLA Vocals
ボーカル・ミックスの際などにCLA Vocalsをよく使用しています。録音レベルやセクションごとの音量がそろっていない“録音しっぱなしの歌”を、即座にラフミックスしたいときはCLA Vocalsの出番です。EQやコンプ、空間系のすべてをCLA Vocalsだけで作り込むことができます。
複数のプラグインを使って繊細に音を作っていくのも大切ですが、細かいことを考える必要が無く簡単にボーカル・ミックスができるCLA Vocalsは、これから宅録で音楽活動を始めたい方にお薦めのプラグインです。特にEQやコンプのかかり具合は強烈で、直感的かつスピーディにイメージする音へたどり着くことができます。
また、プリセットが優秀なのも気に入っている理由です。僕の場合は、プリセットで音の土台を作り、細かい部分はほかのプラグインで補っていくことが多いです。
すりぃ
Recent Work
『フクロウさん』
すりぃ
(RED)
MaxxBass
僕がミックスのために初めて購入したプラグインがWAVES Gold Bundleでした。中でもMaxxBassとVitaminがお気に入りです。
普段はベースをラインで録ることがほとんどなのですが、MaxxBassを使うことでもともと聴こえていなかった低域まで足せるのが便利です。まずはプリセットの“Medium”を読み込み、MaxxBassで生成された低域部分のみをソロで聴きながらFreqを調整することが多いですね。
Vitamin
Vitaminはミックスで使うこともあるのですが、僕は作編曲の段階でマスターに挿し、プリセットの“Mastering 2”を読み込んでいます。作編曲の段階である程度気持ちの良い音で作業した方が気分も乗りやすいためです。少し変わった使い方かと思いますが、お勧めです。
ササノマリイ
Recent Work
『空と虚』
ササノマリイ
(ソニー)
C4
C4はガッツリと、かつ滑らかなコンプレッションを簡単にできるので毎度使っています。最近はABLETON Live上でチェーンを組み、並列にC4を3つ並べてパラレル・コンプするのがお気に入り。1つ目は全帯域のRangeを-24まで下げ、平均-10dB以上でがっつり潰したもの。2つ目はMidを生かして90Hz以下を-5dB、1.1kHz以上を-3dBくらいコンプレッションします。3つ目は全帯域をバイパスしたものです。全バイパスしたものを使う理由は、チェーンごとのレイテンシーに差が生まれ、音がぶつかって細くなってしまうのを避けるため。あえて平面的な音像にしたいときは、3つ目を使わず空のチェーンにしています。
Retro Fi
最近購入し、これから活用していきたいのがRetoro Fi。STYLERノブで選べる“50s”のひずみ方とNOISEセクションのWOWによる高域の減衰の仕方がとても好みです。
須田景凪
Recent Work
『パメラ(sefl cover)』
須田景凪
(ワーナーミュージック・ジャパン)
SoundShifter
SoundShifterとH-Compはほとんどの楽曲で使っています。SoundShifterは、“オクターブ下のボーカルの響きが欲しいけど、人間味はあまり出したくない”というときに使い、メイン・ボーカルから機械的なオクターブ下の音を生成します。「パメラ」のセルフカバーでは、サビだけSoundShifterでオクターブ下のボーカルを足しています。また、楽器のピッチを変えて飛び道具的なサウンドを作ることも多いです。ピッチをかなり変えても音の劣化が少ないので重宝しています。
H-Comp
H-Compは音を思い切りつぶしたいときに使うことが多いです。メインのギター・リフをコンプレッションし、ユニゾンしているシンセとのなじみを良くしたり、曲全体にうっすらとかけて派手な響きにしたりしています。
ツミキ
Recent Work
『POP』
NOMELON NOLEMON
(ソニー)
CLA Unplugged
僕は理屈や数値的に音を作るのが苦手なので、目隠しをしていても音作りが成立するような直感的な操作のプラグインが好み。Chris Lord-Alge Signature Seriesはそれに当たるでしょう。ミニマルな情報量で設計されたインターフェースは操作感が良く、フェーダーの上下のみで簡単に楽器のキャラクターを決められます。
僕はこのシリーズ内のCLA Unpluggedを頻繁に使用します。主にピアノなどの生楽器系に挿してハリを持たせたり、逆に音量を保ちつつ主張が強い楽器の腰を少し落としたりします。EQで狙って調整するよりも良い意味でまとまり過ぎず、クリアで音楽的な聴こえ方をする印象です。
CLA Vocals
CLA Vocalsはボーカロイドにもかなりマッチします。モジュレーションやリバーブも素晴らしいので、ボカロ曲の場合は空間系含めここで完結してしまうことが多いです。