世界中のエンジニア/クリエイターが愛用するWAVESのプラグインは、具体的にどのような場面で力を発揮するのか? ミックスやサウンド・メイクで悩みがちなポイントにプロが答える形で、WAVESプラグインを用いたソリューションを紹介!
A. 外れて聴こえる成分のみを上げ下げしましょう
使用するWAVESプラグイン:Torque
生ドラムを録ったけれど、ほかの楽器とミックスしてみたらスネアの胴鳴りが調子外れに聴こえる……といったことはままあると思います。かと言って一般的なピッチ・シフターを使うと、ピッチを下げる場合はアタック成分まで下がってしまい、今度は抜けが悪くなったりするものです。Torqueを使えば特定の周波数帯域に絞ってピッチの上げ下げが行えるため、胴鳴りのみを調整することもできます。周波数アナライザーが付いているので目的の帯域を探りやすいでしょう。
Torqueは打ち込みのドラムにも有効です。例えばROLAND TR-808系のタムでポコポコと鳴っている成分のピッチが悪く、タムを省こうかな?と思ったときにTorqueでポコポコのみを下げると、パターンさえ良ければ使えるようになることが多々あります。
ピッチ・シフターは開発に高度な技術が求められるのですが、WAVESのピッチ・シフト・アルゴリズムは指折りだと思います。他社のピッチ・シフターやピッチ補正用のプラグイン、DAWのピッチ・トランスポーズ機能は1オクターブも変えると音が荒れてしまいがちですけど、WAVESの場合はそれがほとんど無く、とてもスムーズです。古くからあるピッチ・シフター・プラグインのSoundShifterもよくできていて、400~600Hz辺りで鳴っているシンセ・パッドなどに対し“量感が物足りない”と感じたときには、原音のコピーを1オクターブ下げてブレンドするとうまくいきます。200Hz周辺が基音として存在するようになるので、原音の200HzをEQでブーストしてもいまいち持ち上がってこなかった量感をナチュラルに補えるのです。
渡部高士
【Profile】イギリスのレコーディング・スタジオでサウンド・エンジニアとしてキャリアを開始。以来、電気グルーヴ、石野卓球、FPMといったクラブ・ミュージックのアーティストをはじめ、七尾旅人やCHARAといったポップ・ミュージックの作品の録音/ミックスにも携わってきた。